備忘の都

40年間の読書で得た偏った知識をツギハギしながら、偏った記事をまとめています。同好の士の参考に。

海外ミステリ

「幽鬼の塔」「サン・フォリアン寺院の首吊人」読み比べ


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「緑衣の鬼」「幽霊塔」とならび、「幽鬼の塔」(1939年)も乱歩による海外ミステリの翻案作品として知られています。
原作はフランスの作家ジョルジュ・シムノンの「サン・フォリアン寺院の首吊人」(1930年)ですが、乱歩自身の回想によれば「飜案というほど原作に近い筋ではないので、シムノンに断ることはしなかった」ということです。
とはいっても、読み比べてみるとやはり、おおむね同じ話と言わざるを得ません。戦前の日本のことなので、著作権にはおおらかだったのでしょう。しかし、「幽霊塔」や「三角館の恐怖」に比べれば、たしかに乱歩流に書きかえられた物語といえます。

今はシムノンの作品はほとんど読まれておらず、「サン・フォリアン寺院の首吊人」も長らく刊行されていないため、なかなか気軽に読めない状況です。(冒頭の表紙画像は水谷準訳の角川文庫版・1976年2刷のもの)
そこで今回は、両者の違いなどをご紹介します。

「サン・フォリアン寺院の首吊人」は、シムノン最初期の長篇です。のちに警視となる主役のメグレもこの時は警部でした。
メグレは出張先のカフェでたまたま、札束を小包にしている男を見かけます。後をつけると、郵便局へ行って発送している。
何か犯罪が関係しているのか、と気になったメグレはあとをつけ、途中で男がカバンを購入すると、自分も同じものを買い求め、男が少し目を離したすきにすり替えます。
男はホテルへ戻り、カバンがすり替わっていることに気づくと、慌てて街へ戻り、探し回りますが、見つからないとわかると、ホテルへ戻り、そのままピストル自殺してしまいます。

……という冒頭部は、「幽鬼の塔」でも大筋はなぞられています。
「幽鬼の塔」の主人公は警察官ではなく、単に猟奇的な趣味を持つ河津三郎という素人探偵の青年であり、なにか面白いことはないかと町をさまよう中で、大切そうに荷物を抱えた男に興味持ち、カバンをすり替えます。
男がカバンを求めて街へ戻るのは同じですが、見つからないとわかると、男は懐中にあった札束を焚き火で全部燃やしてしまいます。
そして、焚き火が終わると、男は五重塔へ登り、そこで首をくくって死んでしまいます。
原作があっさりとピストル自殺していることに比べると、ずいぶんと怪奇的な雰囲気が強まっています。
また、焚き火シーンは原作にはありません。男が金を燃やしていたことは、のちのちに判明する事実です。
カバンの中身も、原作が血痕と思われるシミが付いた服とシャツのみですが、「幽鬼の塔」では縄と滑車と洋画家用のブラウスでした。

さて、ここからシムノン版と乱歩版と最も大きな違いが現れてきますが、それは主人公の「罪の意識」です。
メグレ警部は犯罪捜査のためとはいえ、興味本位の行動で一人の男を死にやったことを深く悔い、それが事件の真相へと向かう動機の一つとなっています。
しかし、乱歩版の河津三郎は、なぜかこのような罪の意識を一切持ちません。全くの野次馬根性で事件の真相へ迫る活動を続けます。

中盤に探偵の前へ次々現れる、自殺した男の過去を知る人物たちも、おおむね原作に沿っていますが、役割分担は微妙に異なっており、一対一では対応していません。

乱歩版では画家のアトリエに大量に並べられていた首吊人のデッサンは、原作にも写真屋の描いたデッサンとして出てきます

 木の枝々に首吊人のぶらさがっている森のほとり……かと思うと寺院の鐘撞き堂、十字架の本の腕木、風見鶏の下、それぞれに死人がぶらんこをやっている。
 その首吊人も多種多様で、あるものは十六世紀の服装で、神秘劇の宮廷のように、すべての人間が地上数尺に足をぶらぶらさせている。
 かと思うと、シルクハットにフロック、手にステッキという気狂いじみた首吊人もあり、横木はガス燈の燃え口になったりしている。
――水谷準訳

