
高階良子。
今どきの若者の知名度はどんなもんなのでしょう。
少女漫画の世界にはあまり詳しくないのでよくわからないのですが、少なくとも小学生にはあんまり知られていないでしょう。
ホラーやミステリを題材にしたマンガで知られる大御所です。
筆者の世代にとっては、江戸川乱歩や横溝正史の小説をマンガ化していたことでもよく知られています。
もう少し上の世代となると、「乱歩は読んだこと無いけど、高階良子は読んでた」という女子がたくさんいたりします。
一つ思い出話を語ると。
就職したばかりの頃はしばらく、筆者は周囲に全く趣味の話をすることなく過ごしていました。
そんなある日、休憩室で昼飯を食べていると、横で先輩の女性二人が「あれ、なんていうタイトルだっけなー?」と考え込んでいました。
お互いに言い合っているあらすじを聞いてピンと来た筆者は、しばらく思い出すのを待っていましたが、あまりに長時間「なんだっけ、なんだっけ」と言い続けているので、とうとう堪りかねて「『ドクターGの島』ですね」と横から口を挟んでしまいました。先輩2人は「そうそう!それ!」と盛り上がったあと、「あれ、なんでそんなこと知ってるの?」という話になり、正体がバレてしまったというわけです。
ここからわかるのは、今から20年くらい前には「知っている人は多いけど、かなり忘れられている」という存在になっていたということです。
筆者は子どもの頃は少女マンガとは全く縁がなかったため、高階良子を知ったのも乱歩・横溝を読み尽くしたあとでした。従って、幼少期に「なかよしKC」で読んでいた、という人に比べれば思い入れは無いに等しく、どちらかというと「乱歩・横溝がこんなキラキラしたマンガになってる!」という興味で読んだものです。
上記の一件とほぼ同時期に、文庫版で傑作選が出たりして、そのときに乱歩・横溝原作ものは一通り復刊していましたが、それからも早くも20年が経過して、若い人にとってはますます知らない漫画家になりつつあると思いますので、とりあえずどんな作品があったかだけ改めてまとめておきます。
江戸川乱歩・原作
原作:孤島の鬼
原作:パノラマ島奇談
原作:黒蜥蜴
一番インパクトが強いのはやはり「ドクターGの島」かな、と思いますね。主人公が少女になっているので。ストーリーは実は意外と原作にちゃんと沿っているのですが、「小学生女子が読んで怖がる」という範疇に物語や描写を抑えています。
まあ、今の時代の少女マンガ好きの方が敢えて読むべきかどうかはわかりませんが、乱歩好きは読んでみて損はないと思います。
横溝正史・原作
原作:仮面劇場
原作:夜光虫
乱歩原作作品が有名作ばかりなのに対し、横溝正史の原作は激シブ。どっちも由利先生のシリーズです。
正直、原作は中学生の頃に読んだきりなので、ストーリーをさっぱり忘れてしまっているのですが、どっちも原作に割と忠実だったような気がしますよ。(気がするだけで、確認していません)
乱歩のマンガ化に比べると、原作ファンが少ないと思われるため、「ドクターGの島」ほど伝説的に語られたりはしていませんが、美少年ばかり出てくる横溝の原作は、実は少女マンガに向いていたのかも知れません。(この記事を書こうと思ったのも、先日の記事に書いた「真珠郎」の復刊を見たためです)
さて、乱歩原作も横溝原作も、初めは「なかよしKC」で出ていましたが、その後、2000年前後に文庫化されています。
収録作:「黒とかげ」「血とばらの悪魔」
収録作:「血まみれ観音」「真珠色の仮面」
講談社漫画文庫の「高階良子傑作選」は全5冊刊行されましたが、そのうち2冊は乱歩原作・横溝原作でまとめられています。
このときは「ドクターGの島」は収録されなかったのですが、しばらく経って別の出版社から文庫版が出ました。
このときは、「ドクターGの島」のほか短編2篇が収録されました。
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