前回に続き、現在刊行中の新訳「水滸伝」(講談社学術文庫)を読みながら、メモとして作成しているあらすじと登場人物です。
第六回 九紋龍剪径赤松林 魯智深火焼瓦罐寺
登場人物: 魯智深、史進あらすじ: 魯智深の旅はさらに続く。ある日、通りかかった瓦罐寺で一食を乞うが、断られる。この寺は僧侶のふりをした強盗二人、崔道成と丘小乙に乗っ取られていたのだった。寺の老僧から話を聞いた魯智深は二人とやりあうが、腹が減っていたためやっつけることができず、逃げ出す。しばらく行ったところで追い剥ぎに出くわすが、実はこれは史進だった。史進は魯智深と別れたあと、王教頭を探して旅を続けていたが、旅費が足りなくなったため、追い剥ぎをして調達しようとしていたところ、魯智深に出くわしたのだった。魯智深は史進から食料をわけてもらい、元気を取り戻すと二人で寺へ取って返し、崔道成と丘小乙を成敗する。寺の老僧たちは、はじめに魯智深が負けたのを見て絶望し、みんな首を吊って死んでいた。このため、魯智深と史進は瓦罐寺に火をかけて焼き払う。その後、史進はやはり朱武たちに混じって山賊になると話し、魯智深と別れる。魯智深は東京の大相国寺へたどり着く。大相国寺の長老は、魯智深のような暴れ者を押し付けられて弱ってしまうが、寺の菜園に近所のゴロツキが集まって野菜を盗んだりしているため、魯智深に管理させることにする。ゴロツキたちは新しく赴任する魯智深を肥溜めへ落として懲らしめようと画策する。
第七回 花和尚倒抜垂楊柳 豹子頭誤入白虎堂
登場人物: 魯智深、林冲、高?あらすじ: 魯智深は、自分を肥溜めへ落とそうとしたゴロツキどもを逆に肥溜めへ放り込んだ。ゴロツキどもは魯智深に従うことを誓った。さっそく宴会が始まると、カラスの鳴き声が聞こえた。柳の木の上に巣を作っているのだ。魯智深はその柳の木を引き抜いてしまい、ゴロツキどもを平伏させる。そんなある日、魯智深が六十二斤ある特注の禅杖を振り回し、ゴロツキたちが喝采を受けていると、破れた塀の向こうから見ていた一人の役人が拍手を送った。この男こそ、八十万禁軍の教頭・林冲だった。妻と共に隣の廟へお参りに来たところ、魯智深の見事な武術に見惚れて、妻だけ先に行かせて眺めていたのだ。魯智深と意気投合して、さっそく酒を酌み交わそうとした時、召使いが飛んできた。林冲の妻が怪しげな男に捕まっているという。駆けつけると、妻にちょっかいを出していたのは高衙内だった。高衙内は高?の養子で、父の威勢を借りて、人妻へちょっかいばかり出していた。高?は林冲の直属の上司に当たるため、林冲は殴りつけたいのを我慢する。一方の高衙内は林冲の妻を手に入れようと画策し、林冲の友人・陸謙を使って林冲をおびき出すが失敗し、病に伏せる。それを知った高?は林冲を罪に陥れることにする。
第八回 林教頭刺配滄州道 魯智深大閙野猪林
登場人物: 林冲、張教頭あらすじ: 林冲は冤罪を主張し、林冲の舅の張教頭も役人に袖の下を渡すなど、減刑のための活動をする。役人も冤罪を見抜いてはいるが、高?の手前、無罪にはできない。このため、死罪は避け、滄州へ流すこととし高?も了承する。残される妻を慮って離縁状を書こうとする林冲に、張教頭は「娘はどこへも嫁がせない。帰りを待たせる」と約束するが、林冲は頑なに離縁しようとする。それを知った夫人は嘆き悲しみ、気絶してしまう。林冲の護送を請け負った役人二人に、陸謙は金を渡し「護送の途中で殺してくれ」と依頼する。護送役人は林冲の足に大火傷を負わせてまともに歩けない状態にした上で、休憩をとった林の中で、殴り殺そうと棍棒を振り上げる。
第九回 柴進門招天下客 林冲棒打洪教頭
登場人物: 林冲、魯智深、柴進あらすじ: 役人が棍棒を振り下ろそうとすると、林の中から禅杖が飛び出してきた。たまたま繁みの中にいた魯智深が、林冲と役人とのやりとりを全て聞いていたのだ。林冲は「この役人たちも陸謙から頼まれただけなので」と二人を殺さないよう魯智深に頼み、四人で旅を続ける。護送先の滄州が近づき、街中に入ると魯智深は大相国寺へ帰っていった。林冲たち三人は、このまちの柴大官人(柴進)が流罪になった罪人たちの面倒を見ていると聞き、その屋敷を訪れる。しかし、柴進は留守であった。がっかりしながら街から出ようとすると、一群の人馬とすれちがった。真ん中の若い男が林冲を見かけ、名を尋ねる。この男こそが柴進だった。林冲が名乗ると柴進は馬から降り、屋敷へ招く。柴進の屋敷へ出入りしていた洪教頭と林冲は勝負をすることになり、見事に洪教頭を打ち負かす。柴進は林冲にたくさんの金を持たせて送り出す。滄州の監獄は、看守に袖の下を渡すのが当然という場所だった。林冲は柴進から貰った金のお陰で看守から気に入られ、楽な役目に回してもらうことができた。その後も柴進からはちょこちょこと心付けが届き、いつしか四、五ヶ月が過ぎたある日、突然「林教頭、なぜあなたがここに」と呼び止められた。
第十回 林教頭風雪山神廟 陸虞候火焼草料場
登場人物: 林冲、李小二あらすじ: 呼び止めたのは、いつか林冲が世話をしてやった居酒屋の給仕、李小二だった。李小二は、今は監獄の前で店を開いているのだった。李小二はなにかと林冲の面倒を見るようになった。ある日、李小二の店へ怪しい客がやってくる。実はこの客の正体は陸謙だった。李小二は林冲に気をつけるよう伝える。そのころ、林冲はマグサ場の管理を任されることになった。マグサ料の一部の懐へ入るおいしい役目で、ふつうは袖の下を弾まなければ任せてもらえない仕事だった。着任したのはちょうど大雪の日だった。林冲が酒を買いに外出しているあいだに、マグサ場の小屋は雪の重みで潰れてしまった。仕方なく近くの廟で過ごしていると、マグサ場で火の手が上がった。そして、三人の男が廟からマグサ場を眺め、「林冲を始末できて、高衙台も喜ぶに違いない」と言い合った。陸謙と看守とが謀って、林冲を殺すためにマグサ場の仕事を充てがい、小屋へ火をつけたのだった。林冲はその場で三人を槍で刺し殺す。林冲は大雪の中を役所へ向かって歩きはじめたが、途中の藁葺き屋根の家で暖を取らせてもらえないかと頼む。しかし、家にいた四~五人の男から冷たくあしらわれたために怒り、槍で殴りつける。男たちは逃げ出し、林冲は一人で酒を飲む。そこへ二、三十人で取って返してきた男たちに林冲は連行される。
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