昭和53年~54年にかけて、講談社から全25巻の「江戸川乱歩全集」が刊行されました。
本書「江戸川乱歩――評論と研究」は、この全集が完結した翌年に出たもので、装丁の雰囲気もあわせて、別巻的な位置づけのものだったようです。
内容は、これまでに発表された乱歩論をまとめたもので、前回の記事でご紹介した『幻影城 1975年7月増刊 江戸川乱歩の世界』に収録された文章とかなり重複しています。
目次は以下の通りです。
「二銭銅貨」を読む 小酒井不木
日本の近代的探偵小説 平林初之輔
「心理試験」序 小酒井不木
江戸川乱歩を繞りて 石上是介
江戸川乱歩論 橋爪健
「陰獣」その他 平林初之輔
江戸川乱歩氏に対する私の感想 夢野久作
江戸川乱歩論 龍登雲
「陰獣」吟味 井上良夫
江戸川乱歩論 木々高太郎
江戸川乱歩論 中島親
乱歩文学の鳥瞰 中島河太郎
江戸川乱歩論 荒正人
江戸川乱歩論 松本清張
江戸川乱歩論 中島河太郎
「二重面相」江戸川乱歩 横溝正史
江戸川乱歩と耽美主義文学 日影丈吉
巨人の輪郭 小松左京
乱歩文学の一側面 野坂昭如
幼児性の噴出と童話性 なだいなだ
乱歩文学の全体像 尾崎秀樹
江戸川乱歩について 荒正人
乱歩文学の本質 澁澤龍彦
閉じ込められた夢 権田萬治
人でなしの世界 紀田順一郎
華麗なユートピア 大内茂男
怪奇ロマンの遍歴と脱却 中島河太郎
孤独すぎる怪人 中井英夫
江戸川乱歩研究文献目録 中島河太郎
冒頭の小酒井不木「『二銭銅貨』を読む」は、乱歩のデビュー作「二銭銅貨」が雑誌「新青年」に掲載された際、添えられた有名な文章で、『幻影城増刊 江戸川乱歩の世界』に収録されなかったのが不思議です。
他の文章も概ね、あちこちで再録されている有名なものが多く、本書でしか読めないレアなものはほとんどありませんが、逆にスタンダードでツボを押さえた選択と言えます。
筆者は、20年以上前、学生時代に古本屋で見つけました(1996年頃)。
考えてみれば本書の刊行から15年くらいしか経っていなかったわけですが、当時はインターネットもなく探求書に巡り合うのは足と運が全てで、かなり長いあいだ探してようやく見つけたのでした。
ところが、その時ついていた値が8000円。所持金が足りていたため、今を逃したらあとはない、と買ってしまいましたが、これはかなり高めの設定でしたね。なかなかの美本ではあるので、買ったことを後悔はしていませんが、インターネットが普及した現在であれば、もう少しリーズナブルに入手可能な本だと思います。
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乱歩評論書目次紹介 その1『幻影城 1975年7月増刊 江戸川乱歩の世界』
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