201907現代怪奇小説集

今月、創元推理文庫から東雅夫編「平成怪奇小説傑作集」が発売されました。



それにしても、改元されて一番嬉しいのはこの手の「時代を振り返る」企画ですね。
そこでふと、この手の怪奇小説アンソロジーの大御所である、中島河太郎・紀田順一郎の編纂による「現代怪奇小説集」を思い出したので、このブログの例によって目次をご紹介しておきます。

これは立風書房から出ていたアンソロジーで、筆者は1974年に刊行された3巻本を持っていますが、ネットで古書店など検索すると、2巻本、1巻本などいろいろなバージョンがあるようです。筆者の持っているものが初刊バージョンと思われるのですが、よくわかりません。立風書房は同じ内容の本を何度も装丁を変えて出し直すことがよくあり、これもその一つだったわけです。

というわけで、刊行形態はやや胡散臭い部分もあるのですが、収録作は非常にハイレベルです。ミステリ・SF・純文学と、いろいろな分野へ目配せしながら、戦前戦後を問わず、文句無しの恐怖小説を集めています。後年になって再評価されたとばかり思っていた作家・作品がすでにこのアンソロジーに収録されていたりして、その選球眼こそ恐ろしい、というべき内容です。

『現代怪奇小説集 1』

・人でなしの恋 江戸川乱歩
・蒲団 橘外男
・柘榴病 瀬下耽
・火焔つつじ 平山蘆江
・ウールの単衣を着た男 杉村顕道
・逆立ち幽霊 伊波南哲
・怪談 倉光俊夫
・奇妙な隊商 日影丈吉
・鬼火 吉屋信子
・博士の目 山川方夫
・風見鶏 都筑道夫
・薔薇の夜を旅するとき 中井英夫
・写真の女 小松左京
・白蟻 小栗虫太郎

『現代怪奇小説集 2』

・蔵の中 横溝正史
・十四人目の乗客 大下宇陀児
・角姫 三橋一夫
・怪談宋公館 火野葦平
・猫町 萩原朔太郎
・セメント樽の中の手紙 葉山嘉樹
・地獄へ行く門 伊藤松雄
・死霊 長田幹彦
・骨餓身峠死人葛 野坂昭如
・生きていた死者 遠藤周作
・箪笥 半村良
・怪異馬霊教 香山滋

『現代怪奇小説集 3』

・難船小僧 夢野久作
・予言 久生十蘭
・ココア山の話 稲垣足穂
・手術 小酒井不木
・ママゴト 城昌幸
・怪談 畑耕一
・アリア人の孤独 松永延造
・蝋人 山田風太郎
・兵隊と幽霊 柴田練三郎
・おーい でてこーい 星新一
・長い暗い冬 曾野綾子
・真夜中の檻 平井呈一

バージョンを問わなければ古本屋でいくらでも買えるようですが、ネット通販の場合はよく確認しないと「全1巻」バージョンを注文したつもりが「全3巻のうち第1巻」が届いたりすることがあるかと思いますので、ご注意を。


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