
3月は伊藤潤二ファンには大忙しの月でした。
まずは、短編集「伊藤潤二短編集 BEST OF BEST」の刊行。
タイトルを見て、単に傑作選を大判で出す、というだけの企画かと思っていたら大間違い!
雑誌掲載後、これまで短編集に未収録だった作品を集めたものでした。
しかし、それを聞いても、そんな落ち穂拾いみたいな内容(しかも、掲載誌は小学館限定)では大した内容ではなかろうと思っていたら、これまた大間違い!
びっくりするくらい傑作揃い!
未収録作品ばかり、と言いながら「大黒柱悲話」「阿彌殻断層の怪」など、過去に読んだことのある作品も入っていますが、どれもものすごいハイレベル。
正直なところ、小学館で発表された作品は、朝日ソノラマで描かれたものに比べると、あまり筆者の好みではなかったのですが、今回の短編集は初期の傑作群に通じる雰囲気の作品がたくさんあり、大いに楽しめました。
さて、これだけでも大満足だったところへもう一発。
伊藤潤二、初の画集です。
画集、といっても絵画集というわけではありません。
これまでにカラーで描いた扉絵、表紙絵を中心に、さまざまなイラストを集めたものです。
A4版という迫力のある大きな判型で、伊藤潤二の緻密な描線を心ゆくまで堪能できる、ファンにはたまらない内容です。
筆者としては、一番嬉しかったのは短編「寒気」の1ページが再掲されていたことです。
というのは、この短編、ストーリーも好きなのですが、何よりも精密な作画に圧倒されるんですよね。体中にボコボコと穴が空くという、かなりぶっ飛んだ発想の物語にもかかわらず、絶妙なバランスで空いた穴は説得力抜群。しかも、どのコマを見ても、穴の位置がきっかり同じ!
偏執的な情熱で描かれていると言わざるを得ません。
巻末のインタビューも絵描きとしてのこだわりが伺われ、充実した興味深い内容です。
というわけで、伊藤潤二初の大型本が2冊もほぼ同時刊行。
平成最後のビッグプレゼントでした。
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