このコーナーでは、気になった新刊をちょこちょこと紹介していきます。
ここ最近筆者の目についた、というだけで、刊行から割りと日が経っている本も紛れていますのでご容赦ください。
(リンク先は全てAmazon)

屍人荘の殺人
今村 昌弘
東京創元社
2017-10-12


今年の鮎川哲也賞受賞作ですが、とんでもなく評判がよいです。恐らく年末に各社が発表するミステリの年間ベストテンには確実に入ってくることでしょう。
選考委員の加納朋子曰く「新しいクローズドサークル」ということですが、はじめのうちは状況を作るためだけにこのようなものを登場させているのかと思いましたが、最後まで読むと全ての設定が事件解決のために有機的に絡んできます。ゲテモノミステリと思わせておいて、実は見事な本格ミステリなのです。
今のうちに読んでおかれることをオススメします。

13・67
陳 浩基
文藝春秋
2017-09-30


台湾で実施されている島田荘司推理小説賞を2011年の受賞した陳浩基の受賞第一作です。
陳浩基は台湾ではなく、香港の人らしく、本作は香港の歴史をさかのぼりつつ本格ミステリでもあり、警察小説でもあり……と、評判は絶好調です。
実は筆者はまだ読んでいないのですが、世間の評判を見ているとおそらくは年間ベストには入りそうな勢いなので、早めに読んでおきたいと思っています。

花嫁のさけび (河出文庫)
泡坂 妻夫
河出書房新社
2017-11-07


泡坂妻夫の初期の代表作の一つです。これまでにも講談社文庫、ハルキ文庫に収録されてきましたが、河出文庫から復活です。またもや絶版になる前に、泡坂妻夫ファンはお早めにどうぞ。
今回の復刊の一番の目玉は解説が恩田陸という点ですね。
本作は設定がダフネ・デュ・モーリアの「レベッカ」に似ているとよく言われますが、新潮文庫の新訳版「レベッカ」の解説も恩田陸が書いています。ネタバレ解説ですが、「レベッカ」と本作との比較から作者の企みを説明しつつ、さらに同業者だからこそわかる泡坂妻夫の凄さを紹介しており、改めて冒頭から読み直したくなること必至の素晴らしい解説です。
ちなみに、恩田陸と泡坂妻夫の関係はもう一つあって、実は恩田陸が双葉社から2001年に出した長編「MAZE」の装丁は泡坂妻夫が手がけています。
当時、このことはぜんぜん話題にならなかったため、知らない方も多いようです。
ものすごく凝ったかっこいい装丁なので、いったい誰がデザインしたんだろうと確認して、仰天しました。個人的には泡坂妻夫の裏ベストと認識しており、引っ越しを重ねるうちに恩田陸の本のほとんどは売ってしまったのですが、「MAZE」だけは大切に保管しています。
なお、河出文庫からはこのあとも「妖盗S79号」「迷蝶の島」と傑作の復刊が続くようです。



ここ最近、新刊書店で絶滅していた結城昌治が、ちくま文庫から復活です!
結城昌治は「ゴメスの名はゴメス」などのスパイ小説や「暗い落日」などのハードボイルドが有名ですが、作品の幅は非常に広く、筆者は「ひげのある男たち」「白昼堂々」などのユーモアミステリを愛読しています。(以前に書いたこちらの記事もご覧ください)
本書はサスペンス小説を集めた角川文庫版「あるフィルムの背景」をベースにして、代表作級の傑作短編を追加し、全13篇を収録しています。筆者はこの中でも特に「葬式紳士」が好きで好きで……手元にいくつも収録した本があるのに、また買っちゃいましたよ。
このまま引き続き、ちくま文庫で結城昌治を出していってくれることを熱望します。


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