ここ最近、順調に新刊が出続けている杉作J太郎・植地毅の「浪漫アルバム」シリーズですが、来ました! 今回は「東映実録バイオレンス」です。
新刊紹介の前に、この「浪漫アルバム」とは何か?
徳間書店の「ロマンアルバム」といえば、アニメガイドブックの老舗シリーズとして知られていますが、同じ徳間書店でもこっちは「浪漫アルバム」。杉作J太郎先生がひたすら東映への愛を語り続ける男のための映画ガイドブックシリーズです。
第一弾は「仁義なき戦い浪漫アルバム」。刊行から20年たった今も版を重ね、これを超える「仁義なき戦い」関連本は現れることがない、空前絶後の内容です。
これが出た当時は、単発の企画と思われましたが、翌年すぐさま第2弾が出ました。
これは「女囚さそり」や「女番長」など、東映のプログラムを埋めるため量産された東映ポルノを総括するもの。
このあと続刊が途絶えたため、この2冊で終わったと思っていたところ、15年のブランクの後に刊行されたのがこちら。
言わずと知れたトラック野郎。これまた、最強の「トラック野郎」本となっています。
そして、お次はこちら。
「スピードアクション」というまとめ方で、「狂った野獣」「新幹線大爆破」「暴走パニック大激突」など70年代の人気作をまとめて扱っています。宇宙暴走族が出てくるから、ということで「宇宙からのメッセージ」もここで登場。
そして、昨年出た最新刊がこれです。
というわけで、今回の「東映実録バイオレンス浪漫アルバム」はシリーズ6冊目ということになります。
東映実録バイオレンスとは何か?
東映は1960年代から不振の時代劇に代わって任侠路線をスタートしますが、これが大ヒット。鶴田浩二、高倉健の2枚看板で任侠映画を量産します。
その一方、東京撮影所では深作欣二監督らがギャング映画を撮っていましたが、任侠映画の人気に陰りが見えた73年、「仁義なき戦い」の大ヒットによってそれまでの任侠路線に終止符が打たれ、任侠とギャングが合流した「実録路線」がスタートするのです。
「実録」を謳っている以上、モデルとなる事件・人物が存在する映画がほとんどですが、中には「実録風味」で全くオリジナルのものも多々あります。「脱獄広島死刑囚」に始まる松方弘樹主演シリーズなんかがそうです。
本書はファン目線(それもとびっきり濃いファン)で「仁義なき戦い」に続くヤクザ映画の世界が語られています。
個人的には、「日本の首領」シリーズについてたっぷりとページを取っているのが嬉しかったです。このシリーズ、大味なオールスター映画といえなくもないのですが、なぜか定期的に見直してしまうんですよね。本当に金をかけて作ってるなあ、とゴージャスな気分になれます。なんせ、出演しているのが佐分利信、三船敏郎、片岡千恵蔵ですからね。この3人が並ぶ映画はこれだけです。
というわけで、実録路線のガイドブックとしては、これまた決定版となることでしょう。
他に「実録」関連本をご紹介。
映画のモデルになって事件が詳細に紹介されており、ファンにはとても参考になります。
映画と現実とがリンクしてしまった、「北陸代理戦争」事件の全貌を描いたノンフィクション。
実録路線の指揮を執ったプロデューサーの回顧録。
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