備忘の都

40年間の読書で得た偏った知識をツギハギしながら、偏った記事をまとめています。同好の士の参考に。

水滸伝あらすじ

『水滸伝』備忘録 あらすじと登場人物(二十一回~二十五回)

201710水滸伝136

前回に続き、現在刊行中の新訳「水滸伝」(講談社学術文庫)を読みながら、メモとして作成しているあらすじと登場人物です。赤字は百八星の初登場回です。講談社学術文庫版「水滸伝」は第二十二回までが1巻、第二十三回からが2巻の収録です。「金瓶梅」の原型として有名な武松・潘金蓮・西門慶のエピソードは2巻の冒頭にあります。

第二十一回 虔婆酔打唐牛児 宋江怒殺閻婆惜

登場人物:宋江、王婆、閻婆、張文遠、唐二哥(唐牛児)
あらすじ:声をかけたのは仲人婆をしている王婆だった。友人の閻婆が困っているので金を融通してほしいという話で、宋江は快く引き受けた。閻婆は宋江を気に入り、娘・閻惜の婿にしたいと考え、王婆が話をまとめた。宋江はもともと女性に興味が薄かったため、閻惜との関係はすぐに冷えた。ある日、宋江は同僚の張文遠を連れて閻惜の家で酒を飲んだ。閻惜は張文遠に一目惚れしてしまい、あっという間に二人は深い仲になった。噂は宋江の耳にも入ったが、特に気にもとめず、ますます閻惜の家から足が遠のいた。閻婆は二人を仲直りさせようと、役所にいた宋江を無理やり家へ連れてくると、なんのかんのともてなそうとした。その時、家の前を宋江の知人の唐二哥(唐牛児)が通りかかり、機転を効かせて宋江を外へ連れ出そうとした。閻婆は怒り、唐牛児にビンタを食らわすと追い出した。結局、宋江は閻惜と改めて罵り合い、明け方に家を出た。帰宅途中、宋江は役所からそのまま持って出ていた書類袋を閻惜宅に忘れてきたことに気づいた。中には、晁蓋から受け取った手紙が入っている。宋江は慌てて取りに戻った。一方の閻惜は、宋江が忘れ物を覗き、彼が梁山泊の強盗とつるんで金をもらっていることを知り、宋江を排除して張文遠と一緒になる手がかりを得たと喜んだ。そこへ宋江が、袋を取りに戻ったため離縁を迫り、宋江は了承する。そして、晁蓋から贈られた金も要求するが、宋江は金を受け取っていないため、口論となり、はずみで宋江は閻惜を殺害する。宋江は手紙を取り返し、その場で燃やした上で、階下へ降り、閻婆に娘を殺したことを告げる。閻婆ははじめは「娘が悪い」と理解を示すが、外へ出た途端に宋江を捕まえ「人殺し」と叫び始めた。宋江をよく知る人々は信じようとしなかったが、通りかかった唐牛児は機転を効かせて宋江を逃がす。すると、今度は唐牛児が閻婆に捕まってしまった。

第二十二回 閻婆大閙?城県 朱仝義釈宋公明

登場人物:唐牛児、張文遠、宋大公、宋清、朱仝、雷横、武松
あらすじ:唐牛児は役人に引き渡され、役所へ連れていかれた。閻婆は殺人犯の宋江を唐牛児が逃したと訴えるが、長官は宋江をよく知っていたため、唐牛児が犯人だと決めつける。張文遠が出てきて、捜査を開始する。張文遠もやはり宋江が犯人だと訴え、長官もかばいきれなくなってきたが、宋江はすでに逃亡したあとだった。代わりに父親の宋大公と弟の宋清とを捕まえようとするが、父親はすでに宋江と縁を切っており、役所の証明書も持っていた。長官は諦めようとしたが、閻婆と張文遠が更に上級の役所へ訴えると言い出すため、やむを得ず朱仝と雷横とを父親宅へ派遣する。朱仝が床板を剥がすと宋江が隠れていた。朱仝は宋江を見逃す。そして、朱仝と雷横とは役所へ戻り、宋江の行方はわからず、父親も縁を切っているため罪に問えないと伝え、さらに朱仝はあちこちへ賄賂をばらまいて一件は落着する。宋江は穴蔵から出てくると、弟の宋清と共に逃避行に出る。二人は滄州の柴進の元へ行くことにする。そして、柴進の屋敷で兄弟は歓待を受ける。宋江は酔って部屋へ戻る途中、炭火がいっぱい入った十能の柄を踏んでしまい、火にあたっていた男に火傷を負わせてしまう。

