備忘の都

40年間の読書で得た偏った知識をツギハギしながら、偏った記事をまとめています。同好の士の参考に。

ティム・バートン

「シザーハンズ」と「フランケンシュタイン」

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ティム・バートンの出世作「シザーハンズ」(1990年)。
日本で公開されたのは1991年夏のことでしたが、高校1年生だった筆者はこれを劇場で観ました。
当時は、全く映画好きでも何でもなくて、世間で評判になっているものをときどき観る、という程度でした。したがって、こんな聞いたこともない監督の、意味不明なタイトルの映画を目的にわざわざ映画館へでかけたわけではありません。(実際には前年に「バットマン」が公開され、ティム・バートンは人気監督の仲間入りしていたわけですが、映画に関心のない筆者は監督名など覚えていませんでした)

さて、それでは何が目的だったのか。
当時は、新作であってもたいていの映画が2本立てで上映されていました。メインとなる映画にもう一本おまけがついていて、ヒマな人はついでにどうぞ、という感じでした。
地域によっても違うようですが、筆者が子どもの頃にいた名古屋では、「シザーハンズ」はそのオマケの方として公開されていたのです。
ではメインは何だったかといえば、これが「ホーム・アローン」(!)
この夏最大のヒット作で、ミーハーとしては「これだけは観ておかなくっちゃ」という映画でした。
どんな映画が同時上映でかかっているのかなど全くチェックせず、とりあえず「ホーム・アローン」の席取りを兼ねて、早めに劇場へでかけたのでした。

劇場へ入るとすでに同時上映作品は始まっていたのですが、これがなんとも言えない奇怪な映画。なんで手がハサミなのか、主人公はなんでこんなにオドオドしているのか、意味がよくわからないのですが、観ているうちに物語に完全に引き込まれ、ラストでは大感動。
「これこそが、観たかった映画だ!」というくらいに興奮し、「ホーム・アローン」の内容は全くどうでも良くなってしまいました。
ところが、上映を冒頭から見ていなかったこともあり、長らくこの同時上映作品のタイトルが不明のままでした。
「あの素晴らしい映画はいったい何だったんだろう??」と、今から思えばあまりにも情報がなさすぎな高校生活を送っていたわけですが、大学へ入って、多少まともに映画を見るようになって初めて、ティム・バートンの「シザーハンズ」だったと知ったわけです。

さて、前置きが長くなりましたが、この「シザーハンズ」はよく「ティム・バートンのフランケンシュタイン」と言われます。
「フランケンシュタイン」は言わずと知れたメアリ・シェリーが書いた怪奇小説の古典ですが、筆者はこの小説を読んでもあまり「シザーハンズ」との共通点を見いだせず、このように評される理由がイマイチよくわかりませんでした。

実は、ティム・バートンには「シザーハンズ」のプロトタイプというべき短編が一つあります。「フランケンウィニー」(1984年)です。
これは、日本では「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」(1993年)の公開時に東京と大阪のみで同時上映されたそうですが、筆者はそんなことは知らず、「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」の北米版DVDに特典映像として収録されたもので初めて観ました(2002年頃)。
主人公の少年が大切に飼っていた犬が死んでしまい、稲妻の力を借りて生き返らせたものの、街の人々から気味悪がられて迫害を受ける……という話なのですが、ストーリー展開が「シザーハンズ」そっくりであることに驚きます。ほとんどリメイクと言ってもよいくらい同じ話です。
(なお、「フランケンウィニー」は同タイトルで後に長編アニメとしてリメイクされていますが、筆者は短編の方がシンプルで気に入っています)

この短篇はタイトルに「フランケン」と入っていることもわかる通り、主人公が蘇らせた犬はフランケンシュタインの怪物をイメージしています。
確かに迫害を受ける怪物の哀しみは、小説「フランケンシュタイン」と共通しています。
ようやく「シザーハンズ」と「フランケンシュタイン」とのつながりが見えたのですが、しかしまだそこまで大きな影響を受けているという印象はありませんでした。

そんなモヤモヤが、ようやく解消し、全てがつながったのはユニバーサルの古典怪奇映画「フランケンシュタイン」(1931年)を見たときです。
そう、「ティム・バートンのフランケンシュタイン」と言われているのは、原作小説ではなく、映画版の「フランケンシュタイン」のことだったのです。
それが最もよくわかるのは、それぞれのラスト。

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フランケンシュタイン(1931年)

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フランケンウィニー(1984年)

