備忘の都

40年間の読書で得た偏った知識をツギハギしながら、偏った記事をまとめています。同好の士の参考に。

乱歩入門

江戸川乱歩入門 最終回 講談社「江戸川乱歩推理文庫」

さて、9回も続くとちっとも入門編ではない内容になってきましたが、最後に講談社が昭和62年から平成元年にかけて全65冊で刊行した「江戸川乱歩推理文庫」のご紹介をしましょう。
このシリーズは刊行されて数年で絶版となったため、古本屋で探すしかありません。
特色としては、完全な全集を目指していたことがあります。したがって、単行本未収録のエッセイ・評論なども収録されており、いまだに他の版では読めない文章がたくさんあります。もちろん、このシリーズの刊行後に発見された文章もありますし、児童向け作品は光文社版全集ほど完璧は目指していませんので、なにもかも収録されているというわけではありませんが。
乱歩が作家デビューする前、古本屋を経営していたときに「奇譚」という手作りの評論書を作って棚へ出したことあり、結局それは売れることなく乱歩の手元でずっと保管されていたのですが、そんなものまで全ページ写真複製で収録しています。
全体は大きく3つのパートに別れ、青帯=一般向け小説、赤帯=児童向け小説、緑帯=評論・エッセイとなっています。古本屋でも時々見かけますが、やはり他では読めない緑帯はかなりの値がついています。

筆者は、このシリーズの刊行が始まったとき、小学6年生で、まさに乱歩にドはまりしていた時期でした。したがって、全て揃えようと思えば揃えられるタイミングだったのですが、一歩先に刊行が始まっていた春陽文庫版で大人向け作品は揃えていたため、春陽文庫に未収録の作品のみ、江戸川乱歩推理文庫で買うということをしていました。今なら重複を厭わず全部揃えるのですが、小学生のこづかいでは、それは無理な相談でした。
というわけで、手元にあるのは赤帯、緑帯のみで、青帯は一冊だけ、リレー小説を収録した「畸形の天女」のみ購入しました。
前回同様、以下に目次を掲載しますが、手元にあるものだけの目次となります。
このシリーズも、巻末に著名人がエッセイを寄せており、こちらもなかなかの名文がたくさんありました。

