201710悪魔の手毬唄135

金田一映画はマニアが多いせいか、同時代の邦画と比べるとサントラCDがいろいろと発売されています。
出てすぐに買わないと、廃盤になって買えなくなってしまうものが多いのですが、今回は入手の難易度とは関係なく、CD化されたものを一通り紹介してみます。(リンク先は全てAmazon。LP時代のことはよく知らないので、CDの話のみです)

まずは、各映画のサントラです。
筆者が最も好きな横溝映画は「悪魔の手毬唄」なのですが、これは2種類発売されています。


これはオリジナル・サウンドトラックをCDで復刻したもので、2011年に発売されました。すでに廃盤となり、プリミア価格で高値で取引されているようですが、冒頭から「哀しみのバラード」に頭がクラクラします。


こちらはやはり「悪魔の手毬唄」のCDなのですが、2012年に発売されたものです。オリジナルサウンドトラックと何が違うかといえば、これは劇伴、つまり劇中で伴奏として使用された曲をそのまま収録しているのです。劇中の使用曲はサントラとはアレンジが違ったり、あるいはサントラに収録されなかったりすることがあり、「悪魔の手毬唄」も例外ではありません。劇中の使用曲を完全に再現するというマニアックな一枚で、聴いていると映画本編を脳内で再生することができます。

同じコンセプトで「獄門島」も2枚発売されています。





「女王蜂」「病院坂の首縊りの家」は、オリジナルサウンドトラックの復刻版のみCDが出ていて、劇伴が発売されたことはありません。




次に「犬神家の一族」です。
これは2006年に市川崑監督がリメイク版を発表した際、新旧を一つのパッケージに収めたものが発売されています。

旧作は映画公開時にLPで発売された内容に、一部の劇伴をボーナストラックとして加えています。大野雄二作曲の有名な主題曲「愛のバラード」も映画使用曲はアレンジが異なりますが、両方を楽しむことができます。

つづいて、市川崑監督作以外の金田一映画のCDをご紹介します。



これは最近発売されたCDですが、オリジナルサウンドトラックではなく初商品化されたという劇伴集です。
なんと2010年代は「悪魔の手毬唄」「獄門島」「八つ墓村」と、金田一映画の劇伴集が3枚も発売されているという、すごい時代なのです。いったい何があったんでしょう。
それでは、「八つ墓村」のオリジナルサウンドトラックはいえば、かつて何度か発売されていますが、現在はいずれも廃盤です。




東映映画「悪魔が来りて笛を吹く」のオリジナルサウンドトラックは2度CD化されていますが、現在はいずれも廃盤で、中古しか入手できません。



篠田正浩監督の「悪霊島」。これも、筆者の大好きな一本です。
オリジナルサウンドトラックがCD化されています。
「悪霊島」といえばビートルズの楽曲を主題歌に使用しているのですが、使用権が切れてしまったためDVD化される際には別のアーティストが歌唱しているバージョン(しかもアレンジがまるで違う)に差し替えられることになってしまい、ファンとしては全く興ざめな事態になってしまっています(まあ、DVDが出ないよりはマシなんですが)。
一方、サントラはもともとインストを収録していたため、使用権の問題は発生しなかったそうで、オリジナルのままCD化されています。とはいえ、もともとビートルズの歌唱が収録されてなかったよ、というだけなので、DVDの代替にはなりません。
ビートルズのCDを持っている方は、いったんPCへ落としてから、ここだけ曲を差し替えて、本当のオリジナル音源を編集してみることができるでしょう。筆者はビートルズのCDは一枚も持っていないので、それもできないわけですが……



次に、大林宣彦監督によるパロディ映画「金田一耕助の冒険」のサントラです。ぜんぜん金田一っぽくない映画ですが、いかにも70年代後半ノリのコメディです。最近CD化されました。
金田一耕助の冒険




さて、ここまで各映画のサントラをご紹介してきましたが、最後に企画盤を2枚ご紹介します。


このCD、ちょっと前まで大きめのCDショップへ行けば必ず置いてあるという印象がありましたが、いつの間にやら入手困難なCDになっていました。発売からもう20年も経っていたとはね!
これはもともとLPで発売されたようで、その時点で公開されていた金田一映画から主要な曲を集めています。ほとんどの映画はオリジナルサウンドトラックが発売されていますが、「本陣殺人事件」だけは、このアルバム以外に音源はありません。そういう意味でなかなか貴重な一枚です。(しかも「本陣」の音楽監督は大林宣彦!)


これも、もともとはLPで発売されたようですが、サントラではありません。「横溝正史作品をイメージして、人気作曲家が作った曲を集める」というよくわからないコンセプトの一枚で、正直、あまり面白い内容ではありません。
ところが! CD版はボーナストラックがエライことになっているのです。「愛のバラード」歌唱付きバージョンや、毎日放送「横溝正史シリーズ」の主題歌である茶木みやこ「まぼろしの人」「あざみの如く棘あれば」、さらにはTBS「金田一耕助シリーズ」の主題歌、古谷一行「糸電話」など、金田一耕助絡みの「その他モロモロ」が全部収録されています。どっちかというと、このボーナストラックだけ独立させてもよいくらいです。
筆者の夢は一度カラオケで「愛のバラード」を歌ってみたいということなのですが、わかってくれそうな人が周囲に一人もいないので、未だ果たせずにいます。現在小学3年生の長男をなんとかそういう方向へ持っていきたいと考えている毎日です。

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