わが家の長男は現在小学4年生なのですが、筆者がけしかけてしまったために、子ども向けのシャーロック・ホームズやら、ポプラ社の江戸川乱歩シリーズやらを読み漁り、ミステリ以外の本に見向きもしない時期が続きました。
筆者自身が子どもの頃を振り返ると、小学6年生くらいから、やはり江戸川乱歩ばかり読んでいて、そのままミステリばかり読み続ける人間になってしまいましたが、それまで(5年生くらいまで)は世界の名作を子ども向けに書き直したもの、岩波少年文庫や福音館古典童話シリーズなどを愛読しており、それはそれで非常に楽しい読書生活を送っていました。
この手の「世界の名作」は、子どものうちに下地を作っておかないと、大人になってから改めて読む機会というのもなかなかないよな、と思ったりするので、子どもにも何かしら読ませようと思うのですが、とにかく「ぼくはミステリが好きだから」と決めつけてしまっていて、全く手にも取らない。
そこで、読書好きのパパとして一計を案じました。
長男も異常な本好きではあるので、「間違いなく面白い本」を「手に取らざるを得ない状況」で渡せば、必ず読み始めて食いつくはず。
その第一弾として選んだのが「十五少年漂流記」でした。
「十五少年漂流記」は「海底二万里」と同じくジュール・ヴェルヌの小説ですが、もともと少年向きに書かれた小説です。(「海底二万里」については、以前にこちらで記事を書いています)
登場人物は十代前半の子どもばかり。船に乗って休暇に出かけようと、出発前夜から船に泊まり込んだところ、指導役の大人が乗船していないのに港から沖へ流されてしまい、そのまま嵐にあって漂流。無人島にたどり着き、そこで協力したり反目したりしながら、生活するという物語です。
元のタイトルは「二年間の休暇」というものでしたが、明治期に「十五少年」として翻訳されて以来、日本では「十五少年漂流記」のタイトルで親しまれています。
ちなみに、福音館、偕成社文庫、岩波少年文庫からは原題通り「二年間の休暇」で刊行されています。また、かつて集英社文庫では「二年間のバカンス」のタイトルで出たことがあります。
今回、長男に手渡した本は、筆者自身が子どもの頃に読んだ本でした。
集英社の「少年少女世界の名作」というシリーズに収録されていたもので、今はシリーズ名や装丁が変わっていますが、訳・挿絵は昔のままで出ています。また、集英社みらい文庫にも同じ訳が収録されていますが、挿絵はキラキラしたものに変わっています。
さて、話がそれましたが、長男にこの本を渡した「手に取らざるを得ない状況」というのは電車の中でした。二人で出かけたとき、当然のことながら長男は車中のヒマつぶしの用意などしていないため、この本を渡し、筆者自身は別の本を読み始めたため、長男はまんまとこの本を読み始めました。
読んでいる表情を見ているだけで、ドハマリしているのがありありわかりましたね。
電車が到着しても読みながら歩こうとするため取り上げましたが、帰りの電車でも自分から手を差し出してきて、そのまま帰宅後もずっと読みふけっていました。
「十五少年漂流記」は、子ども向けの名作シリーズや、各社の児童文庫には必ず収録されている定番ですが、それだけ読まれている理由は、やはり「子どもが読んでもストレートに面白い」という点に尽きると思います。
「世界の名作」を子どもに読ませたいけど、どれを選んで良いのかわからない、という場合はこれをまず選んでおけば間違いはありません。
また、もともとが子ども向けの小説なので、年少向けのダイジェスト版でも完訳からそれほど大きく話を省いたり改変したりする必要がないため、面白さがあまり損なわれません。
上記で紹介した福音館、偕成社文庫、岩波少年文庫は完訳版なので読むならば小学5年生~中学生くらいになると思いますが、もう少し年少であればダイジェスト版がおすすめです。
筆者が子どもの頃に読んだ上記の訳の挿絵キラキラバージョン。大人の目から見ると「何じゃこりゃ」と思ってしまうイラストですが、子どもと一緒に本屋へ行くとキラキラした表紙の本ばかり手に取るので、やはり子どもには親しみやすいようです。3~4年生向け。
完訳ではありませんが、表紙が落ち着いているので保護者も手に取りやすいかと。4~5年向け。
これは文庫ではなくハードカバー。低学年向けに短くストーリーをまとめています。1~3年生向け。
「十五少年漂流記」はもともとの話が面白いので、どのバージョンを選んでも間違いはないと思いますが、できればその子の読書力に合ったものを選んで、せっかくの本なのに「難しくて読めなかった」「やさしすぎて退屈だった」ということにならないようにしたいものです。
ここに挙げた以外にもいろいろ出ていますので、Amazonのレビューなど参考にされると良いと思います。
なお、筆者の息子が一番面白かったのは「船が港から離れてしまった理由」だそうです。
何を読んでもミステリ的なポイントが最大の興味になってしまう……
ちょっとショッキングな感想でした。
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