という描写で、原作もここはかなり怪奇色が濃厚です。

明かされる真相も、大筋では同じなのですが、ずいぶんと趣きが違います。
登場人物たちが過去に作っていたグループは、原作では「幽鬼の塔」ほど神秘的な秘密結社ではなく、趣味や思想を同じくする学生の集まりでした。
そこで若さゆえに起きたおぞましい過ち、それぞれの苦悩に満ちたその後の人生を描いており、青春小説の様相を帯びてきます。

というわけで原作は、前半はドキュメンタリータッチ、ラストは痛切な青春小説という印象なのですが、これらは乱歩の資質と相容れません。
「幽鬼の塔」は、ストーリー展開は原作に借りながら、怪奇・幻想・冒険という乱歩におなじみのモチーフをてんこ盛りにしており、乱歩自身がいうように「近い筋ではない」ということはありませんが、読後の印象はずいぶんと異なるものでした。

関連記事:
ポプラ社 少年探偵江戸川乱歩全集43「幽鬼の塔」


サンフォリアン寺院の首吊り人 メグレ
ジョルジュ・シムノン
グーテンベルク21


「灰色の女」から乱歩版「幽霊塔」への伝言ゲーム

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乱歩によってリライトされたことで有名な黒岩涙香の「幽霊塔」については、以前にこちらの記事に書きました。

黒岩涙香の「幽霊塔」

乱歩の「幽霊塔」は
「灰色の女」 → 涙香版「幽霊塔」 → 乱歩版「幽霊塔」
という流れでリライトが繰り返されてきたわけですが、乱歩は「灰色の女」の内容はおろか、タイトルすら知らずに「幽霊塔」を執筆しています。
そのため、この三作品を比較すると、伝言ゲームがうまく行った点、途切れてしまった点などいろいろと発見があります。
今回の記事では、そのあたりの面白い部分をいくつかご紹介しましょう。(記事の都合上、全面的にネタバレします)

登場人物と物語の舞台

さて、この物語については乱歩版「幽霊塔」以外は読んだことがない、という方も多いのではないでしょうか。
細かい話に入る前に、それぞれの登場人物や舞台などをご紹介しましょう。
涙香版「幽霊塔」は、「翻案」とは言っても「灰色の女」の物語をほぼ忠実になぞっており、「翻訳」といって差し支えない仕上がりです。ただし、登場人物名は一部を除いてほぼ和名となっています。これは、舞台を日本に置き換えたわけではなく、翻訳小説を読み慣れない明治の日本人読者に対する工夫です。
作品の舞台はイギリスのままですので、名前は和風であっても、みなイギリス人として描かれています。
一方、乱歩版「幽霊塔」は思い切って舞台を日本の長崎近郊へと移しています。登場人物も全て日本人となっており、それぞれ涙香版よりさらに自然な和名がつけられています。

乱歩版 涙香版 灰色の女(中島賢二訳)
北川光雄 丸部道九郎 テレンス・ダークモア
野末秋子 松谷秀子 コンスエロ・ホープ
児玉丈太郎 丸部朝雄 ウィルフレッド・アモリー卿
三浦栄子 浦谷浦子(お浦) ポーラ・ウィン
和田ぎん子 輪田お夏 フローレンス・ヘインズ
黒川弁護士 権田時介 トーマス・ゴードン
肥田夏子 虎井夫人 ミス・トレイル
森村刑事 森主水 マーランド
芦屋暁斎 ポール・レペル ポール・レペル

ダークモアが道九郎、ポーラがお浦、ゴードンが権田、ミス・トレイルが虎井夫人、マーランドが森主水と、涙香調の変換が冴えています。
ポール・レペルのみ、涙香版では和名ではありませんが、この人物はイギリス人ではなく、パリ在住のユダヤ人という設定です。(イギリス人から見て)外国人であることを強調するため、名前をそのままにしているのかな、という気もします。

幽霊塔

涙香版「幽霊塔」の前書きには、原作は「ベンヂスン夫人のファントムタワー」と書かれており、この記述がその後100年におよぶ混乱のもととなったわけですが、それでは本当の原作「灰色の女」では、この建物はどのように呼ばれていたのでしょうか。
それは「恐怖の館(The House of Fear)」です。原作の第一章の章題でもあります。
建物に対する「幽霊塔」という呼称は、これまた涙香調の翻訳と言えるでしょう。

