201903映画秘宝311

先月の映画秘宝で「平成の傑作映画100」という特集を組んでいました。
筆者もこれに倣って平成映画のベストをあげてみようと思ったのですが、あれこれ考えているうちに一ヶ月が経ってしまい、結論としては「俺には無理!」

というのは、昭和天皇が亡くなり平成が始まったとき、筆者は中学1年でした。つまり、これまでの人生で見た映画のほとんどは平成になってから見た映画ということになり、筆者にとっての平成映画ベストとは、単にリアルタイムで見た全ての映画のベスト、ということになってしまうからです。
そんなわけで、今回はベスト、ということにこだわらず、思い出に残っている映画についてつらつらと。

親と一緒ではなく、友人と一緒に映画館へ行ったのは「バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2」が初めてでした。平成元年なので、中学2年の冬のことです。
小学生の頃に1作目は見て大興奮していたため、その続編を大画面で見られるというのは、とても楽しい体験でした。今でもときどき見直す、大好きなシリーズです。

一人だけで映画館へ行ったのはその翌年。「ミザリー」でした。
今にして思えば、一人で「ミザリー」を観にいく中学生ってちょっとどうなんだろうと思わないでもないのですが、「スタンド・バイ・ミー」の監督が再びキング原作映画を!ということで、当時はかなりの話題作だったのです。(ちなみに未だに「スタンド・バイ・ミー」は観たことないのですが)

高校に入ってから見て最も印象に残ったのは、ティム・バートンの「シザーハンズ」。
しかしこれは、たまたま、といった感じで見たものでした。
当時は「同時上映」というものがあり、そこそこの話題の新作でも2本立てで公開されるのが普通でした(少なくとも筆者の育った名古屋では)。
「シザーハンズ」は2本立ての添え物の方で、メインはあの超話題作「ホームアローン」でした。
まさかあの可愛い少年が、長じて「マコーレ・マコーレ・カルキン・カルキン」と改名するような奇人になるとも思わず、日本中が熱狂していたものでした。
学校でも大いに話題となり、ミーハーな筆者も映画館へ足を運んだわけですが、同時上映でどんな映画をやっているのかは全然知らず、開始に少し遅れて劇場へ入りました。
タイトルすら知らないその映画は、手がハサミになった奇怪な青年のおそろしく悲しい物語で、こんなに感動したことはないというくらい感動しましたね。引き続き鑑賞した「ホームアローン」のことはもう全くどうでもよくなってしまいました。
ところが、これほど感動したにもかかわらず、この映画のタイトルを筆者は大学に入るまで知りませんでした。映画雑誌を何の気なしに眺めていたときに、忘れもしないハサミ男のスチールを見つけ、ようやくそれが「シザーハンズ」というタイトルの映画だと知ったわけです。

高校1年のときは他に大林宣彦監督の新尾道三部作1作目「ふたり」も印象深い映画でした。
このときも大林宣彦監督のことはよく知らず、石田ひかりなんか名前すら聞いたことがないという状態で、赤川次郎原作だから、となんとなく映画館へ行ったのですが、石田ひかりのあまりの可愛さに打ちのめされました。しばらくの間はパンフレットを日がな一日眺めて暮らし、石田ひかりの出演するドラマはことごとくチェックし、「ふたり」がビデオになると何度も何度もレンタルして繰り返し見るという生活を続けることになりました。
映画を見終わってロビーへ出たところで、中学時代の先生に出くわし、先生の方こちらに気づいて「よお!」と声をかけてくださったのですが、こっちは石田ひかりの魅力でボーッとしていたため、ほとんどまともに挨拶もしなかった記憶があります。
「ふたり」については就職してからDVDが発売されましたが、これも予約して購入し、今でも年に1回は見ています。それくらい好きな映画です。

というわけで、中学高校の頃は話題作をたまに観にいく、という程度で映画マニアとは程遠い状態でした。この傾向は大学へ入ってからも続き、映画館へ足を運ぶのは年に数回程度でした。学生時代はタランティーノが大流行で、筆者も「パルプ・フィクション」「フロム・ダスク・ティル・ドーン」「フォー・ルームス」あたりをビデオで何度も見直していました。

本格的に映画に開眼したのは、社会人になってから。DVDというものがこの世に現れ「映画を所有できる」時代になってからです。
もともと収集欲は非常に強く、「モノより思い出」ならぬ、完全に「思い出よりモノ」というタイプ。映画も劇場で見る体験より、手元に存在するDVDのほうが重要と考えてしまう人間なので、2000年頃から熱狂的にDVDを買いあさりました。
最初のDVDプレイヤーはご多分に漏れずPS2でした。DVDが売り出され始めたばかりの頃はプレイヤーが非常に高く、PS2がいくらだったか忘れましたが「え、そんな値段でDVDプレイヤーが手に入るの!?」と大喜びして予約購入したものです。
毎日放送制作・古谷一行主演の「横溝正史シリーズ」がさっそくDVD化され、全巻予約して買いました。のちのち、廉価版がどんどん出るとも知らずに、1枚5000円くらいで。
新作映画ではこれまたご多分に漏れず「マトリックス」のDVDには感動しました。高画質な(とその時点では思った)本編はもちろん、メイキング映像などの特典もてんこ盛りで、すばらしい映画体験に心を踊らせたものです。
しかし、PS2にはコマ送りの機能がありませんでした。
なんてこったい。せっかく買った「エイリアン」や「ターミネーター2」のDVDをコマ送りで見られないじゃないか。
職場の人たちに「コマ送りがなくて不便」と不満を漏らすと、「映画をコマ送りで見る必要があるの??」と誰からも共感を得られなかったのですが、大学時代の友人たちに同じ話をすると「それは不便やな」と誰もが共感してくれ、ホッとしました。

この頃から「映画秘宝」も買い始めました。
「映画秘宝」ははじめ、A5版のムックで刊行されていたのですが、その頃は、年末のベストテンだけ買って、本誌は買っていませんでした。
大判になってから毎号買うようになったのですが、映画を本格的に見始めたばかりということもあり、正直なところ筆者の見ている映画はほぼ「映画秘宝」に指南にされてのものです。
DVDと「映画秘宝」とが歩調を合わせるように隆盛を迎え、2000年代は筆者にとっては幸せな時期でした。だから、筆者は自分のことを映画マニアとは全く思っておらず、人から「映画好きなんですか?」と聞かれると「映画秘宝とDVDが好きなだけ」と答えるようにしています。

この時期に好きだった映画を並べ始めるとキリがありませんが、1本だけあげるとスピルバーグの「宇宙戦争」ですね。
今どき火星人襲来って、バカ映画決定!というつもりで見に行ったにもかかわらず、とんでもなく恐ろしいモンスター映画に仕上がっていて、驚きました。
9.11の記憶も新しい頃で、パニック映画として、怪獣映画として、ホラー映画としてあらゆる切り口から堪能できる映画でした。スピルバーグ監督作は好きな映画が多いのですが(というか、ほとんど全部好きですが)、最高傑作はやはり「宇宙戦争」だろうと、公開から14年が経った今でも思っています。
要するに平成という時代の後半は「宇宙戦争ってすごい映画だったよな」という余韻に浸っているうちに過ぎていったということになります。


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