DSC02674

さて、前回の記事では京都観光の移動手段は自転車がおすすめ、という内容で書いたのですが、実際は今回、京都へ行ったのは観光のためではありません。
ゴールデンウィーク中のある一日、家族が旅行へ出かけていて一人になる日があったため、久しぶりに岡崎公園の古本市へ行こうと思ったわけなのです。
岡崎公園の京都市勧業館「みやこめっせ」では、毎年ゴールデンウィークに古本市が開かれており、屋内で開催ということもあって、いつも良い本が大量に持ち込まれています。京都の古本市というと、規模が大きい夏の下鴨神社が有名ですが、個人的にはみやこめっせの古本市が一番好きです。
京都で暮らしていた頃は毎年欠かさず覗いていましたが、約20年前に京都を離れてからは数年おきに、機会があるとちょこちょこと覗いています。今回は4年ぶりくらいです。

DSC02672

久しぶりに京都へ行くついでに、昼飯に府立大学前のラーメン屋「いいちょ」へ行くことにしました。

DSC02649

「ついで」とか書きましたが、実は京都へ行った目的の半分はこのお店です。
筆者が昔、この近くに暮らしていたころにオープンしたのですが、個人的には京都で一番おいしいラーメン屋はここだと思っています。
京都で一番おいしいということは、日本で一番おいしいということです(ラーメンの本場は京都、と思い込んでこれまでの人生を送ってきました)。
開店したばかりの頃は、「ついに見つけた幻の味!」というような幟を店の周りに大量に立てていました。
当時いっぱしのラーメン通を気取っていた筆者は「まあ、こんなことを言っている店は大したことないんだよな」などと、新参者に対して完全に上から目線で、どれどれ味を見てみるか、という感じで入ってみたのですが、一杯食べて打ちのめされました。いやホント、京都にいた頃はラーメンばかり食べていたのですが、ここは空前絶後のおいしさでした。
それからは、「近所にこんなにおいしい店があるなんて本当にラッキー」と、週に1~2回というかなりのペースで通いつめました。
はじめのうちは、店主の気まぐれなのか、日によってキャンペーンをしていたのか、ときどきチャーシューが薄切りではなく乱切りでゴロゴロ入っていることがありました。
これがまた、べらぼうなおいしさ。
乱切りで入っているのは毎回ではなく、ごくたまに、という感じだったため、ここへ通いつめていたのは「またアレをやってくれないかな」という期待も込めてのものでした。
しかし、あっという間に人気店になってしまうと、乱切りはなくなりましたね。さすがに採算がとれなくなったんでしょうか。
筆者が京都を離れてからは、ぐんぐんと京都を代表する人気店になり、しかし店構えは全く変わらないので、常に行列ができる店になってしまいました。
これまで気軽に通っていた店が、並ばないと入れないというのは悔しいので、その後、京都へ行くときには必ず開店時間より早めに店へ到着し、並ばずに食べられるように頑張っています。
今回も、10分くらい早めに着くと、すでに何人か開店を待っていましたが、なんとか先頭グループの一人として入店することができました。

ということで、自転車を借りたのは、岡崎公園と府立大学という、ちょっと離れた地点をスムーズに移動する方法として「そうだ、自転車を借りてみよう」と思いつき、調べてみると出町柳駅にお店があったため、これはちょうどうってつけの起点ではないか、ということになったわけです。(市バス206系統を使えば乗り換え無しで行ける位置ではありますが)

せっかく自転車を借りたので、観光地以外もいろいろ周りました。

DSC02646

出町柳から府立大学へ向かう途中、一乗寺の本屋「恵文社」に立ち寄りました。
ここは非常に有名な本屋ですが、京都で暮らし始めて最初の数年間は、店の前を通りながらも「このおしゃれな店はなんだろう」と、まさか本屋とは思わずにずっと素通りしていました。
相変わらず、抜群のセンスの品揃えで素敵なお店です。
蔵書家の書庫を覗きに行って、しかも「置いてあるものは何でも売りまっせ」と言われているような、ウキウキした気分になれる本屋です。
ほとんどの本は棚差しの一点しか在庫がないのですが、ふだんはとことん美本にこだわる筆者も、ここの店で買うときだけはなぜか、カバーの傷みや帯のちょっとした破れ、立ち読みの跡などが全く気になりません。自分でも不思議なのですが、少々の傷みも「恵文社の味」と思ってしまうんですよね。まさにアバタもエクボ。

DSC02647

恵文社からさらに少し東へ自転車を走らせ、古本屋「萩書房」。
ここはミステリが充実しているため、京都在住時はかなりお世話になりました。
しかし、古本市開催中のためお店は休業。たぶんそうだろうな、と思ってましたが、やっぱり。

古本市を覗いたあと、南禅寺へ向かったのも、観光目的ではありません。
南禅寺の裏手、哲学の道の起点にかつてあった喫茶店「若王子」がどうなっているか見ておきたかったのです。
若王子というのは、以前にこちらの記事で書いたことがありますが、島田荘司「占星術殺人事件」で、御手洗潔が事件解決のヒントを得た店です。

DSC02683

前回の記事に載せた哲学の道のこの写真、たぶん御手洗潔が寝ていたベンチはこの辺かな、と思われるものを撮った写真だったわけです。
このちょっとした休憩スペースのすぐ近くに喫茶「若王子」はありました。

DSC02684

今も建物は残っているのですが、営業はしておらず、敷地内は荒れ放題になっています。

DSC02685

店内はいろいろ珍しい置物がたくさんあり、いかに島田荘司が好きそうなお店だな、という雰囲気でした。京都在住時には何度か立ち寄っていたのですが、閉まってしまったのは残念です。

銀閣寺から出町柳へ戻る途中、「古書善行堂」を見かけて立ち寄りました。
ここの店主は、古本関係のエッセイをたくさん出されている方です。

DSC02688

というわけで、朝9時半頃から、昼過ぎの3時くらいまで、観光地を横目に眺めつつ、ほとんどは古本漁りのために自転車を走らせ続けた小旅行でした。

DSC02689

ついでに。
昔、大好きだったレストラン(定食屋?)の前を通ったら、閉店していてびっくり。昼飯をここで食べるつもりにしてなくてよかったよ。
その他も、在住時行きつけだった定食屋はほぼ全滅していました。
それも、ほとんどは建物ごと跡形もなくなっているので、正確な場所すらよくわからない状態。
20年も経っていたら仕方ないよな……

関連記事:
京都市内観光はレンタサイクルがおすすめ
島田荘司『占星術殺人事件』京都観光マップ



関連コンテンツ