第二十三回 横海郡柴進留賓 景陽岡武松打虎

登場人物:宋江、武松、柴進
あらすじ:飛び起きた男・武松は怒ったが、宋江の名を聞くと平伏した。武松は清河県で人を殴り、殺してしまったと思いこんで柴進の屋敷へ逃げ込んでいたのだった。しかし、死んだと思っていた男が息を吹き返していたとしり、兄の家へ帰ろうと考えていたところだった。柴進の屋敷で宋江と武松は親交を深め、やがて武松は兄の元へ去ることになった。宋江と宋清とは見送りに出た。途中の居酒屋で宋江と武松とは義兄弟の契りを結ぶ。宋江と宋清は武松とわかれ、柴進の屋敷へ帰った。武松は一人で旅を続け、陽谷県に差し掛かると居酒屋で一休みした。そこの主人から、道の先にある景陽岡では大きな虎が出るので気をつけるよう忠告を受けるが、ベロベロに酔った武松は気にせず岡をのぼった。すると、途中で本当に大虎に出くわす。武松は虎と格闘し、殴り殺してしまった。大虎に悩まされた人々は大喜びし、陽谷県の長官は武松を都頭に任命した。武松は上官からも愛され、住民にも慕われた。そんなある日、役所の前で急に声をかけられた。

第二十四回 王婆貪賄説風情 ?哥不忿閙茶肆

登場人物:武松、武大、潘金蓮、王婆、西門慶、?哥
あらすじ:声をかけたのは、武松の兄・武大だった。武大は「チンチクリンの青びょうだん」とあだ名される冴えない男だったが、最近、潘金蓮という美女を娶ったばかりだった。しかし、周囲が潘金蓮の浮気性をからかうため清河県で落ち着いて生活ができず、陽谷県へ引っ越してきて、役所の前で餅を売って生活していたのだった。武大が武松を連れて家へ帰ると、潘金蓮は武松の魅力の虜になってしまい、武松もこの家へ引っ越してくるよう言いくるめてしまった。武松がさっそく兄の家へ身を寄せると、潘金蓮は武大の留守を狙って武松へ言い寄ったが、武松は一喝して拒絶する。そして、武松は家を出てまた役所で寝泊まりするようになった。そんなある日、県の長官は溜め込んだ財産を東京の親類の元へ預けようと考えたが、輸送中に強奪されるのを恐れ、武松に護衛を命じる。武松は武大の元を訪れ、しばらく出張に行くことを告げ、毎日の商売に出かけるときは遅く出かけて早めに帰るように、と忠告をする。潘金蓮は武大がほとんど家をあけなくなったため怒るが、やがておとなしく生活するようになった。そんなある日、門前の簾を下ろそうとした潘金蓮は通りかかった男の頭へぶつけてしまう。西門慶という男で、もともとは金持ちのゴロツキで、いまは役所の前で薬屋を営んでいる。西門慶は潘金蓮に一目惚れした。なんとか彼女に近づこうと潘金蓮の隣家に住む王婆に協力を求める。王婆は仲を取り持ち、あっという間に二人は深い仲になる。さて、?哥という少年が西門慶を尋ねて王婆の家を訪ねたが、殴られて追い出される。そのため、この二人の関係に気づいてしまう。

第二十五回 王婆計啜西門慶 淫婦薬鴆武大郎

登場人物:武大、潘金蓮、王婆、西門慶、?哥、何九叔
あらすじ:?哥は潘金蓮と西門慶との関係を武大へ告げ口する。そして、武大は二人が密会している王婆の家へ、?哥の協力を得て踏み込む。しかし、そこで西門慶に胸を蹴られて、意識を失ってしまう。潘金蓮は寝たきりになった武大を看病もせず、相変わらず西門慶と逢引を重ねる。武大が、このことを弟の武松が知ったらただでは済まないと告げると、潘金蓮は王婆に相談し、武大の殺害を決意する。王婆が授けた知恵は、西門慶の営む薬屋にある毒を武大へ飲ませることだった。薬を飲んだ武大は体中の七つの穴から血を流して死んでしまった。検死官の何九叔が武大の家を訪れようとすると、西門慶がなんやかやともてなされ、多額の金を渡される。訝しみながら武大の死体を見た何九叔は、驚いて倒れてしまう。

