初回は創元推理文庫版です。
乱歩の全集は生前没後を含めて何度か刊行されていますが、創元推理文庫版は生前最後の全集である桃源社版全集を底本としています。乱歩は自身の作品が改めて刊行されるたびにちょこちょこと筆を加える癖がありましたが、桃源社版全集は生前最後ということで、乱歩作品の決定版テキストと考えられているためです。
この文庫シリーズはさらに、初出掲載誌の挿絵を全点収録するという方針もあり、これもほかのシリーズでは味わえない楽しみです。
というわけで、もっとも読みやすくおすすめできる文庫は創元推理文庫版なのですが、全く残念なことにいまだに完結していません。それどころか10年以上も続刊が止まっているので、将来的に完結するのかどうかも不明です。
要するに、創元推理文庫版だけでは全作読破できない、ということになります。
完結さえしてくれたら、間違いなく決定版なのですが……
ご参考までに、各巻の収録作品は以下のとおりです。(『日本探偵小説全集2 江戸川乱歩集』も、創元推理文庫版乱歩シリーズの一冊に含まれますが、挿絵を掲載している作品は「陰獣」のみとなっています)
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二銭銅貨
心理試験
屋根裏の散歩者
人間椅子
鏡地獄
パノラマ島奇談
陰獣
芋虫
押絵と旅する男
目羅博士
化人幻戯
堀越捜査一課長殿
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孤島の鬼
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二廢人
D坂の殺人事件
赤い部屋
白昼夢
毒草
火星の運河
お勢登場
虫
石榴
防空壕
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蜘蛛男
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魔術師
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黒蜥蜴
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吸血鬼
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黄金仮面
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妖虫
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湖畔亭事件
一寸法師
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影男
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一枚の切符
恐ろしき錯誤
双生児
黒手組
日記帳
算盤が恋を語る話
幽霊
盗難
指環
夢遊病者の死
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百面相役者
一人二役
疑惑
接吻
踊る一寸法師
覆面の舞踏者
灰神楽
モノグラム
人でなしの恋
木馬は廻る
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大暗室
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盲獣
地獄風景
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何者
暗黒星
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緑衣の鬼
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三角館の恐怖
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幽霊塔
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人間豹
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悪魔の紋章
参考までに、今のところ創元推理文庫で読めない作品は以下の通りです。(中絶作や他作家とのリレー小説は除く)
・長編
闇に蠢く
猟奇の果
白髪鬼
恐怖王
地獄の道化師
幽鬼の塔
偉大なる夢
十字路
ぺてん師と空気男
・短編
鬼
火縄銃
断崖
兇器
月と手袋
妻に失恋した男
指
短編はちょうどあと一冊くらいの分量ですが、どれを表題に持ってきたらよいかわからないくらい地味なものばかり残っています。「非代表作選集」と銘打つしかないな、これは。「鬼」や「月と手袋」は本格ミステリとしてよくできていますが。
長編はまだ9作もあり、一部は短いので合本でいけそうですが、まだ先は長いです……
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