書名 作品名 著者名
畸形の天女 畸形の天女 江戸川乱歩
畸形の天女 畸形の天女 大下宇陀児
畸形の天女 畸形の天女 角田喜久雄
畸形の天女 畸形の天女 木々高太郎
畸形の天女 五階の窓 江戸川乱歩
畸形の天女 江川蘭子 江戸川乱歩
畸形の天女 殺人迷路 江戸川乱歩
畸形の天女 黒い虹 江戸川乱歩
畸形の天女 女妖 江戸川乱歩
畸形の天女 悪霊物語 江戸川乱歩
畸形の天女 大江戸怪物団 江戸川乱歩
畸形の天女 二人の探偵小説家 江戸川乱歩
畸形の天女 解題 中島河太郎
畸形の天女 私にとっての江戸川乱歩 尾崎秀樹
怪人二十面相/少年探偵団 怪人二十面相 江戸川乱歩
怪人二十面相/少年探偵団 少年探偵団 江戸川乱歩
怪人二十面相/少年探偵団 解題 中島河太郎
怪人二十面相/少年探偵団 顔の大きな怪老人 安部譲二
妖怪博士/青銅の魔人 妖怪博士 江戸川乱歩
妖怪博士/青銅の魔人 青銅の魔人 江戸川乱歩
妖怪博士/青銅の魔人 解題 中島河太郎
妖怪博士/青銅の魔人 乱歩と私 斎藤栄
虎の牙/透明怪人 虎の牙 江戸川乱歩
虎の牙/透明怪人 透明怪人 江戸川乱歩
虎の牙/透明怪人 解題 中島河太郎
虎の牙/透明怪人 憧れのBDバッジ 中野翠
怪奇四十面相/宇宙怪人 怪奇四十面相 江戸川乱歩
怪奇四十面相/宇宙怪人 宇宙怪人 江戸川乱歩
怪奇四十面相/宇宙怪人 解題 中島河太郎
怪奇四十面相/宇宙怪人 凡庸な一読者からの感謝 田中芳樹
鉄塔の怪人/海底の魔術師 鉄塔の怪人 江戸川乱歩
鉄塔の怪人/海底の魔術師 海底の魔術師 江戸川乱歩
鉄塔の怪人/海底の魔術師 解題 中島河太郎
鉄塔の怪人/海底の魔術師 いざ翔ばん乱歩世界へ 内藤陳
灰色の巨人/魔法博士 灰色の巨人 江戸川乱歩
灰色の巨人/魔法博士 魔法博士 江戸川乱歩
灰色の巨人/魔法博士 解題 中島河太郎
灰色の巨人/魔法博士 悪のヒロインに憧れて 鳥井加南子
黄金豹/妖人ゴング 黄金豹 江戸川乱歩
黄金豹/妖人ゴング 妖人ゴング 江戸川乱歩
黄金豹/妖人ゴング 解題 中島河太郎
黄金豹/妖人ゴング 乱歩をめぐるプロトコール 竹本健治
魔法人形/サーカスの怪人 魔法人形 江戸川乱歩
魔法人形/サーカスの怪人 サーカスの怪人 江戸川乱歩
魔法人形/サーカスの怪人 解題 中島河太郎
魔法人形/サーカスの怪人 千鳥足の乱歩コース 中津文彦
奇面城の秘密/夜光人間 奇面城の秘密 江戸川乱歩
奇面城の秘密/夜光人間 夜行人形 江戸川乱歩
奇面城の秘密/夜光人間 解題 中島河太郎
奇面城の秘密/夜光人間 あの「透明人間」は夢だったのか 菊地秀行
塔上の奇術師/鉄人Q 塔上の奇術師 江戸川乱歩
塔上の奇術師/鉄人Q 鉄人Q 江戸川乱歩
塔上の奇術師/鉄人Q 解題 中島河太郎
塔上の奇術師/鉄人Q 理科室の魔人 岡嶋二人
仮面の恐怖王/電人M 仮面の恐怖王 江戸川乱歩
仮面の恐怖王/電人M 電人M 江戸川乱歩
仮面の恐怖王/電人M 解題 中島河太郎
仮面の恐怖王/電人M 乱歩が人生を変えた 大谷羊太郎
おれは二十面相だ/妖星人R おれは二十面相だ 江戸川乱歩
おれは二十面相だ/妖星人R 妖星人R 江戸川乱歩
おれは二十面相だ/妖星人R 解題 中島河太郎
おれは二十面相だ/妖星人R 思い出の図書室 石井敏弘
超人ニコラ/大金塊 超人ニコラ 江戸川乱歩
超人ニコラ/大金塊 大金塊 江戸川乱歩
超人ニコラ/大金塊 解題 中島河太郎
