お盆が近づいてきたところで、怪談の話題を。
ホラー漫画は世の中に多いのですが、「怪談」好きが読んでゾッとできると本というとなかなかありません。
筆者のおすすめをいくつかご紹介します。
まず、怪談漫画界の第一人者と言えば山岸凉子をおいて他にありません。
そもそもがいわゆる「視える」体質だということで、実話怪談ブームに先駆けて「ゆうれい談」というコミックエッセイも書いています。
これはこれで非常に興味深いエピソードがたくさん出てくるのですが、本領発揮は短編のホラー漫画です。
特に恐ろしいのは「汐の声」と「わたしの人形は良い人形」の二編でしょう。
「汐の声」は、心霊番組収録のため、とある屋敷を訪れた撮影隊と少女を襲う怪異を描いたもの。
また「わたしの人形は良い人形」は怨念が籠もってしまった日本人形を巡る事件。
いずれも発表時期は1980年代で、実話怪談やJホラーはブームの兆しすら見えていなかった時期です。
にも関わらず、時代を完全に先取りしている、というよりも山岸凉子の漫画を読んで衝撃を受けたクリエイターたちがその後の実話怪談ブームを牽引したという方が正しいのですが、ともかく、2000年代に入ってから流行した怪談・ホラーが好きな方は、山岸凉子も確実に抑えておく必要があります。
上記「汐の声」「わたしの人形は良い人形」はかつて文春文庫で同じ本にまとまって収録されていました。
しかし、これは今は絶版です。
現在、山岸凉子の過去作品を読むには潮出版社の作品集が手軽ですが、上記2編はそれぞれが表題の別々の本に収録されています。
次に紹介するのは杉浦日向子の「百物語」です。
これは山岸凉子とは違って「恐ろしい」ではなく「ふしぎな」話を集めています。
小説新潮に8年がかりで連載したという大作ですが、江戸時代を舞台に一話完結の不思議なエピソードを99編。どことなく呑気で飄々とした雰囲気です。
筆者が一番好きなエピソードは、其の六十三、とある山寺の廊下に赤子の手が降るという話。住職の「いつもではない、たまですわ」というコメントが最高。
怪異を否定せず、そのままに受け入れて生活する人々を描かれています。
元ネタがあるという話を聞いたこともあるのですが、何が元になっているのかはよく知りません。逆に、元ネタ無しでこれだけの話を書けていたら人間技とは思えません。
今や古典的と言ってもよい名作ばかり紹介したところで、ラストは最近の作品を。
雑誌「幽」の連載で知った伊藤三巳華ですが、「視えるんです」は衝撃的でしたね。
「視える」という現象は、筆者は怪談などで楽しんでいるだけで、自身には全く縁がなく、周囲にもそんな人は一人もいないので(多分)、どういうことなのかよくわからない部分が多かったのですが、ビジュアルで説明してもらうと「へえー、へえー」と驚くことばかりです。
加門七海の本を読んでいると似たようなエピソードがわんさか出てくるのですが、どうも映像的に理解できなかった筆者にとって、これはなかなか貴重な内容の本でした。
で、この伊藤三巳華、最近はかわいい絵柄でエッセイコミックを量産していますが、本職のホラー漫画はというと、かなりリアルで恐ろしい絵を描きます。
どれもよくできているのですが、ここでは「怪眼」を紹介しておきます。
怪談業界のホープだけに、ストーリーもビジュアルもツボを押さえた怖い話で、堪能できます。
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