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シザーハンズ(1990年)

いずれも「怪物」が街の人々によって追い詰められます。
「フランケンウィニー」では「フランケンシュタイン」そのままに風車小屋に立てこもりますが、「シザーハンズ」では、これが「怪物」の生まれた城館となっています。
ティム・バートンがどれだけ映画「フランケンシュタイン」を愛しているか、このシーンだけでもよくわかります。

「シザーハンズ」のファンはぜひ、「フランケンシュタイン」と「フランケンウィニー」とをあわせてご覧になることをオススメします。

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ティム・バートンはかつては大好きな監督でした(ここ数年は全然見てないのですが)。
「シザー・ハンズ」「エド・ウッド」など、代表作はジョニー・デップ主演のものが多く、これもその一つです。
ティム・バートンで一番好きな映画をあげろ、と言われると、「シザー・ハンズ」? 「エド・ウッド」? 「バットマン・リターンズ」? 「マーズ・アタック」? とどれにしたものか非常に迷います。しかし、正直言って、この「チャーリーとチョコレート工場」はベスト候補には入りません。とはいえ、とても好きな映画で、劇場へも行きましたし、DVDでも何度も見直しています。

この映画はまず、公開前にサントラを聞いていたのですが、その時点でのけぞりました。
ダニー・エルフマンはティム・バートンの盟友と言うべき存在で、ほとんどの監督作で音楽を担当していますが、最高傑作はこのサントラではないかと思います。
冒頭の「Wonka's Welcome Song」、チョコレート工場内でウンパ・ルンパが歌う「Augustus Gloop」など、いずれも歌詞はロアルド・ダールの原作からそのまま使用しており、作品の雰囲気を驚くほど忠実に再現しています。にもかかわらず、これがさらには、完全にダニー・エルフマンの世界となっているのです(歌唱もダニー・エルフマン本人)。
音楽を聞くだけで映画も傑作となることを確信しました。公開を心待ちにして、ようやく劇場で見て、今度は大爆笑。ウンパ・ルンパのダンスのなんと見事なこと!
これまた、ロアルド・ダールの原作の精神を忠実に踏まえながら、なおかつ完全なるティム・バートン映画になっているのです。
原作・映画・音楽の3つがこれほどハイレベルに融合している映画はなかなかないでしょう。

さて、このダニー・エルフマンとは何者か?
音楽を担当した映画で最も有名なのはティム・バートンが製作総指揮を務めた「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」でしょう。これまた、主人公ジャックの歌は全てダニー・エルフマン本人が吹き込んでいます。
この人はそもそもは、オインゴ・ボインゴというバンドのリーダーを務めていました。
非常に実験的な活動をしていており、中でも有名なものにミュージカル映画「フォービデン・ゾーン」があります。
これは、実兄のリチャード・エルフマンが監督し、ダニー・エルフマンが音楽を担当したもので、映画音楽作家としてのダニー・エルフマンのルーツというべき作品です。
この映画にはダニー・エルフマン自身も出演し、魔王を演じていますが、これがなんとイキイキしていることか。

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真ん中の白い服の人がダニー・エルフマン演じる魔王。
ストーリーはあってないような、むちゃくちゃな展開で、ひたすら映像と音楽を楽しむのが正解です。
「チャーリーとチョコレート工場」の公開に合わせたのか、日本ではほぼ同時期にDVDが発売されました。筆者は、このDVDでダニー・エルフマンの真価を知り、「チャーリーとチョコレート工場」サントラの評価もさらにあがりました。「フォービデン・ゾーン」のサントラも輸入盤を購入し、ハードローテーションで聴き続けていましたね。

Charlie and the Chocolate Factory
Warner Home Video
2005-07-12


フォービデン・ゾーン デラックス版 [DVD]
マリー=パスカル・エルフマン
フルメディア
2005-09-22





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筆者:squibbon
幼稚園児の頃から40を過ぎた現在に至るまで読書が趣味。学生時代は読書系のサークルに所属し、現在も出版業界の片隅で禄を食んでいます。
好きな作家:江戸川乱歩、横溝正史、都筑道夫、泡坂妻夫、筒井康隆、山田風太郎、吉村昭。好きな音楽:筋肉少女帯、中島みゆき。好きな映画:笠原和夫、黒澤明、野村芳太郎、クエンティン・タランティーノ、ティム・バートン、スティーヴン・スピルバーグ、デヴィッド・フィンチャー。
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