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201709水滸伝130

前回に続き、現在刊行中の新訳「水滸伝」(講談社学術文庫)を読みながら、メモとして作成しているあらすじと登場人物です。赤字は百八星の初登場回です。

第十六回 楊志押送金銀擔 呉用智取生辰綱

登場人物:晁蓋、呉用、公孫勝、劉唐、阮小二、阮小五、阮小七、白勝、梁中書、楊志
あらすじ:公孫勝の胸ぐらを掴んでふざけたのは呉用だった。晁蓋、呉用、公孫勝、劉唐、阮三兄弟の七人は意気投合し、契りの盃を交わす。生辰網がたどる予定の道筋はすでに公孫勝が調べており、それは黄泥岡の街道だった。晁蓋が以前に世話をした白勝が黄泥岡の近くに住むため、そこを拠点に定めた。一方の梁中書は生辰網を運ぶ役を楊志に命じた。楊志は行商人に扮して荷物を運ぶことにした。梁中書は自分の執事と二名の副官にお供をさせた。楊志はこの者たちも道中は自分の命令に従うよう約束させた。夏の時期なので、早朝から出発し、真昼には休憩を取りながら進んでいったが、あまりの暑さに行列はすぐにくたばってしまった。楊志は鞭を振りながら皆をせっついたが、梁中書の部下たちはそんな楊志に反感を抱くようになった。行列は何日もかけてノロノロ進むと黄泥岡へさしかかったところで全員が倒れてしまった。楊志は怒りながら前へ進もうとするが、誰も立たない。すると、向かいの松林にこちらの様子をうかがう人影が見えた。とうとう強盗に出くわしたと、楊志は隠れている集団を怒鳴りつけた。七人の男たちは棗売りを名乗り、暑さに耐えかねて林の中で休んでいるのだという。楊志は安心して、また荷物の方へ戻ってきた。そこへ、遠くから近づいてくる男が見えた。酒桶をかついで、村へ売りに行く途中だという。生辰網の兵士たちは楊志の制止も聞かず、その酒を買い求めようとする。やがて、棗売りたちを交えて酒盛りになった。楊志もついつい一緒に飲んでしまう。すると、棗売り七人以外の男たちは次々倒れてしまった。しびれ薬が混ぜられていたのだ。棗売りたちは生辰網をかんたんに持ち去ってしまった。楊志は追おうとしたが体が動かない。楊志はようやく体が動くようになると、梁中書へ合わせる顔がないため、岡から身を投げようとした。

第十七回 花和尚単打二龍山 青面獣双奪宝珠寺

登場人物:楊志、曹正、鄧龍、魯智深、張青、孫二娘、何濤、何清
あらすじ:楊志は身を投げようとした父母の顔を思い出して思いとどまり、岡を下っていった。一方、残された梁中書の部下たちは楊志が強盗と手を組んで生辰網を奪っていったと口裏を合わせることにした。楊志はしばらくあるき続けると一軒の居酒屋へ食事を取り、酒を飲んだ。そのまま金を払わずに逃げようとすると男たちが追いかけてきて闘いとなる。しかし、なかなか勝負はつかない。すると、若い男が楊志の名を尋ねた。楊志が名乗ると、男は平伏した。曹正と名乗るこの男はもともと、八十万禁軍教頭だった林冲の弟子で、居酒屋の入婿になっていたのだった。曹正は楊志を家へ招いてもてなす。曹正に行くあてを尋ねられた楊志は、梁山泊へ行き、曹正の師匠である林冲と合流したいと語る。しかし、梁山泊の頭領・王倫の心が狭く、受け入れてもらえるかわからないため、曹正はそこから近い二龍山へ行くことを勧めた。頂上にある宝珠寺の和尚は還俗して鄧龍と名乗り、強盗団を率いているという。楊志が二龍山へ向かう途中、林の中で入れ墨をした大男の和尚が寝ている。和尚は楊志を見ると飛び起きて、闘いとなった。しかし、なかなか勝負はつかない。互いに名乗ると、この和尚は魯智深だった。楊志と魯智深はたちまち意気投合する。大相国寺に身を寄せていた魯智深は、林冲を助けたことで高?の怒りを買い、寺にいられなくなってしまったのだった。魯智深は寺を出て逃げる途中、立ち寄った居酒屋で女将から毒をもられたが、旦那が解毒剤を飲ませて助けてくれた。この旦那は張青、妻は孫二娘といい、二人とも義侠心に富む者たちだった。魯智深は宝珠寺へ身を寄せようと考えたが、鄧龍は門を閉ざして中へ入れてくれない。このため、仕方なく林の中で寝ていたのだった。楊志は魯智深と共にいったん曹正の家へ戻ってきた。曹正は一計を案じる。曹正と楊志とは百姓姿になり、魯智深を縛り上げると、鄧龍の元へ連行し、宝珠寺を襲おうとしていた酔っぱらいの和尚を捕まえたと報告した。鄧龍が面会すると、魯智深を縛った縄がパラリとほどけ、鄧龍はたちまち禅杖で頭を真っ二つに割られた。そして、手下たちを降伏させると、魯智深と楊志とはそのまま二龍山で山賊になった。一方、生辰網を奪った犯人探しを命じられた済州の長官は、事件を担当する何濤を催促するが埒が明かず、その顔へ「~州に流刑」と入れ墨をする。捜索に失敗すれば、どこかへ流す、ということだった。弱った何濤へバクチ打ちの弟・何清が知恵をつける。

