
中島みゆきの曲を聴いていると、「ガラス」という単語が妙に引っかかることがよくあります。
一般的に「ガラス」という言葉からはどのようなことがイメージされるでしょう。
・美しい。
・透明。
・冷たい。
・硬い。
・繊細。
・割れる音。
・破片……
さまざまなイメージがあります。
他のアーティストの楽曲に出てくるガラスと言えば、
「ガラスの十代」光GENJI、「硝子の少年」KinKi Kids
いずれも「繊細」なイメージですね。
「季節だけが君を変える」BOOWY
冒頭:ガラスの中の退屈な街やはりいずれも「繊細」なイメージがあります。
サビ:ガラス細工のフィーリング
さて、中島みゆきの歌詞で目立つのは「破片」のイメージです。
「裸足で走れ」(1979年)
・ 裸足で 裸足で ガラスの荒れ地を 裸足で 突っ走れ「泥海の中から」(1979年)
・ここまでおいでと 手を振り手招き 背中へガラスを降り注ぐ
おまえが壊した 人の心のガラス戸は おまえの明日を 照らすかけらに変わるだろう「儀式(セレモニー)」(1986年)
ひきずられてゆく 波の中で光る ガラスたちの折れる 寒い音がする「匂いガラス」(1986年)
・誰かがなくし 誰かが拾った 甘くて 酸っぱい リンゴのような 匂いガラスの「あした」(1989年)
・胸に刺さった ガラスのかけら 匂うほどに 疼くのは
・ガラスがみちびく 怪しの日記
ガラスなら あなたの手の中で壊れたい「匂いガラス」は、同題ドラマの主題歌として作られたため、ドラマの内容に合わせて歌われており、さまざまな「ガラス」が登場します。しかし、その中でも2つ目の「胸に刺さった ガラスのかけら 匂うほどに 疼くのは」は中島みゆきオリジナルの表現であり、ここではやはり「破片」のイメージです。
壊れやすさの象徴、ロマンティックな小道具として「ガラスでできたもの」が登場することもあります。
「バス通り」(1981年)
ため息みたいな 時計の歌を 聞きながら 私はガラスの指輪をしずかに落とす
「誘惑」(1982年)
ガラスの靴を女は 隠して持っています
そのほかに見られるのは、「透明な檻」のイメージです。
「with」(1990年)
ドアのあかないガラスの城でみんな戦争の仕度を続けてる「やばい恋」(1992年)
光りながら昇ってゆく ガラスのエレベーターの外で 街灯り遠ざかるあの人に似てるわ「ガラスのエレベーター」というのは比喩でも何でもなく、単なる情景描写とも取れますが、閉じ込められているイメージもあります。(筆者は「チョコレート工場の秘密」の続編「ガラスのエレベーター宇宙にとびだす」を連想してしまうのですが……)
また、窓ガラスもよく登場します。
研ナオコに提供したタイトルがずばり「窓ガラス」(1978年)という歌もありますが、それを含めて次のような曲があります。いずれも「冷たい」「硬い」という印象を持ちます。
「朝焼け」(1977年)
曇りガラス 外は寒い「ホームにて」(1977年)
ふるさとは 走り続けた ホームの果て 叩き続けた 窓ガラスの果て「窓ガラス」(1978年)
それよりも 雨雲が気にかかるふりで あたしは窓のガラスで 涙とめる「タクシードライバー」(1979年)
車のガラスに額を押しつけて胸まで酔ってるふりをしてみても
さて、ここまで印象が強いものから順に書き出していきましたが、お気づきでしょうか。
中島みゆきのキャリアの中でさまざまに登場する「ガラス」ですが、実は年代ごとにイメージは固まっているのです。
【“窓ガラス”期】
「朝焼け」(1977年)
「ホームにて」(1977年)
「窓ガラス」(1978年)
「タクシードライバー」(1979年)
【“破片”期】(壊れやすい小道具含む)
「裸足で走れ」(1979年)
「泥海の中から」(1979年)
「バス通り」(1981年)※小道具
「誘惑」(1982年)※小道具
「儀式(セレモニー)」(1986年)「匂いガラス」(1986年)
「あした」(1989年)
【“透明な檻”期】
「with」(1990年)
「やばい恋」(1992年)
さて、甚だ恣意的なまとめ方であるうえ、「それがどうした」と言わざるを得ないことではあるのですが、先日の記事「『中島みゆき全歌集1975-1986』(朝日文庫)収録作一覧」「『中島みゆき全歌集1987-2003』(朝日文庫)収録作一覧」を書きながら、ふと気づいたため、記事にしてみました。
なお、本記事を書くにあたっては「中島みゆき研究所」のサイト内検索を使わせていただきました。
さて、甚だ恣意的なまとめ方であるうえ、「それがどうした」と言わざるを得ないことではあるのですが、先日の記事「『中島みゆき全歌集1975-1986』(朝日文庫)収録作一覧」「『中島みゆき全歌集1987-2003』(朝日文庫)収録作一覧」を書きながら、ふと気づいたため、記事にしてみました。
なお、本記事を書くにあたっては「中島みゆき研究所」のサイト内検索を使わせていただきました。
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