超人ニコラ/大金塊 乱歩と私 山村美紗
新宝島 新宝島 江戸川乱歩
新宝島 知恵の一太郎 江戸川乱歩
新宝島 赤いカブトムシ 江戸川乱歩
新宝島 解題 中島河太郎
新宝島 ランポ→亂歩→乱歩 泡坂妻夫
海外探偵小説作家と作品1 海外探偵小説作家と作品 江戸川乱歩
海外探偵小説作家と作品1 解題 中島河太郎
海外探偵小説作家と作品1 アニマ、アニムス 荒巻義雄
海外探偵小説作家と作品2 海外探偵小説作家と作品 江戸川乱歩
海外探偵小説作家と作品2 解題 中島河太郎
海外探偵小説作家と作品2 醒めたロマンチスト 石川喬司
海外探偵小説作家と作品3 海外探偵小説作家と作品 江戸川乱歩
海外探偵小説作家と作品3 解題 中島河太郎
海外探偵小説作家と作品3 隠れ乱歩、隠れ探偵 難波弘之
悪人志願 悪人志願 江戸川乱歩
悪人志願 解題 中島河太郎
悪人志願 乱歩と私 高柳芳夫
鬼の言葉 鬼の言葉 江戸川乱歩
鬼の言葉 幻影の城主 江戸川乱歩
鬼の言葉 解題 中島河太郎
鬼の言葉 十二階の空飛ぶ住人 島田荘司
探偵小説の謎 随筆 探偵小説 江戸川乱歩
探偵小説の謎 探偵小説の謎 江戸川乱歩
探偵小説の謎 解題 中島河太郎
探偵小説の謎 乱歩と私 藤本泉
幻影城 幻影城 江戸川乱歩
幻影城 解題 中島河太郎
幻影城 乱歩の囁き 山崎洋子
続・幻影城 続・幻影城 江戸川乱歩
続・幻影城 解題 中島河太郎
続・幻影城 脹らんだり、縮んだり 梶龍雄
探偵小説四十年1 探偵小説四十年 江戸川乱歩
探偵小説四十年1 解題 中島河太郎
探偵小説四十年1 乱歩と私 井沢元彦
探偵小説四十年2 探偵小説四十年 江戸川乱歩
探偵小説四十年2 解題 中島河太郎
探偵小説四十年2 『ランポを殺す会』 長井彬
探偵小説四十年3 探偵小説四十年 江戸川乱歩
探偵小説四十年3 解題 中島河太郎
探偵小説四十年3 鬼の側面 山村正夫
探偵小説四十年4 探偵小説四十年 江戸川乱歩
探偵小説四十年4 解題 中島河太郎
探偵小説四十年4 乱歩とわたし 東野圭吾
わが夢と真実 わが夢と真実 江戸川乱歩
わが夢と真実 解題 中島河太郎
わが夢と真実 初めて読んだ小説 横尾忠則
乱歩随想 乱歩随想 江戸川乱歩
乱歩随想 解題 中島河太郎
乱歩随想 すべては乱歩に始まる 戸川安宣
奇譚/獏の言葉 奇譚 江戸川乱歩
奇譚/獏の言葉 獏の言葉 江戸川乱歩
奇譚/獏の言葉 解題 中島河太郎
奇譚/獏の言葉 大先輩乱歩 川村二郎
うつし世は夢 うつし世は夢 江戸川乱歩
うつし世は夢 解題 中島河太郎
うつし世は夢 乱歩と私 渡辺啓助
蔵の中から 蔵の中から 江戸川乱歩
蔵の中から 解題 中島河太郎
蔵の中から 乱歩先生のこと 戸川昌子
幻影城通信 幻影城通信 江戸川乱歩
幻影城通信 解題 中島河太郎
幻影城通信 乱歩と夢と少年と 小峰元
子不語随筆 子不語随筆 江戸川乱歩
子不語随筆 解題 中島河太郎
子不語随筆 乱歩マジックについて 森真沙子
書簡 対談 座談 乱歩書簡集 横溝正史
書簡 対談 座談 探偵小説論争 江戸川乱歩
書簡 対談 座談 対談 座談 江戸川乱歩
書簡 対談 座談 解題 中島河太郎
書簡 対談 座談 亡父乱歩とユーモア 平井隆太郎
乱歩年譜著作目録集成 江戸川乱歩年譜 中島河太郎
乱歩年譜著作目録集成 江戸川乱歩著作目録 中島河太郎
乱歩年譜著作目録集成 解題 中島河太郎
乱歩年譜著作目録集成 乱歩と私 中島河太郎