第十八回 美髯公智穩插翅虎 宋公明私放晁天王

登場人物:何濤、何清、白勝、宋江、宋清、晁蓋、時文彬、朱仝、雷横
あらすじ:何清の話によれば、何日か前、宿屋で客の宿帳をつける仕事を手伝っていると、荷車を押す七人の行商人がやってきた。親分の顔を見ると、これがなんと晁蓋だったのだが、李と名乗ったため、怪しいと思っていたということだった。また白勝にも怪しい動きがあったので、白勝を捕まえて尋問すればわかるだろうとのこと。さっそく、何濤は長官へ報告し、八人の捕り方と一緒に白勝の家へ向かった。熱を出して寝込んでいる白勝を縛り上げ尋問したが白状しない。家探しをすると、床下に埋められた財宝が出てきた。このためお白洲へ引っ張ってさらに尋問すると、白勝こらえきれず、晁蓋が首謀者だと認めた。しかし、それ以外の者は名前も知らないという。何濤は部下を引き連れ、晁蓋の住む?城県東渓村へ向かった。役所へ着くとちょうど朝の執務が終わる時間で、あたりは静かだった。役所の前の茶店で今日の当直が誰かと尋ねると、宋江だということだった。宋江は熱心な役人で、民からも慕われていた。弟の宋清は父とともに農夫として真面目にはたらいていた。何濤は宋江に盗賊を追ってきたと話し、長官からの手配書を渡した。宋江は追われているのが兄弟分の晁蓋だと知り驚いたが、何食わぬ顔で協力を約束する。そして、そのまま茶店で待つよう言いくるめると、こっそり馬を飛ばし、晁蓋へ追っ手が来たことを知らせた。晁蓋は感謝しながら、仲間を宋江へ紹介した。村へ帰った阮兄弟以外の三人が残っており、呉用、公孫勝、劉唐と引き合わせた。晁蓋たち四人は宋江の忠告にしがって逃げることにし、いったん石碣村の阮兄弟の家へ行き、そこから近い梁山泊へ財宝を手土産に身を寄せることにした。一方の宋江は何濤の元へ戻ると、県長官の時文彬のもとへ赴き、夜になってから晁蓋の捕縛に向かってはどうかと提案した。長官は朱仝と雷横とを呼び寄せ、晁蓋の捕縛を命じ、一同は夜までに準備を整えて、日が暮れると晁蓋の屋敷へ向かい、表と裏の両面から攻め立てた。晁蓋はまだ出発していなかったため慌てたが、しかし、実は朱仝も雷横もそれぞれに晁蓋を見逃してやりたいと考えていた。晁蓋が屋敷へ火を放って飛び出してくると、そのままこっそりと通してくれたため、晁蓋たちは逃れることができた。盗賊たちに逃げられたと報告を受けた長官は、阮兄弟の住む石碣村へ何濤を向かわせた。

