備忘の都

40年間の読書で得た偏った知識をツギハギしながら、偏った記事をまとめています。同好の士の参考に。

筋肉少女帯元ネタ

元ネタ探求 アンダーグラウンド・サーチライ「スケキヨ」「アオヌマシズマ」

20170505スケキヨ072

筋肉少女帯が活動を一時休止した直後に発売された、大槻ケンヂのソロプロジェクト「アンダーグラウンド・サーチライ」。第一弾のタイトルは「スケキヨ」というぶっ飛んだもので、CD屋で発見した時は仰天しました。
しかし、つい最近買ったばかりのような気がしていましたが、もう20年近くも経っているとは。就職したばかりの頃で、帰宅途中に職場近くのショップで手に取ったときのことはよく覚えています。
久しぶりに棚から出してみたら、帯の紙がシミだらけになっていて、歳月を感じます。
こんなアルバム、すぐさま廃盤になるだろうと思って、急いで買ってきたものですが、意外にもかなり長い間、販売されていました。
これが出たときには、筋少の休止は発表されていたんだったっけなあ? 20年前のことなので、あまりよく覚えていません。

というわけで、筋肉少女帯の元ネタ探しに続いて、アンダーグラウンド・サーチライの2枚に行きたいと思います。
(とはいえ、オーケンの作詞曲の限るので、あんまりたくさんはありません)

ワインライダー・フォーエバー

ウィノナ・ライダーとジョニー・デップのスキャンダルを歌ったもの。
ジョニー・デップが腕に彫った「ウィノナ・フォーエバー」の刺青をレーザーメスで消そうとしたところ、うまく消えず「ワインフォーエバー」になってしまった……という話は、ライナーノーツでオーケン本人が解説していますが、曲のタイトルを「ウィノナ・ライダー・フォーエバー」としなかったのは、権利関係の問題で……という話は、どこか別のところに書いてあったような気がします。
【彼氏の腕はシザーズ】
ティム・バートン監督「シザー・ハンズ」のこと。ジョニー・デップ演じるエドワードは腕がハサミの人造人間で、ウィノナ・ライダー演じる女の子に恋をする。「フランケンシュタイン」をモチーフにした名作。
【彼女は昔ヘザーズ】
ウィノナ・ライダーの出世作「ヘザース」のこと。「体育会系VSオタク」というアメリカ映画によく出てくる対立を描いていますが、ガンガンと人を殺していくブラック・コメディ。
【ティーバートン】
ティム・バートンのこと。

猿の左手 象牙の塔

インディーズ時代の筋肉少女帯の曲ですが、メジャーデビュー後は再録せず、アンダーグラウンド・サーチライで久しぶりの登場。インディーズ時代よりも格段に歌がうまくなっているのがわかります。
【猿の左手】
イギリスの古典的ホラー小説であるジェイコブズの「猿の手」から。三つの願い事を叶えてくれる猿の手のミイラを巡る物語。創元推理文庫のアンソロジーが最も手軽に読めます。
怪奇小説傑作集 1 英米編 1 [新版] (創元推理文庫)
アルジャーノン・ブラックウッド



【左手】
では、なぜ「猿の手」が「猿の左手」になったかといえば、これはル・グィンのSF「闇の左手」から。
闇の左手 (ハヤカワ文庫 SF (252))
アーシュラ・K・ル・グィン



埼玉ゴズニーランド

言うまでもなく東京ディズニーランドのパロディ。個人的には無茶苦茶好きな曲。
【警部マックロード】
70年代に放映されたアメリカの警察ドラマ「警部マクロード」から。
警部マクロード DVD-BOX 1
デニス・ウェーバー