なお、このシリーズの表紙絵は全て天野喜孝が描き下ろしていました。これを集めた画集も刊行されています。

天野喜孝 乱歩幻影画集
天野喜孝
復刊ドットコム
2012-03-17
(リンク先はAmazon)

関連記事:
江戸川乱歩入門 その1 名作短編集のおすすめ
江戸川乱歩入門 その2 明智小五郎事件簿
江戸川乱歩入門 その3 少年探偵団シリーズ
江戸川乱歩入門 その4 長編のおすすめ
江戸川乱歩入門 その5 創元推理文庫版
江戸川乱歩入門 その6 春陽文庫版(短編)
江戸川乱歩入門 その7 春陽文庫版(長編)
江戸川乱歩入門 その8 光文社文庫「江戸川乱歩全集」

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江戸川乱歩入門 その8 光文社文庫「江戸川乱歩全集」

今回は、光文社文庫版「江戸川乱歩全集」のご紹介です。
このシリーズは、生前最後の全集を底本とした創元推理文庫版とは対照的には、初出の表記にこだわっています。掲載順も発表順となっています。また、小説だけでなく、児童向け作品、エッセイ、評論に至るまで、収録して、本当の意味での全集を目指しています。
特筆すべきは、児童向け作品。初出の雑誌掲載のみで、これまで単行本へ収録されたことのなかった作品がいくつかありましたが、それらを漏れなく収録しています(といっても、雑誌「たのしい一年生」に掲載した「かいじん二十めんそう」とかですが)。
また、評論・エッセイについては生前に単行本としてまとまったものを収録しています。
というわけで、乱歩初心者がいきなりこれで読んでも構いませんが、初めから全作読破を目指す、上級者向けの全集だと思います。
収録作品は以下のとおりです。各巻末には現役ミステリ作家を中心に、著名な乱歩ファンがエッセイを寄稿しています。
(各書名からのリンク先はAmazon)

江戸川乱歩全集 第1巻 屋根裏の散歩者

二銭銅貨
一枚の切符
恐ろしき錯誤
二廢人
双生児
D坂の殺人事件
心理試験
黒手組
赤い部屋
日記帳
算盤が恋を語る話
幽霊
盗難
白昼夢
指環
夢遊病者の死
百面相役者
屋根裏の散歩者
一人二役
疑惑
人間椅子
接吻
解説(山前譲)
祖父と土蔵の思い出(平井憲太郎)

江戸川乱歩全集 第2巻 パノラマ島綺譚

闇に蠢く
湖畔亭事件
空気男
パノラマ島綺譚
一寸法師
解説(新保博久)
「江戸川乱歩」として生きた人の物語。(大林宣彦)

江戸川乱歩全集 第3巻 陰獣

踊る一寸法師
毒草
覆面の舞踏者
灰神楽
火星の運河
五階の窓
モノグラム
お勢登場
人でなしの恋
鏡地獄
木馬は廻る
空中紳士
陰獣
芋虫
解説(新保博久)
二十面相の墓(間村俊一)

江戸川乱歩全集 第4巻 孤島の鬼

孤島の鬼
猟奇の果
解説(新保博久)
深夜の田舎は恐怖一色で塗りつぶされた(横尾忠則)

江戸川乱歩全集 第5巻 押絵と旅する男

押絵と旅する男

蜘蛛男
盲獣
解説(山前譲)
乱歩は散歩(久世光彦)

江戸川乱歩全集 第6巻 魔術師

魔術師
吸血鬼
解説(山前譲)
D寺時代のこと(福島泰樹)

江戸川乱歩全集 第7巻 黄金仮面

何者
黄金仮面
江川蘭子
白髪鬼
解説(山前譲)
私と乱歩(青柳いづみこ)

江戸川乱歩全集 第8巻 目羅博士の不思議な犯罪

目羅博士の不思議な犯罪
地獄風景
恐怖王

火縄銃
殺人迷路
悪霊
妖虫
解説(新保博久)
生命の尊さを訴える(上野正彦)

江戸川乱歩全集 第9巻 黒蜥蜴

黒い虹
黒蜥蜴
人間豹
柘榴
解説(新保博久)
最も恐ろしいトリック(唐沢俊一)

江戸川乱歩全集 第10巻 大暗室

怪人二十面相
大暗室
解説(山前譲)
いつまでも特別な存在(瀬名秀明)

江戸川乱歩全集 第11巻 緑衣の鬼

緑衣の鬼
幽霊塔
解説(山前譲)
乱歩邸訪問の思い出(伊藤秀雄)

江戸川乱歩全集 第12巻 悪魔の紋章

少年探偵団
妖怪博士
悪魔の紋章
解説(新保博久)
二十面相に花束を(田中芳樹)