第十九回 林冲水寨大並火 晁蓋梁山小奪泊

登場人物:何濤、晁蓋、呉用、阮小二、阮小五、阮小七、朱貴、王倫、杜遷、宋万、林冲
あらすじ:何濤は大勢の軍団を従えて石碣村へ向かった。一方、呉用は朱貴に梁山泊への案内を頼もうと考える。そんな相談をしているところへ、官軍が迫っているとの報告を受け、一同は急いで家を出る。何濤が阮兄弟の家へ着いたときはもぬけの殻だったため、船を出し、梁山泊方面へ追った。しかし、官軍は晁蓋たちの軍に散々に翻弄され、打ち負かされる。何濤は両耳をそがれるが、一命は取りとめ、そのまま帰っていった。晁蓋たちは朱貴の案内で梁山泊へ入り、王倫の歓待を受ける。宴会が終わると、関所の下にある客館へ泊まることになった。晁蓋は喜ぶが、呉用だけは味方が違った。王倫はたいした人物ではないと見抜き、反感を抱いているはずの林冲を巻き込んで仲間割れさせようと考える。林冲は晁蓋、呉用らと意気投合し、王倫への反感を打ち明ける。翌日、晁蓋らは梁山泊での宴会に招かれた。晁蓋は梁山泊の仲間に入りたいと王倫へ訴えるが、なんのかんのと取り合ってもらえない。すると、林冲が激高し、日頃の不満をぶつけながら、王倫を殺してしまった。度肝を抜かれた杜遷、宋万、朱貴は林冲へ服従を誓う。呉用は梁山泊の筆頭の椅子へ林冲を座らせようとしたが、林冲はそんなことをしては世間の笑いものになってしまうと、固辞する。

第二十回 梁山泊義士尊晁蓋 ?城県月夜走劉唐

登場人物:林冲、晁蓋、呉用、黄安、宋江、劉唐、
あらすじ:林冲は、王倫を成敗したのは彼の心が狭いからであり、決して王倫の地位を狙ったものではないと語り、晁蓋こそが梁山泊の頭領にふさわしいと言う。そして、二番目の席に軍師として呉用、三番目の席に公孫勝を据えた。さらに席を譲ろうとする林冲を皆で説得し、四番目の席に座らせた。続けて阮小二、阮小五、阮小七、杜遷、宋万、朱貴と梁山泊の席次が決まった。こうして兵卒を訓練し官軍に備える日々が始まった。ついに黄安を将軍とする官軍が攻め寄せてきたが、呉用の計略により、散々に打ち破られ、大勢の捕虜と船を確保し、黄安も生け捕りにされた。梁山泊は見る見る間に栄えた。この繁栄は宋江の力添えによるところであり、また功労者の一人である白勝もまだ牢へつながれている。呉用は彼らに報いる策を練る。一方、官軍側は梁山泊の強さに困り果て、盗賊逮捕に務めるよう各方面へ布告を出した。これを読んだ宋江は、梁山泊の豪傑たちのあまりの無法ぶりに悩む。そんな宋江のもとを劉唐が訪れ、晁蓋たちの活躍を報告し、朱仝、雷横にも礼をしたいと言う。宋江は礼を受け取らず、朱仝、雷横にも渡す必要はないと告げ、呉用へ手紙を書く。宋江が劉唐を送り出すと、後ろから声をかける者がいた。


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前回に続き、現在刊行中の新訳「水滸伝」(講談社学術文庫)を読みながら、メモとして作成しているあらすじと登場人物です。赤字は百八星の初登場回です。

