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出張で東京へ行ったついでに要町にある「ミステリー文学資料館」を覗いてきました。
訪問したのは今回が初めてです。
東京へは頻繁に出張しているのですが、いつも分刻みに近いスケジュールで動いているため遊んでいるヒマなど全くありません。ところが今回、予定が一つキャンセルになり、池袋近辺で1時間半ほど時間が空くという僥倖に恵まれたため、ちょうど開催中の「綾辻行人の世界展」を覗いてみたいと思っていたこともあり、行ってみたわけです。

筆者は15年ほど前に池袋近辺で勤務していたことがあり、実はその頃、このミステリー文学資料館の前を毎日のように自転車で通り過ぎていました。ちょうど開館したばかりの時期です。
しかし、東京に暮らしていたときに強く実感したのですが、「いつでも行ける」と思っている場所って絶対に行かないんですよね。
上京前には、東京へ行く機会があると必ず覗いていた神保町の古書店街も、東京に暮らしていたあいだには数える程度の回数しか行きませんでした。
ミステリー文学資料館も、通勤で前を通りかかる時間帯は常に開館時間外ということもあり、休日にわざわざ池袋方面へ出かけるのも億劫だなあ、という感じで一度も訪れることなく過ごしてしまっていました。そして東京を離れてからは、池袋から1駅離れているという微妙な立地のためますます機会を失っていたわけです。

今回は綾辻行人展が動機となり、初めて300円払って中へ入ってみました。
……これはやはり、東京に住んでいた頃に休日にわざわざ出かけるべき場所でしたね。

肝心の「綾辻行人の世界展」自体は、資料館の一角を衝立で囲ってこじんまりと行われており、興味深い展示物といえば乱歩賞に応募したという「追悼の島」(「十角館の殺人」の原型作品)や、小野不由美による「霧越邸殺人事件」図面などの生原稿くらいですね。綾辻さんの若い頃の写真がたくさんが飾ってありましたが、なるほど半年くらい前にTwitterで盛んに昔の写真を投稿されていたのはこのためだったのか、と今更気づいたり。
この辺、おみやげ用に図録でもあれば買いたかったところですが、そういったものはありませんでした。資料館が定期刊行している「ミステリー文学資料館ニュース」にはインタビューが掲載されていますが、これも雑誌「ジャーロ」に掲載されたロングインタビューのダイジェスト版ということです(電子雑誌は買わないので、これはこれで楽しい内容でしたが)。

さて、それよりもやはり収蔵図書は目を瞠る内容でした。
横溝正史「呪ひの塔」、甲賀三郎「姿なき怪盗」、浜尾四郎「鉄鎖殺人事件」に、乱歩名義の「蠢く触手」を収録し、戦前の探偵小説叢書としては知名度の高い「新作探偵小説全集」がなかなかの美本で手に取れる状態で置いてあり、これはちょっと感動しました。古本屋でたまに端本を見かけますし、検索してみると今もヤフオクで「60万円」などという価格で揃いが出品されたりしているので、モノ自体はそれほど極端に珍しいわけでも無いようですが、手にとって閲覧できるのは日本中でここだけでしょう。実は学生の頃、「蠢く触手」を読んでみたくて(やはり東京旅行の際に時間を作って)国会図書館へ行ったことがあるのですが、収蔵されている本は途中のページが脱落しているものでした。その後、春陽文庫から復刊されたのでまともに読めるようになりはしましたが、国会図書館ですら読めなかったものが普通に並んでいるというのはなかなかすごいことですね。

雑誌も膨大に並んでいますが、1時間しか滞在時間がなかったということもあり、特にチェックすべき号のリストを作っていたわけでもないため、何も見ないで出てきましたが、次に機会があればしっかり準備をしていったほうがよいでしょう。

当然、閲覧できるだろうと思っていたのに見当たらなかったのは「推理作家協会会報」ですね。
以前に柏書房が探偵作家クラブ会報を復刻していたことがあり、当時中学生だった筆者は本屋で「へえー」と思いながら立ち読みしていましたが、さすがに価格が価格なので買いませんでした。(今も当時とあまり変わらない価格でAmazonなどに出品はされていますが、今は価格より置き場所の問題が……)
ミステリー文学資料館なら復刻されていない時期のものも含めて見られるかな、と思っていましたが見かけませんでした。探し方が悪い、あるいは閉架になっている可能性もありますが。
探偵作家クラブ会報、推理作家協会会報は、単行本未収録のエッセイや評論などもちょこちょこあるという噂で、これまたチェックすべき号を押さえてから閲覧しないとなかなか厳しいものがあるとは思いますが、一度手にとって読んでみたいものです。



というわけで、今回は約1時間の滞在で、棚を眺めただけで堪能できるレベルには程遠かったのですが、まあいずれまた何か機会があれば、しっかりと準備した上で覗きに行きたいものだと思いました。



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