江戸川乱歩全集 第13巻 地獄の道化師

暗黒星
地獄の道化師
幽鬼の塔
大金塊
解説(山前譲)
西洋館の光と影(藤森照信)

江戸川乱歩全集 第14巻 新宝島

新宝島
智恵の一太郎
偉大なる夢
解説(山前譲)
幻の同居人(種村季弘)

江戸川乱歩全集 第15巻 三角館の恐怖

青銅の魔人
虎の牙
断崖
三角館の恐怖
解説(山前譲)

江戸川乱歩全集 第16巻 透明人間

透明人間
怪奇四十面相
宇宙怪人
畸形の天女
女妖
解説(新保博久)
世代を超えた稀有なシリーズ(井澤みよ子)

江戸川乱歩全集 第17巻 化人幻戯

鉄塔の怪人
兇器
悪霊物語
化人幻戯
海底の魔術師
解説(新保博久)
すれ違い(戸川安宣)

江戸川乱歩全集 第18巻 月と手袋

影男
月と手袋
灰色の巨人
黄金の虎
解説(新保博久)
そこにそれがあるというだけで怖いモノ(綾辻行人)

江戸川乱歩全集 第19巻 十字路

防空壕
大江戸怪物団
十字路
魔法博士
黄金豹
天空の魔人
解説(山前譲)
乱歩の墓(奥泉光)

江戸川乱歩全集 第20巻 堀越捜査一課長殿

堀越捜査一課長殿
妖人ゴング
魔法人形
サーカスの怪人
まほうやしき
赤いカブトムシ
二十面相の本名はなぜ明かされたのか(新保博久)
にわか少年探偵団、結成!(小泉武夫)

江戸川乱歩全集 第21巻 ふしぎな人

妻に失恋した男
秘中の秘
魔王殺人事件
奇面城の秘密
夜光人間
塔上の奇術師
ふしぎな人
かいじん二十めんそう
かいじん二十めんそう
解説(山前譲)
日本に乱歩がいてくれて本当によかった(恩田陸)

江戸川乱歩全集 第22巻 ペテン師と空気男

仮面の恐怖王
電人M
鉄人Q
ペテン師と空気男

桃源社版『江戸川乱歩全集』あとがき
解説(新保博久)
〈乱歩〉を生きた男──戦略的な、あまりに戦略的な(芦辺拓)

江戸川乱歩全集 第23巻 怪人と少年探偵

おれは二十面相だ!!
怪人と少年探偵
妖星人R
超人ニコラ
探偵小説の「謎」
解説(新保博久)
毒──密かな(花村萬月)

江戸川乱歩全集 第24巻 悪人志願

悪人志願
探偵小説十年
幻影の城主
乱歩断章
解説(山前譲)
読書の魔力にとりつかれた(堀江あき子)

江戸川乱歩全集 第25巻 鬼の言葉

鬼の言葉
探偵小説十五年
随筆探偵小説
解説(新保博久)
納戸のなかの乱歩(鬼海弘雄)

江戸川乱歩全集 第26巻 幻影城

幻影城
幻影城通信
類聚ベスト・テン
名古屋・井上良夫・探偵小説
少年の夢こそまこと(松山巖)

江戸川乱歩全集 第27巻 続・幻影城

続・幻影城
解説(新保博久)
嗚呼、乱歩さん(都筑道夫)

江戸川乱歩全集 第28巻 探偵小説四十年(上)

探偵小説四十年
解説(新保博久)
来れ好敵手(穂村弘)

江戸川乱歩全集 第29巻 探偵小説四十年(下)

探偵小説四十年
解説(山前譲)
夜と遊んだ日(朱川湊人)

江戸川乱歩全集 第30巻 わが夢と真実

わが夢と真実
海外探偵小説作家と作品
解説(山前譲)
屋根裏と影のいきもののこと(勝本みつる)

江戸川乱歩入門 その6 春陽文庫版(短編)

