今回は第32巻「地獄の仮面」をご紹介します。昭和45年10月の刊行です。
原作は「報知新聞」に昭和5年から連載された「吸血鬼」。乱歩最長の長編であり、前作「魔術師」で出会った明智小五郎と文代さんとが結婚したことが明かされる一篇です。また、明智の助手として小林少年が、二十面相シリーズに先駆けて初めて登場した作品でもあります。
リライトは氷川瓏が担当しています。初出は昭和33年「名探偵明智小五郎文庫4」としてポプラ社から刊行されました。
表紙絵は柳瀬茂が担当。昭和42年に刊行された「名探偵シリーズ」版からの流用です。
挿絵は岩井泰三で、これも「名探偵シリーズ」からの流用と思われます。名張市立図書館の「江戸川乱歩著書目録」には、本書も「名探偵シリーズ」も、挿絵は武部本一郎とありますが、これは誤りでしょう。
原作は文代さんも小林君まで出てくるので、少年向けリライトにあたって、無理やり設定を変更する必要は全くありません。ストーリーは、原作を適度に圧縮しながら、大きな改変はなく展開していきます。
大きな違いといえば、ラスト、氷柱に閉じこめられる母子が、原作では真っ裸なのに対して、本書では裸なのか服を来ているのか、何も説明がないという点くらいでしょうか。
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