【バイオニックジェミー】
70年代に放映されたSFドラマ「地上最強の美女バイオニック・ジェミー」から。


【水漏りコースケ】
70年代に放映された石立鉄男主演のホームドラマ「水もれ甲介」から。


UNDERGROUND SERCHILIE

この曲の歌詞はもともと大槻ケンヂの自伝的大河小説の第2弾「グミ・チョコレート・パイン チョコ編」(1995年)の「第4章 サタデーナイトフィーバー」に登場していたものです。小説のために書き下ろした詩なのか、もともとの持ち歌だったのかはよくわかりません。作中では「ゾン」という登場人物が演奏します。筆者は町田町蔵がモデルだと思って読んでいましたが、遠藤ミチロウのイメージも入っているようです。
【ミラーボール】
ジョン・トラボルタ主演の映画「サタデーナイトフィーバー」のイメージ。ジョン・トラボルタは70年代にこの映画で一世を風靡したが、やがて失速。しかしクエンティン・タランティーノが「パルプフィクション」(1994年)で起用したことから人気が再燃。「グミ・チョコレート・パイン」が書かれた時期は再ブームの最中でした。
【八つ墓村の格好】
横溝正史の「八つ墓村」に登場する大量殺人犯・田治見要蔵の服装のこと。詰襟の上着、脚にはゲートルを巻き、胸にはナショナルランプを下げ、頭の鉢巻には牛のように2本の懐中電灯を突き立てた姿で村を襲撃し、一晩で32人を殺しました。野村芳太郎監督の松竹映画「八つ墓村」の影響もあり、70年代カルチャーの頻出項目となっています。
なお、昭和13年に実際に起きた津山事件では、犯人の都井睦雄がこの姿で30人を殺しています。筋肉少女帯の最近のアルバム「THE SHOW MUST GO ON」にも、津山事件をモチーフにした「ムツオさん」という曲が収録されています。


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元ネタ探求 筋肉少女帯「仏陀L」

20170120仏陀L030

メジャーデビューアルバムです。

1.モーレツア太郎

赤塚不二夫のギャグ漫画「もーれつア太郎」から。なぜ、もーれつア太郎が登場しているのかは、筆者にはいまだにわかりません。

2.釈迦

インディーズ時代から少しずつ歌詞を変えて歌われている曲。アンテナ売り、脳髄など、筋少に頻出のモチーフが詰まっています。「脳髄」は夢野久作の「ドグラ・マグラ」ほか諸作からの連想かと思われます。

3.福耳の子供

最後の方にボソボソと聞こえる女性の声が、アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」に登場する綾波レイの喋り方のヒントになっているそうです。ちなみに、綾波レイの見た目は「何処へでも行ける切手」の「包帯で真っ白な少女」です。

4.オレンヂ・エビス

インディーズ時代の原曲は「オレンヂペニス」というタイトルでした。
【ラッシャー木村】【ストロング小林】【ロッキー羽田】【ジョー樋口】【ミスター林】
プロレスラー。
【マキ上田】
女子プロレスラー。
【ラジャ・ライオン】
空手家。
【ダイバダッタ】
釈迦仏の弟子で、後に違背したとされる人。(Wikipediaより)。

5.孤島の鬼

タイトルは乱歩の長編「孤島の鬼」から。内容的には特に関係ありません。インディーズ時代の原曲は「から笑う孤島の鬼」というタイトルでした。また、「孤島の檻」という自主制作盤も作っています。
【金のなる木の あるじゃなし】
クレイジー・キャッツの曲「ハイそれまでヨ」に「金のなる木があるじゃなし」という一節がありますが、元ネタなのかどうかはわかりません。大槻ケンヂはドリフターズの話はよくしていても、クレイジー・キャッツの話は見かけた覚えがありません。(桑田佳祐が歌っていたら、間違いなく元ネタなんですが)

6.サンフランシスコ

【さようなら さようなら こんなに遠い異国の果てでお別れするなんて 本当に辛い】
中原中也の詩「別離」の一節「さよなら、さよなら! こんなに良いお天気の日に お別れしてゆくのかと思ふとほんとに辛い」から。
【空気女】
乱歩の中編「ぺてん師と空気男」からの連想かと思います。乱歩の短編の空気男は単にそういうあだ名の男ですが、「空気女」は「蛇女」のようにサーカスで見世物になる存在のようです。

8.ノーマン・ベイツ

ヒッチコックの名作サスペンス映画「サイコ」の登場人物。筋少のファンクラブも「ノーマン・ベイツ」という名前でした。ただ、オーケンがそこまで「サイコ」に思い入れがあるという文章も読んだ覚えがないのですが。

9.ペテン師、新月の夜に死す!

