今回は第46巻「三角館の恐怖」をご紹介します。昭和48年11月に刊行されました。
原作は昭和26年に雑誌「面白倶楽部」へ連載された同題の「三角館の恐怖」。
リライトは氷川瓏が担当しています。初出は昭和33年にポプラ社「名探偵明智小五郎文庫5」として刊行されました。
表紙絵・挿絵とも岩井泰三が担当しています。いずれも本書の描き下ろしです。
「三角館の恐怖」は、アメリカのミステリ作家ロジャー・スカーレットが1932年に発表した「エンジェル家の殺人」を翻案したものです。
翻案といっても、実は「翻訳」に近いくらい、ほぼ原著どおりの展開です。
これをリライトした本書も、探偵役が篠警部から明智小五郎に変わっているほかは、ほぼ原作どおりです。図面も原作と同じものが全て収録されています。
ポプラ社のシリーズとしては珍しく、少年が一人も登場せず登場人物の年齢は全て原作そのままです。子ども向けではない動機もそのまま描かれているため、子どもの頃に本書を読んだ時は、ずいぶんと大人っぽい小説を読んだ気分になったものでした。
一方で、原作「三角館の恐怖」は乱歩作品にしては珍しい論理的なガチガチ本格ミステリで、読者への挑戦状までついています(翻案作品、しかも原著には挑戦状がないという点で、他人の褌で相撲をとっている印象もありますが……)。しかし、リライト版ではこのような「稚気」は省略されており、ますます大人っぽい雰囲気になっています。
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