狐猿こえん

乱歩版に登場する肥田夏子は肩に一匹のサルを乗せて登場します。作中では重要な小道具となります。
ところが、涙香版の虎井夫人が連れているのはサルではなく「狐猿こえん」という謎の動物で、文中では以下のように説明されています。

狐猿とは狐と猿に似た印度の野猫で、木へも登り、地をも馳け、鳥をも蛇をも捕って食う動物だが何うかすると人に懐ついて家の中へ飼って置かれると、兼ねて聞いた事はある

正直、無茶苦茶な説明で、いったいどんな動物なのかサッパリわけがわかりません。
実を言えば、筆者が「灰色の女」を読んだときの最大の興味は「狐猿こえんの正体はなんぞや?」という点だったのですが、これが驚いたことに「マングース」でした。
論創社から刊行された中島賢二訳『灰色の女』では、以下のように描写されています。

奇妙な女のかたわらで、見たことのない小さな獣が走ったり跳ねたりしていたが、私はそれを一目見ただけで激しい嫌悪感に襲われた。それはネズミのような小さな頭をして、紡錘型の尾を持ち、短い薄茶色の毛で被われていた。その獣の躰は、先に鋭い爪の生えている細くて小さい脚の割には、不釣り合いなほど丸々と太っていた。

マングースというと、筆者などは、むかし東海地方でしきりにCMが放映されていた「香嵐渓ヘビセンター」の「マングース対コブラショー」が真っ先に頭に浮かびますが、日本の在来種ではないため、明治の人びとはこんな動物を知りません。
涙香が「狐猿こえん」と訳したのは、このような事情からでしょう。原作にはない「印度の野猫」云々の説明も、マングースの説明としてはそれほど大外れではなく、おそらくは「マングースとは何か?」を調べた上で、このような記述をしたのではないかと思われます。
乱歩も、この狐猿こえんの存在は気になったのではなかろうかと思いますが、原典に当たることもできず、やむを得ず、単なる「サル」としたのでしょう。実際のところ、物語の進行上、この動物はサルでも全く問題ありません。

呪文

幽霊塔の秘密を解く鍵である呪文も、原作から変遷します。
涙香版は漢文の難解な詩となっていますが、原作はわりと平易な単語で綴られた問答形式になっており、それほど難しい文章でありません。
以下にそれぞれ原文を引用します。

「灰色の女」
Where had it lain?
In the depths.
By what right was it raised?
The right of possession.
From whom was it wrested?
The Evil One and the Monk.
Whose shall it be?
The Amonys', now and henceforth.
When may the secret be told?
When the limit of disaster is at an end.
Where may it then be found?
When the hour is right that which is green shall move, and the shining of light may reveal the way.
Does the way tend upward or down?
First the one, then the other, as the chart directs.

涙香版「幽霊塔」(青空文庫より)
明珠百斛めいしゅひゃっこく 王錫嘉福おうしかふく
※(「髟/几」、第4水準2-93-19)偸奪ようこんとうだつ 夜水竜哭やすいりょうこく
言探湖底げんたんこてい 家珍還※(「木+續のつくり」、第4水準2-15-72)かちんかんとく
逆焔仍熾ぎゃくえんじょうし 深蔵諸屋しんぞうしょおく
鐘鳴緑揺しょうめいりょくよう 微光閃※(「火+(日/立)」、第3水準1-87-55)びこうせんよく
載升載降さいしょうさいこう 階廊迂曲かいろううきょく
神秘攸在しんぴしゅうざい 黙披図※(「竹かんむり/(金+碌のつくり)」、第3水準1-89-79)もくひとろく

乱歩版「幽霊塔」
世の中が静かになったら、わが子孫は財宝を取り出さなければならぬ。鐘が鳴るのを待て。緑が動くのを待て、そして、まず上がらなければならぬ。次に下らなければならぬ。そこに神秘の迷路がある。委細は心して絵図を見よ。

乱歩版の呪文は作中では、つたない英文で書かれたものを主人公が訳したということになっていますが、こうして並べてみると、「灰色の女」に書かれた問答を直接訳したと言っても差し支えないくらい、要点をきちんと押さえています。
涙香の書いた難解な呪文から、よくぞここまで元へ戻せたものだと、感心したポイントです。