今回は春陽文庫の「江戸川乱歩文庫」についてご紹介します。
黒い背表紙に赤い文字、インパクトのある表紙絵を書店でご覧になったことがある方も多いと思います。
児童向けや中絶作品など、特殊なものを除いて、全ての小説が収録されています。
小説のみを読破しようとするのであれば、最も手軽なシリーズです。筆者も、この文庫で読んでいます。

しかし、いろいろ問題もあります。
一番大きいのは「校訂がいいかげん」ということ。
最近、一部の巻のみ新装版が刊行され、その巻末には春陽堂書店版「江戸川乱歩全集」(昭和29~30年)を底本にしているということが書かれています。したがって、乱歩作品の定本とされる桃源社版で削除された文章が残っていたりするのですが、一方で、戦前に検閲で削除された部分がそのまま復活していなかったりもするようです。
創元推理文庫や光文社文庫のように、編集方針が明記されている全集に比べると、信用度はかなり低いシリーズです。

とはいえ。
この文庫で乱歩を読んだ筆者からすれば、「うさんくさいところを含めて乱歩」という気もします。
実際には、乱歩は非常に几帳面な人でしたが、通俗長編などは結末を考えずに書き飛ばしたりもしており(その後で自己嫌悪に陥ったりしますが)、あまり細かい校訂など意識せず、勢いで読んでしまうのが正しい乱歩の読み方ではないかと思います。
そういう意味では、最も肩が凝らずに素直に楽しめるシリーズが春陽文庫版なのです。

新装版が今後も続くのか、目下不明で、その辺も春陽堂らしいのですが、とりあえず旧版に沿って収録作品をご紹介します。冊数が多いため、今回は短編のみ。

全30冊のうち、最初の9冊が短編集です。
これはもともと「江戸川乱歩名作集」というタイトルで刊行されていましたが、昭和62年にカバーを改めて「江戸川乱歩文庫」となりました。ただし本文は「江戸川乱歩名作集」と全く変わっていません。
「陰獣」「ペテン師と空気男」「偉大なる夢」は、他のシリーズでは長編として扱われていることもありますが、このシリーズでは中編という扱いで短編集に入っています。

(リンク先はAmazon)
陰獣
盗難
踊る一寸法師
覆面の舞踏者

(リンク先はAmazon)
パノラマ島奇談
白昼夢

火縄銃
接吻

(リンク先はAmazon)
鏡地獄
押絵と旅する男
火星の運河
目羅博士の不思議な犯罪

屋根裏の散歩者
疑惑

(リンク先はAmazon)
何者
D坂の殺人事件
一人二役
算盤が恋を語る話
恐ろしき錯誤
赤い部屋
黒手組

(リンク先はAmazon)
人間椅子
お勢登場
毒草
双生児
夢遊病者の死
灰神楽
木馬は回る
指環
幽霊
人でなしの恋

(リンク先はAmazon)
月と手袋
地獄風景
モノグラム
日記帳

(リンク先はAmazon)
心理試験
二銭銅貨
二廃人
一枚の切符
百面相役者
石榴
芋虫

(リンク先はAmazon)
ペテン師と空気男
堀越捜査一課長殿
防空壕
妻に失恋した男


(リンク先はAmazon)
偉大なる夢
断崖
兇器

表紙画像をご覧いただくとわかるとおり、『ペテン師と空気男』『偉大なる夢』は、現時点では新装版が出ていません。
編集方針は底本同様よくわからず、なぜこのような組み合わせなのか説明できませんが、個人的には『心理試験』の巻に傑作が集中しているように思いますので、最初に読む一冊におすすめです。

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筆者:squibbon
幼稚園児の頃から40を過ぎた現在に至るまで読書が趣味。学生時代は読書系のサークルに所属し、現在も出版業界の片隅で禄を食んでいます。
好きな作家:江戸川乱歩、横溝正史、都筑道夫、泡坂妻夫、筒井康隆、山田風太郎、吉村昭。好きな音楽:筋肉少女帯、中島みゆき。好きな映画:笠原和夫、黒澤明、野村芳太郎、クエンティン・タランティーノ、ティム・バートン、スティーヴン・スピルバーグ、デヴィッド・フィンチャー。
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