
30年にわたった平成という時代は、筆者にとっては13歳から43歳という人生で最も本をたくさん読むであろう時期ときれいにかぶっていたわけですが、その時代が終わろうとしているとき最後に買った本は何か?
それは松原タニシ「恐い間取り」でした!
別に狙ったわけでなく、これを購入後数日間、特に何も本を買っていなかったら令和になっちゃったってだけなんですが。
もう一年近くも前、昨年の6月に出た本で、本屋の棚に並んでいるのはずっと気づいていたのですが、しかし「自分には関係ない本」と思い込んで、手に取ることすらせずに通り過ぎていました。
本ブログでは、刊行後、しばらく時間が経ってから買った本については、今更感の言い訳として、いったんdisりまくるのが恒例となっていますが、今回も買わなかった理由を先に。
筆者は怪談、それも実話怪談と言われるものは大好きなのですが、現実の殺人事件などを怪談ネタにしているのはどうも品がないような気がして好きになれません。
まあ、そういうものが好きな人がいるということは理解できるのですが、自分の趣味とは一線を画していました。したがって「事故物件怪談」という触れ込みだけで、興味の対象外となっていました。
また、著者が芸人という点。
これまた偏見に満ちた見解ですが、芸人が書いた怪談というのは、ラジオやテレビでふだん怪談にあまり馴染みが無い層から人気を得ているだけで、ネタとして怖くもないし、文章力もない、という思い込みがあり、「事故物件住みます芸人」という肩書で完全にアウト。
さらに言えば「怖い間取り」ではなく「恐い間取り」となっている時点で、怪談の素養はゼロ! 俺は読まなくていい本! と決めつけていたわけです。
しかし、たまたま見かけた紹介記事で、本書が「事故物件」というものにこだわっているわけでなく、単なる実話怪談として怖い内容だということを知り、それなら読まなければ!ということで買ってきたのでした。
結果的には……これは、めちゃくちゃ怖い!
著者の文章力もしっかりしており、またもや偏見で食わず嫌いしていたことを大後悔の内容でした。
大晦日になると訪れる謎の老人とか、写真までバッチリ載せちゃっているけど、なんなんだこれは。
なかには、あまり好きになれないタイプの「事故物件調査報告」的なエピソードもありますが、ほとんどの話は実話怪談として非常によくできています。
というか、怖すぎてサクサク読めないため、実は未だに最後まで読み切っていないのです。
というわけで、今更紹介するまでもないくらいよく売れているようですが、筆者同様、「幽」に載っているような上品な怪談は好きだけど、竹書房から出ているような怪談は勘弁だな、と考え、本書を同様のものだと思っている方、実はめちゃくちゃ怖い実話怪談集でした。
著者は7月にも同じく二見書房から新刊を出すようで、そちらも楽しみです。
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