201807影の車241

役者の加藤剛が亡くなったというニュースを聞いて、筆者が真っ先に頭に浮かんだのがこの映画です。
松本清張原作・野村芳太郎監督という筆者が大好きなコンビの一作ですが、「砂の器」「鬼畜」「疑惑」など70~80年代に量産されたシリーズの中で最も早くに制作されています。
「砂の器」「鬼畜」前後の野村芳太郎はシリアスなミステリ映画を次々撮っていましたが、この「影の車」が撮影された時期は、松竹の職人としてハナ肇やコント55号を主演に据えたコメディ映画をメインに撮っており、本作はシリアス路線の先駆けになったものと言えます。

この映画はまず、高度経済成長期真っ只中の、まさに開発が進む最中のニュータウンを舞台にしている点が、今の目で見ると興味深い点です。
造成が進む風景の空撮や、団地の室内など、昭和後期の空気を濃厚に感じ取れます。

加藤剛演じる主人公は当時としては最新の団地で生活していますが、一方の岩下志麻は団地から外れた林の中の一軒家に暮らします。僅かな距離で景色が一変するギャップも、ニュータウンならではのものです。
そこで繰り広げられる二人の情事。これがとんでもなくエロい!
筆者の世代は、岩下志麻というと「極道の妻たち」でどすの利いた声を張り上げている印象が強く、怖いオバサンだと思っていたのですが、本作を見て印象が180度変わりました。
こんなにも可憐で妖艶な人だったとは!
家庭を持った男でも、こんな女性に出会ってしまったらフラフラと地獄へ引きずり込まれるのも仕方ないでしょう。

正直なところ、物語としては「砂の器」や「鬼畜」には及ばないと思いますが、上記2点
・高度成長期へのノスタルジー
・岩下志麻がエロい
ということだけで、何度も繰り返し見てしまう映画です。

影の車
岩下志麻
2017-07-28



(原作となった短編「潜在光景」を収録)

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