第十一回 朱貴水亭施号箭 林冲雪夜上梁山

登場人物: 林冲、柴進、王倫、杜遷、宋万、朱貴
あらすじ: 林冲は酒によって雪の中を倒れていたため、駆けつけた男たちに簡単に捕らわれてしまった。男たちに連行されたのは、なんと柴進の屋敷だった。柴進は林冲を手厚くもてなす。一方、滄州の監獄では林冲が看守、陸謙を殺害して逃亡したと報告され、捜索が開始されていた。林冲はこれ以上迷惑をかけられないため立ち去ることにする。すると、柴進は梁山泊へ行くことを勧める。梁山泊は周囲八百里余りの水郷で、王倫、杜遷、宋万という三人の豪傑が砦を築き、七、八百人の手下とともに強盗を働きながら暮らしているという。柴進は林冲が無事に滄州を脱出できるよう協力する。梁山泊へ向かう途中、大雪に難儀した林冲は、一軒の居酒屋へ駆け込む。そこで給仕に梁山泊への道を尋ねるが、船がなければ行けない場所で、船など用意できないという返事。林冲は仕方なく酒を飲みながら自身の運の悪さを嘆き、壁に五言律詩を書きつける。その詩には「林冲」と自身の名が詠みこまれていた。それを見た居酒屋の給仕が慌てて林冲を店の裏へ連れ出した。給仕は朱貴と名乗り、実は梁山泊頭領の密偵だった。居酒屋を切り盛りしながら、金を持っていそうな客を見かけると痺れ薬を飲ましたり殺したりして金を奪っていたのだった。林冲の名は天下に知れ渡っており、柴進の推薦状もあることから、朱貴は船を出し、林冲を梁山泊へ案内する。そこは立派な要塞だった。杜遷と宋万は林冲の人となりを認めるが、王倫は信用せず、仲間に入りたければ「投名状」を持ってこいという。「投名状」とは誰かを殺して、その頭を差し出すことだった。山を降りた林冲は刀を手に、旅人が通るのを待ったが誰も来ない。三日目にようやく一人の男が通りかかったが、男は林冲を見ると荷物を捨てて逃げてしまった。仕方なく荷物だけ奪って山へ帰ろうとすると、その男が刀をぶら下げ戻ってきて、「強盗め」と林冲を怒鳴りつけた。

第十二回 梁山泊林冲落草 ?京城楊志売刀

登場人物: 林冲、楊志、王倫、杜遷、宋万、朱貴、世傑(梁中書)、周謹
あらすじ: 林冲は戻ってきた男と闘うが、なかなか勝負はつかない。やがて梁山泊から駆けつけた王倫らに止められる。男は楊志と名乗った。かつては役人だったが、都へ石を運搬する事業でしくじり、逃亡していた。恩赦で罪を許されたため、東京へ戻って元の役職に就く予定だった。王倫は楊志を梁山泊へ招いて宴会を開く。この一件によって林冲は梁山泊を認められ、山賊稼業に参加することになる。一方の楊志は東京へ到着した。多額の賄賂をばらまいたお陰で元の役ヘ戻れることとなり、高?にお目どおり叶うこととなった。高?は楊志の経歴書を見て、事業に失敗しながら反省もせず、長期間逃亡するような者は任用できないと告げる。楊志は途方に暮れ、しばらく宿に滞在するうち旅費も底をついた。先祖伝来の宝刀を売ろうと辻に立っていると、ごろつき野郎の牛二がやってきた。牛二は素行が悪く、街の人々も困っていた。二人は喧嘩になり、楊志は牛二を殺してしまう。楊志は見物人を証人として引き連れ、役所へ自首する。役人も楊志に好意を抱き、死罪は免れて北京へ流刑とになる。北京の所司代・梁中書は、太師・蔡京の娘婿だった。梁中書は楊志を副隊長に取り立てようと考えるが、周囲が反対する恐れがあった。このため、現在の副隊長・周謹と東郭門の演兵場で戦わせることにする。

第十三回 急先鋒東郭争功 青面獣北京闘武

登場人物: 楊志、周謹、梁中書、索超、時文彬、朱仝、雷横、劉唐
あらすじ: 楊志と周謹と槍・弓矢で勝負するが、いずれも楊志が勝ち、梁中書は副隊長の交替を宣言する。すると、正隊長の索超が現れ、楊志に勝負を挑む。もし自分が少しでも引けを取ることがあれば、楊志は副隊長ではなく、正隊長に据えれば良いと豪語する。両者は何度も切り結ぶが全く勝負がつかない。観客は喝采を送り、梁中書はこの豪傑二人のどちらか一方でも傷つくことになっては惜しいと、引き分けを命じて二人ともを取り立てることにする。梁中書は舅・蔡京の誕生日に金品を贈ろうとするが、前年は使いの者が強盗に遭い全て奪われてしまった。今年は使いにやる者を部下の豪傑から選ぼうと考える。さて、話は変わって、山東済州に時文彬という長官が赴任した。時文彬は盗賊取締を担当する騎馬隊長・朱仝と歩兵隊長・雷横を召し寄せた。時文彬は二人に梁山泊周辺を巡察するよう命じ、巡回の証として東渓村の紅葉の葉を取ってくるよう言う。雷横が東渓村の紅葉を取り、村の霊官殿の前を通りかかると、中で裸の大男が寝ている。二十人の兵隊で取り囲み捕縛すると、村の保正(世話係)の屋敷へ連行した。

