201711ことろのばんば150

福音館書店は、幼稚園を通して申し込むと毎月一冊ずつ絵本を届けてくれるというサービスを実施しています。
いずれも以前に月刊誌「こどものとも」として刊行されたことのある作品ですが、その後は一般の書店では流通していない絵本ばかりです。
現在、年中の次男のためにわが家でも購読しているのですが、11月に受け取ってきた絵本がとんでもないものでした。
タイトルを見ただけでは、いったい何のこっちゃという感じで、特に興味を持たなかったのですが、妻が子どもへ読み聞かせているのを横で聞いていて仰天。めっちゃくちゃ怖い!

「ことろ」というのがいったい何かというと、「子盗ろ」です。
意味がわかると、このタイトルだけでゾッとしますね。
「ことろのばんば」は山で子どもを見かけると、壺を手に持って「コートロ、コトロ」と唱えます。すると、その子どもはみるみる小さくなって壺の中へ吸い込まれてしまうのです。

201711ことろのばんば151

壺を抱えて岩屋へ帰ると、今度は親指くらいの大きさになった子どもたちを壺から出し、遊ばせます。可愛い子どもたちが石けり、おにごっこなどしている姿を見るのが、ことろのばんばの何よりの楽しみなのです。しばらく遊ばせるとまた「コートロ、コトロ」と唱えて、子どもたちを壺へ戻します。
そんなやまんばに兄をさらわれた女の子が山へ救出へ向かうというストーリーなのですが、いやはや、子どもの頃から怖い絵本は大好きでしたが、こんなものがあったとは全然知りませんでした。
何より怖いのは、やまんばが子どもを「ばんばのたから」と思い込んでいるところ。イーストウッド監督の「チェンジリング」を思い出しました。

文章を書いているのは長谷川摂子です。この人は昔話の絵本を得意としており、岩波書店から出ている「てのひらむかしばなし」なども手がけています。
この「ことろのばんば」に元になる話があるのかどうかわかりませんが、昔話風の物語としてとてもよくできています。
奥付を見ると月刊誌「こどものとも」に掲載されたのが1990年11月号ということで、筆者はその頃はもう中学生だったので、知らなくて当然でした。その後、特製版という形で幼稚園・保育園を通して何度か販売されたことがあるようです。
一般書店で流通させても、最恐トラウマ絵本として名作の殿堂入りするように思うのですが、このような形態のみで刊行することにしたのは、なのか選別の基準があるんでしょうかね。
ふつうには購入しづらいためか、ネットで検索するとAmazonではマーケットプレイスのみに出品されていて、かなりの高額になっています。
ともかく、非常にラッキーな年に子どもを幼稚園に通わせていたものだ、と実はパパが一番喜んでいたりします。

肝心の子どもの反応はというと、実は目下、一番ハマっている絵本がこれだったりします。
こんな怖い話、子どもに聞かせてええんかいな、と思ってしまいますが、この食いつきぶりを見ると、やはり子どもは怖い話が好きなんだな、と思います。
特に次男は「ねないこだれだ」というこれまたかなり怖ろしい絵本を書いている、せなけいこが大好きで、一時期は寝る前に読む本はせなけいこばかり、という時期がありました。基本的に怖い絵本が好みに合っているようです。

というわけで、なかなか入手困難ではあるのですが、怖い絵本が好き方には確実に満足を保証できる絵本です。

ことろのばんば (こどものともコレクション2009)
長谷川 摂子





関連コンテンツ