201801乱歩文献データブック161

三重県名張市は乱歩の生誕地であり、市内には記念碑も建っています。土産物屋では「二銭銅貨煎餅」を売っていたりと、乱歩ファンにとっては「わざわざ行くほどではないが近くに用があったら立ち寄ってみたい街」であります。
ここの市立図書館では乱歩関係の資料の収集に力を入れており、「江戸川乱歩リファレンスブック」と称して、これまでに「乱歩文献データブック」「江戸川乱歩執筆年譜」「江戸川乱歩著書目録」の3冊が刊行されました。
いずれも、基本的には書店には並ばず、市立図書館が直接販売する形を取っていました。

最初の「乱歩文献データブック」が刊行されたのは1997年のことでしたが、当時はまだインターネットも黎明期であり、地方の図書館がこのようなものを発行したと知るのは、今に比べるとかなり難かったものです。
筆者がどのような経緯でこの本の存在を知ったかというと、実は人からもらったのです。当時所属していたミステリ好きのサークルでお世話になっていた方から、「たぶん喜ぶだろうと思って買っておきました」と、突然渡されたのです。そりゃ、喜びますとも!
とはいえ結局、その方がどうやってこの本を手に入れたのかはよくわからないままでした。

ということで、最初の1冊は運良く手に入れられたのですが、表紙には「江戸川乱歩リファレンスブック1」とあり、続刊が予想されました。
それからがさあ、大変。当時はTwitterのような便利なものもなく、刊行情報を知るには「マメなチェック」しかありません。定期的に名張市立図書館のホームページを確認する日々が続きました。
そんなこんなで、翌年の「執筆年譜」、少し間が空いて2003年の「著書目録」も無事に入手できたわけです。(ちなみに、久しぶりに名張市立図書館のサイトをチェックしたところ「執筆年譜」と「著書目録」はまだ在庫があるようです)

名張市立図書館の発行ということですが、編纂しているのは実質的には名張市在住の中相作氏という乱歩研究家の方です。
本書が刊行されてしばらく経ったころから「名張人外境」というホームページを運営されており、現在もデータベースの更新を続けておられます。
http://www.e-net.or.jp/user/stako/main.html
「乱歩文献データブック」というのは、乱歩について言及されたあらゆる文献の総目録です。
これが、恐るべき手広さで収集しており、新聞・雑誌・書籍など商業出版されたもの以外にも、私家版、同人誌などまで対象としており、本書に紹介はされているものの、どうやったら入手できるか謎なものも多々あります。
(ちなみに、筆者が以前に「入手した」と自慢の記事を書いていた福島萍人「続・有楽町」は「乱歩文献データブック」には記載ありませんが、データベースには登録されています)
「執筆年譜」「著書目録」は「乱歩文献データブック」の異常な内容に比べると、まあストレートな内容ですが、それだけにほぼ100%の充実度・信頼性があり、当ブログのこちらの記事を書くにあってもとてもお世話になりました。
ちなみに、この「名張人外境」のサイトでは「江戸川乱歩年譜集成」というデータベースも作成されており、これも本になってほしいですね。

この3冊は造本もなかなか凝っており、非常に良い紙を使っているため、刊行から20年以上も経つというのにヤケもシミも一切ありません。正直なところ、内容以上に、この本の美しさにも惚れ惚れしてしまいます。

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