【ペテン師】
空気女と同じく、乱歩の「ぺてん師と空気男」からの連想かと思います。意図せずして、活動休止前最後のアルバム「最後の聖戦」の最後の曲「ペテン」と対の内容になっています。

さて、このアルバムとほぼ同時に「釈迦」のプロモーションビデオを納めたVHS「KIN-SHOWの大残酷」も発売されています。現在、DVDにもなっていますが、この「釈迦」PVは映画「悪魔のいけにえ」のパロディになっていて、これは必見です。個人的に「悪魔のいけにえ」の殺人鬼レザーフェイスが、殴り殺した死体を部屋へひきづりこんで、慌てたようすで扉を閉めている仕草が好きなのですが、そこを忠実に再現していてかなり笑いました。


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元ネタ探求 筋肉少女帯「サーカス団パノラマ島へ帰る」

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さて、元ネタがいろいろありすぎて、ついていくのが大変なアルバムです。できるだけ頑張ります。
タイトルの「パノラマ島」は、言うまでもなく乱歩の「パノラマ島奇談」より。
「サーカス団」については、乱歩にも「魔術師」「地獄の道化師」「サーカスの怪人」のようにサーカスが登場する作品が多々ありますし、また「スラッシュ禅問答」でも引用していた中原中也の「サーカス」という詩もあり、どちらの影響が強いのかよくわかりません。
アルバムはデジパックで絵本風に作られています。ジャケットを描いているのは、むらいこうじという、ピエロ専門の画家。

2.ビッキー・ホリディの唄

ビッキー・ホリディという名前に特に元ネタはなさそうです。

3.詩人オウムの世界

【オウム】
オウム真理教事件を描いているように思ってしまいますが、事件が起こる5年前に発表された曲で、むしろ予言的な詩と言えます。
『大槻ケンヂ20年間割りと全作品』によれば、当時、オウム真理教の名前は知っていたが、ここで出てくる「オウム」は、諸星大二郎の漫画の中で、人びとが宗教的な恍惚感にとらわれると「オウム、オウム」と響きだす、というシーンがあり、そこからということです。どの漫画を指しているのかはわかりません。
歌詞カードでは「オーム」となっています。

4.労働者M

インディーズ時代、空手バカボン名義で発表した曲。中学校の同級生が原詩を書いたとのことです。
【アンモナイト】
「花火」のあとがきで「アンモナイトは貝じゃない!」と自ら突っ込んでいますが、オウムガイの仲間。貝よりはイカやタコなどに近い頭足類。
【シーモンキー】
エビの仲間。昭和40年代に卵が学習雑誌の付録となるなどして、子どもたちの間で飼育が流行した。

6.23の瞳

壺井栄の児童向け小説「二十四の瞳」から。この物語で描かれるような感動的な学校生活への嫌悪感が現れています。インディーズ時代にナゴムレコードから出た「子どもたちのCity」というオムニバスアルバムに原曲が収録されており、そちらでは「暗い目をした僕」ではなく、「片目の僕」となっています。。

7.電波Boogie

【マーク・ボラン】
T-Rexのギタリスト・ボーカリスト。

8.パノラマ島へ帰る

【小人】
ここでいう「小人」は、おとぎ話に出てくるドワーフなどの小人ではなく、乱歩がいうところの一寸法師のこと。

12.元祖 高木ブー伝説

原曲はインディーズ時代の「高木ブー伝説」。
昭和40~50年代にかけて、毎週土曜の8時に放映された伝説的なバラエティ番組「8時だョ!全員集合」がネタになっています。
【一人で生きろよ つらくとも死ぬな】
原曲ではここは「フロ入れよ 宿題やれよ 歯みがけよ」となっています。これは、番組最後に全員でエンディング曲を歌う中で加藤茶が入れる合いの手。


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筆者:squibbon
幼稚園児の頃から40を過ぎた現在に至るまで読書が趣味。学生時代は読書系のサークルに所属し、現在も出版業界の片隅で禄を食んでいます。
好きな作家:江戸川乱歩、横溝正史、都筑道夫、泡坂妻夫、筒井康隆、山田風太郎、吉村昭。好きな音楽:筋肉少女帯、中島みゆき。好きな映画:笠原和夫、黒澤明、野村芳太郎、クエンティン・タランティーノ、ティム・バートン、スティーヴン・スピルバーグ、デヴィッド・フィンチャー。
ブログ更新通知:https://twitter.com/squibbon19

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