後日譚

原作では、後日譚はなく、主人公とヒロインとが結ばれるところで幕を閉じます。
しかし、涙香は数ページの後日譚をつけ加えました。原作でも別の箇所で記述されていることをまとめている内容もあれば、涙香が独自に書き加えた内容もあります。
乱歩もこの部分は踏襲し、おおむね涙香版と同じ内容の後日譚を書き加えています。

灰色の服

さて、原作はタイトルにも現れているとおり、ヒロインはほとんどのシーンで灰色の服を着て登場します。この服の色にはどんな意味が込められているのか?
これが、原作の最後に明かされるヒロインの出生の秘密と絡む、物語の重要な要素となっています。
涙香版でもこの設定は引き継がれ、主人公は常に「日陰色」の服を身にまといます。
初登場シーンでは以下のように記述されています。

併し地図よりも猶目に付いたは、美人の身姿なりだ、着物は高価な物では無い、不断着には違い無いが、肩から裳まで薄い灰色の無地だ、灰色は鼠色の一種で日影色とも云い、縁喜の能く無い色だと信じられて居て、殊に年の若い婦人などは之を厭がる、其の厭がるのを何故に着けて居るだろうと是も怪しさの一つに成った

「縁喜の能く無い色」云々の記述は、原作にはなく、当時の日本人にとって特に珍しくなかったであろう灰色の服が、この物語においていかに重要であるかをしきりに強調しようとする意図がうかがえます。
ところが、原作のタイトルを知らない乱歩にとっては、ここは重要なポイントとは考えられませんでした。このため、ヒロインは初登場の時点では「地味な和服」を着ていますが、それ以降は服装に関しては特別な描写は見られません。

これは、乱歩版において、終盤の展開が大きく改変されていることにもつながります。
原作(および涙香版)では、恋敵の弁護士に、ヒロインと関係を断つよう約束させれた主人公は、最後までその約束を守ります。しかし、ヒロインの意外な出生の秘密が明かされ、それを聞いた弁護士は自ら身を引いて、ヒロインを主人公へ譲ることを宣言します。
ヒロインの無実については、弁護士がすでに証拠を持っているため、主人公はそれを聞くだけです。

ところが、乱歩は「灰色の服」を重視しなかったため、ヒロインの神秘性が原作よりも若干薄まり、出生の秘密もバッサリ省略しています。このため、主人公と弁護士とのヒロインを賭けた勝負では、主人公自らがヒロインの無実の証拠をつかみ、弁護士との約束を反故にするという展開しています。
このような展開とするため、原作とは異なり、終盤に元婚約者(三浦栄子)を登場させ、その口から事件の真相を語らせます。

さらに原作では、主人公の叔父がヒロインと初めて対面したときに失神した本当の理由が、ラストに至って初めて明らかになるという趣向でしたが、上記の改変の結果、乱歩版ではそれは失われることになってしまいました。また主人公の負っている「使命」も乱歩版では単に自己の冤罪を雪ぐだけとなってしまい、原作ほどの迫力はありません。
原作(および涙香版)での出生の秘密をめぐる展開は、たしかに大時代的ではありますが、「灰色の女」というタイトルの意味が浮かび上がってくるという点では感動的でもあり、乱歩が省略してしまったのは残念に思います。原題を乱歩がもし知っていたとしたら、このような改変がされたかどうか?

ただ、一方でこれこそが乱歩らしい終わり方だとも考えられます。
乱歩作品に共通する弱点なのですが、例えば「パノラマ島奇談」のように、壮大な幻想世界を描きながら、最後には探偵が登場して「事件」として謎解きしてしまうという、ロマンチシズムを貫き通せない面があります。
「幽霊塔」のリライトにおいても、いつも通りの癖が出てしまった、とも考えられます。

なお、論創社『灰色の女』の訳者あとがきで中島賢二氏はウィルキー・コリンズ「白衣の女」(岩波文庫版は中島氏の訳)との類似点を指摘していますが、たしかに詳細に検証すればオマージュと言うべき点がいろいろ出てきそうです。

