以前の記事(平成元年頃の名古屋古本屋事情(鶴舞~上前津編))にも書いたとおり、中学生の頃は古本屋に映画パンフレットのコーナーがあるとひたすら横溝映画のパンフを探し続けていました。
平成元年(1989年)頃のことなので、「犬神家の一族」が公開されてから、13年しか経っていません。
今になって振り返ればたいして年月が過ぎているわけではないうえ、一世を風靡した大ヒットシリーズだったわけなので、あっという間にコンプリートできてしまったわけです。(ちなみに2018年現在から見て13年前というと2005年ですが、「バットマン・ビギンズ」とか「スター・ウォーズ エピソード3」とかが公開された頃です。そんなに昔じゃないでしょ?)
とはいえ、当時は14歳。自分が生まれたばかりの頃のパンフレットを探していたわけなので、ものすごいお宝を発掘している気分でした。
収獲は全て一期一会。いま買わなかったらもう二度と出会えない……と思い込んで探していたため、あまり状態が良くないものでも平気で買ってました。この辺はもう少し状態を見極めて、きれいなものだけ買うようにしていても良かったなあ、と思いますね。当時はまだそれくらい選ぶ余裕があったと思いますが、映画公開から40年経ってしまった今は、揃える何度がもう少し上がってしまっていると思うので。

ところで、ウキウキしながら集めたパンフレットですが、実は内容的にはあまり珍重すべきところはないです。
横溝正史、角川春樹、石坂浩二への提灯持ち的なレビューと、出演者の他愛もない撮影こぼれ話。基本的にはそんな内容です。
というわけで、それほど突っ込んで紹介するものはないのですが、書影と簡単なコメントだけ載せておきます。

201810犬神家の一族271
「犬神家の一族」(1976年)
これはかなり状態の悪い一品。とはいえ、松本城へ家族で旅行へ出かけたとき、有名な古本屋さん「青翰堂書店」で買った思い出の品です。
見つけたときは興奮して帰ってきましたが、その後、いくらでも簡単に買えるものだとわかり、この状態のはスルーすれば良かったなあ、とちょっとガッカリ。しかし、買い直すこともありませんでした。
横溝正史のコメントに「二度目の映画化」とあります。情報としては全く正しいのですが、その後の歴史を知る立場から見るとなんとも謙虚な認識と感じます。

201810悪魔の手毬唄270
「悪魔の手毬唄」(1977年)
数ある金田一耕助映画の中で、筆者としては最も愛している一本なので、他愛ない内容ですが、大事にしているパンフレットです。「真説・金田一耕助」のなかで横溝正史が映画公開前の宣伝でネタバレしていることに苦言を呈していますが、このパンフレットでも岸恵子のコメントは、真相に対する配慮は一切なし。市川崑監督のミステリ映画に対する熱の入れ方とはなんとも対照的です。

201810獄門島272
「獄門島」(1977年)
これまた、他愛ない内容です。

201810女王蜂273
「女王蜂」(1978年)
横溝ファンにとっての読みどころはあまりないのですが、中井貴惠のデビュー作ということで、インタビューが載っています。これが、恐ろしくやる気のないコメントばかりで、よくそのまま載せたものだと感心する内容です。「映画に出たいとは一度も考えたこともなかったが、東宝に強引に引っぱり出された」という恨みごとを連ね、最後には「好きな女優」を聞かれて半ギレで「全然興味がないのです」と訴える始末。
また、以前の記事でも紹介したCD「横溝正史ミュージック・ミステリーの世界 金田一耕助の冒険」の収録されている「愛の女王蜂」がいったい何なのかはこのパンフレットを見ておくと理解できます。
そんな感じで、金田一映画好きにはチェックする甲斐がある内容になっています。

201810病院坂の首縊りの家274
「病院坂の首縊りの家」(1979年)
これも他愛ない内容。
市川崑監督作のなかでは、原作からの改変が最も著しい作品ですが(なんせ原作が長すぎるうえに複雑なので仕方ないのですが)、パンフレットには登場人物の系図が載っており、原作との相違がわかりやすくなっています。

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