第十四回 赤髪鬼酔臥霊官殿 晁天王認義東渓村

登場人物: 雷横、劉唐、晁蓋、呉用
あらすじ: 東渓村の保正・晁蓋は財産家で人望の厚い人物だった。晁蓋は雷横から、こそ泥を捕まえて連行してきたと聞かされる。泥棒は門番小屋に吊るしたまま、晁蓋は雷横を酒でもてなした。飲んでいる最中、晁蓋は手洗いへいくふりをして泥棒を見にいく。赤毛の大男・劉唐だった。劉唐は晁蓋の豪傑ぶりを噂に聞き、儲け話を持ちかけるため村を訪れていたのだった。それを聞いた晁蓋は劉唐に、自分のことを叔父と言い張れ、自分も甥だと認めるから、と伝える。打ち合わせ通り、雷横の前で一芝居を打つと、雷横は怪しみもせずに劉唐の縛めを解いて、帰っていった。晁蓋は雷横へ十両の銀子を土産として渡す。さて、劉唐の持ちかけた土産話は、梁中書が蔡京へ贈る誕生日祝(生辰網)を強奪するというものだった。これは不義の財だから奪っても構わないという。晁蓋は喜び、いったん劉唐を部屋へ案内して休ませる。劉唐は部屋で一人になると、雷横への怒りがこみあげてきた。雷横が晁蓋から受け取った銀子も騙し取ったものだと思い込み、これを奪い返しにいく。雷横に追いついた劉唐は、往来で挑むが、なかなか勝負がつかない。二人の闘いを見ていた見物人の一人が仲裁に入った。この男は呉用という秀才で、二人から事情を聞いた。呉用は晁蓋とも懇意にしていたが、劉唐のような甥がいるという話は聞いたことがない。これは何かわけがあるだろうとにらむ。そこへ、晁蓋が駆けつけた。呉用も劉唐とともに晁蓋の屋敷へついていった。呉用は生辰網を奪う計画を聞かされるが、わずかな人数ではできないことだと説く。そして、七、八人の豪傑に協力を頼むべきだと、その名前を挙げる。

第十五回 呉学究説三阮撞籌 公孫勝応七星聚義

登場人物: 呉用、阮小二、阮小五、阮小七、公孫勝
あらすじ: 呉用は梁山泊近くの石碣村に住む阮小二、阮小五、阮小七という三兄弟の名を挙げた。呉用は三兄弟の説得に向かうこととした。呉用は三兄弟に歓待され、その晩は阮小二の家へ泊めてもらうことになる。そこで、梁山泊に巣食う盗賊たちの話を聞く。兄弟が盗賊たちに憧れていることを知り、呉用は今回の計画に間違いなく乗ってくるだろうと判断する。梁山泊への仲間入りをそそのかしてみるが、三兄弟は梁山泊の頭領・王倫の心が狭いためためらっていると話す。そこで、呉用は生辰網を襲う計画を話す。三兄弟はそのまま石碣村を出て、呉用について東渓村へついてきた。仲間が六人に増えたところで、晁蓋の門前に一人の男が現れる。晁蓋が来客中だから、と追い返すよう伝えると、男は門前で暴れ始めた。晁蓋が応対するとあごひげを生やしたその男は公孫勝と名乗る。実は公孫勝も生辰網を襲撃する計画を晁蓋へ持ち帰るため訪れたのだった。話をしていると、突然、部屋に入ってきた男が公孫勝の胸ぐらを掴み、「今の話、全部聞いたぞ」と脅した。

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筆者:squibbon
幼稚園児の頃から40を過ぎた現在に至るまで読書が趣味。学生時代は読書系のサークルに所属し、現在も出版業界の片隅で禄を食んでいます。
好きな作家:江戸川乱歩、横溝正史、都筑道夫、泡坂妻夫、筒井康隆、山田風太郎、吉村昭。好きな音楽:筋肉少女帯、中島みゆき。好きな映画:笠原和夫、黒澤明、野村芳太郎、クエンティン・タランティーノ、ティム・バートン、スティーヴン・スピルバーグ、デヴィッド・フィンチャー。
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