関連記事:
ポプラ社 少年探偵江戸川乱歩全集45「時計塔の秘密」
黒岩涙香の「幽霊塔」
「幽鬼の塔」「サン・フォリアン寺院の首吊人」読み比べ
ブラム・ストーカー「吸血鬼ドラキュラ」と横溝正史「髑髏検校」

関連書籍(リンク先は全てAmazon)

灰色の女 (論創海外ミステリ)
A.M. ウィリアムスン



幽霊塔
江戸川 乱歩


白衣の女 (上) (岩波文庫)
ウィルキー・コリンズ



「灰色の女」発見のきっかけとなった1920年のアメリカ映画のDVDも発売されています(輸入盤)。


エラリー・クイーンのジュブナイルミステリ

かなり昔、ハヤカワ文庫には「Jr」という分類があり、エラリー・クイーンのジュブナイルが収録されていました。
Wikipediaによれば、クイーンのジュブナイルは以下のようなラインナップとのことです。

エラリー・クイーン・ジュニア名義の作品
  • 1941年 黒い犬の秘密 The Black Dog Mystery
  • 1942年 金色の鷲の秘密 The Golden Eagle Mystery
  • 1943年 緑色の亀の秘密 The Green Turtle Mystery
  • 1946年 赤いリスの秘密 The Red Chipmunk Mystery
  • 1948年 茶色い狐の秘密 The Brown Fox Mystery
  • 1950年 白い象の秘密 The White Elephant Mystery
  • 1952年 黄色い猫の秘密 The Yellow Cat Mystery
  • 1954年 青いにしんの秘密 The Blue Herring Mystery
  • 1966年 紫の鳥の秘密 The Purple Bird Mystery (邦訳は早川書房 HMMに連載のみ。単行本・文庫なし。)
    (上記ジュナの冒険シリーズの他に、エラリー・クイーン・ジュニア名義の児童向けミステリ小説が2作あるが日本語未訳である)

  • 現在は、いずれもかなり入手困難な状況で、筆者も古本屋では時々見かけますが、一冊も読んだことはありません。
    よくよく見ると「クイーン・ジュニア」とあることからわかる通り、クイーン作、と謳っているはいえ、実際にはこれは別の作家による代作だということで、今後再刊されることはなかろうと思っていました。

    ところが、今年の夏に角川つばさ文庫という、児童向け文庫から「見習い探偵ジュナの冒険」という本が出ました。
    ハヤカワ文庫版とは全くタイトルが異なりますが、「緑色の亀の秘密(The Green Turtle Mystery)」の新訳です。



    さて、何の説明もなく、しかもシリーズの3作目から刊行されたため、「果たしてシリーズを続けるのか?これ一冊で終わりなのか?」と全国のクイーンファンが注目していたところ、年明けに2冊めが出ました。
    見習い探偵ジュナの冒険 黒い犬と逃げた銀行強盗 (角川つばさ文庫)
    エラリー・クイーン 作
    中村佐千江 訳
    (リンク先はAmazon)


    タイトルからわかる通り、一作目の「黒い犬の秘密(The Black Dog Mystery)」です。

    こんな表紙で出されるとコレクションしづらい、という意見もあろうかと思いますが、このまま順調にいって全てが訳されると本邦初の単行本がこんな表紙で出てしまう可能性もあり、目が離せない状況です。
    ちなみに、少なくとも一冊目をパラパラと見た限りでは、解説はついていないため、代作というような作品に関する情報は全くありません。また、完全訳なのかどうかもよくわかりません。さらに、今後もシリーズが続くのかどうかもわかりません。
    まあしかし、こういうちょっとしたうさん臭さが、かつての偕成社ミステリがそうであったように、児童向けミステリの魅力でもあるでしょう。

    原作は洋書で入手可能です。


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    筆者:squibbon
    幼稚園児の頃から40を過ぎた現在に至るまで読書が趣味。学生時代は読書系のサークルに所属し、現在も出版業界の片隅で禄を食んでいます。
    好きな作家:江戸川乱歩、横溝正史、都筑道夫、泡坂妻夫、筒井康隆、山田風太郎、吉村昭。好きな音楽:筋肉少女帯、中島みゆき。好きな映画:笠原和夫、黒澤明、野村芳太郎、クエンティン・タランティーノ、ティム・バートン、スティーヴン・スピルバーグ、デヴィッド・フィンチャー。
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