早くも再来年の大河ドラマのタイトルが発表されました。
「麒麟がくる」
NHKのホームページによれば、主人公・明智光秀を長谷川博己が演じるそうです。
明智光秀といえば、戦国を舞台にした大河ドラマには必ずといってよいほど出てきますが、たいていは信長にさんざん虐げられる、かわいそうな役どころです。信長家臣団の中でもとりわけ有能な武将であったはずなのに、あまり良い扱いはされていません。
それを敢えて主役に据えるというので、どうなることか。
ここ数年、大河ドラマには原作はなく(正確には今年の「西郷どん」は林真理子原作ですが、ドラマ用に書き下ろしたものなので、これを原作と言うべきかどうか……)、「麒麟がくる」も脚本を担当する池端俊策のオリジナルです。(「太平記」以来の池端俊策登場ということで、ファンはかなり盛り上がっているようです)
さて、それでは予習のために読むべき本を2つご紹介しましょう。
まず、明智光秀が主役級に扱われている小説といえば、司馬遼太郎の「国盗り物語」が最も有名でしょう。
文庫版で全4冊という長い小説ですが、前半2冊は「斎藤道三編・前編/後編」、後半2冊が「織田信長編・前編/後編」という内容になっています。
斎藤道三は油商人から身を起こして美濃一国を支配したと言われていますが、この道三の天下取りの夢を婿の信長が受け継いだ、という流れで書かれています。
斎藤道三を中心にした前半がピカレスクロマンとして最高に面白いのですが、後半は明智光秀の視点から織田信長を描いています。
光秀は名家の流れを汲む家に生まれながら、道三に仕え、浪人したのち信長に拾われます。
信長・光秀という「道三の意志を継ぐ二人の相克」という歴史観で、本能寺の変へ至る過程が綴られていきます。
再来年の大河「麒麟がくる」はNHKホームページで「若き明智光秀、織田信長、斎藤道三、今川義元、そして秀吉が、家康が、所狭しと駆け巡る… 」などと紹介されていますので、「国盗り物語」の存在を念頭に置いた上で話が進むと考えてよいでしょう。
ただし、「親子二代で美濃をのっとったという説に基づく斎藤道三」ともあるので、ここ最近現れた新説に依る部分もあると思われ、「国盗り物語」との相違点も興味深いところです。
いずれにせよ、予習には最適の小説です。
さて、一方でホームページには「最新の研究と新解釈を反映した人物像」とも書かれています。
このドラマオリジナルの明智光秀像が登場することも期待されますが、ここ最近の小説で注目されたものとしては真保裕一の「覇王の番人」があります。
綿密な取材を元にしたミステリで人気のある真保裕一が2008年に刊行した小説ですが、新史料を元に描いたということで、歴史小説好きからはかなり高く評価されています。
さすがに「国盗り物語」ほどの知名度はありませんが、明智光秀を主人公にした小説としては定番のものとなっています。
こちらの小説もドラマを観るうえでは大いに参考になるでしょう。
ということで、明智光秀を主人公にした小説を二つご紹介しましたが、もう一つ、別の本をご紹介します。
タイトルにある「麒麟」は中国の霊獣でWikipediaでは以下のような説明があります。
「また、『礼記』によれば、王が仁のある政治を行うときに現れる神聖な生き物「瑞獣」とされ、鳳凰、霊亀、応竜と共に「四霊」と総称されている。このことから、幼少から秀でた才を示す子どものことを、麒麟児や、天上の石麒麟などと称する。」
この「麒麟」をテーマにしたシリーズが、小野不由美の「十二国記」です。
特に2作目「風の海 迷宮の岸」に登場する麒麟が最強にかわいい……
もちろん、小野不由美オリジナルの解釈に基づくファンタジーですが「麒麟とは?」と知るには、非常に良いシリーズです。
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