
中島みゆきのアルバム「御色なおし」(1985年)は、セルフカバー曲が集められた一枚です。
ここの収録されている「煙草」は、もともとは1982年に古手川祐子へ提供された曲でした。
この曲がなんとも不思議な歌詞です。
というのは、全編が「視覚」のみで構成されているのです。
歌詞をまるごと紹介するわけにはいかないため、「中島みゆき研究所」の該当ページへリンクをはっておきます。
http://miyuki-lab.jp/disco/lyric/ba130.shtml
「煙草をください」から始まりますが、その理由が「あの人に見せたいから」。
そのあとも「みつめてください」「移り気に見えるように」
サビでは「煙草の煙が 途切れたすきに」、二人が踊る姿が見えてしまう、という展開になり「だれか 私の目を閉じて 何も見ないことにして」と締めくくられます。
続く2番のサビでも
「煙がつくり出したスクリーンには 幸せ見える」
「あなたとあの娘 いつまで見える」
と、徹底的に視覚にこだわります。
タバコと言えば、普通は味覚と嗅覚です。それがなぜこの曲では視覚なのか?
「煙草」というタイトルはずいぶんと大人っぽい印象を受けますが、この曲の提供を受けたとき、古手川祐子は22歳。まだまだ若い年齢です。
「煙草」というものを視覚でしか捉えられない。味や香りに親しんでいるわけではなく、単なるファッションとして描いているという点に、ういういしさを感じさせようという、そんな意図の詩なのかな、と思います。
他の楽曲に登場するタバコは
「煙草の煙を流すため お酒の香りを流すため」(髪を洗う女)
「メッキだらけの けばい茶店の隅っこは 雨やどりの女のための席ね
今ごろどうしておいでだろうか 今夜は煙草が目にしみる」(涙)
「嘆かないわ愚痴らないわ もう1本タバコ頂戴」(ノスタルジア)と、だいたいが酒場や喫茶店などのイメージと結びついています。
中島みゆき本人は煙草にはあまり良い印象は持っていないかな、と思いますね。
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