
昨年11月発行なので、もう半年も経っていますが、こんなマニアックな本が出ていたとは全く見落としていました。
「精興社」といってもピンと来る方はあまり多くないと思いますが、これは東京都青梅市にある印刷会社です。
本を読むときにどこで印刷された本なのか、ということは普通はあまりに気にしないと思います。
場合によっては重版のタイミングで印刷所が変わることがあったり、大ベストセラーともなると一つの印刷会社では対応しかねて、あちこちで印刷された本が混じって流通することもあります。
しかし、読者が気にするのはせいぜい「どこの出版社か」というところまでで、印刷所が異なる本が流通していたところで、ほぼ誰も気づきません。
ところがそんな中にひとつだけ、ファンのついている印刷会社があるのです。それが精興社です。
筆者は、前々から、一部の文庫がとても読みやすく、品の良い活字で印刷されていることに気づいていました。
しかし、それらは岩波文庫、ちくま文庫などのうちの一部に限られていました。本屋でパラパラと眺めた時に、それがお気に入りの活字で印刷されていると、それほど興味のなかったものでも「やっぱり買っておくか」と思ってしまうくらい、魅力的な文字なのです。
ある日、奥付を眺めていて「印刷・精興社」という部分に目が止まりました。
「ということは、もしや」と思い、お気に入りの活字が使われた本をチェックしてみると、なんとことごとく精興社が印刷した本だったのです。
そうか、出版社ではなく、印刷所だったか、と深く納得しました。
調べてみると、精興社は本好きのあいだでは非常に有名な印刷会社で、筆者が知らなかったのが恥ずかしかったくらいです。精興社書体と呼ばれる独自の明朝体に特徴があります。
しかし、さすがに精興社のことだけを書いた本というものはこれまで見たことがありませんでした。(正確に言えば、精興社の社史は発行されているようですが、一般には流通していないようです)
精興社がどんな活字で印刷しているのかは、本書を読んでいただければさまざまなサンプルが掲載されており、やはりいい活字だなあ、と思います。
本屋で手に取るなら、有名な本では以下のようなものがあります。
文庫では、岩波現代文庫はすべて精興社が印刷しているようです。
その他、手元の本で気づいたもの。
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