201710水滸伝136

前回に続き、現在刊行中の新訳「水滸伝」(講談社学術文庫)を読みながら、メモとして作成しているあらすじと登場人物です。赤字は百八星の初登場回です。講談社学術文庫版「水滸伝」は第二十二回までが1巻、第二十三回からが2巻の収録です。「金瓶梅」の原型として有名な武松・潘金蓮・西門慶のエピソードは2巻の冒頭にあります。

第三十一回 張都監血濺鴛鴦楼 武行者夜走蜈蚣嶺

登場人物:武松、張蒙方、蒋門神
あらすじ:武松は鴛鴦楼で酒盛りをしていた張都監、張団練、蒋門神の三人を斬り殺し、さらに張都監の夫人や玉蘭まで始末した。そして壁に血で自分の名を大書するとその場を逃げた。その途中の廟で一休みすると疲れから寝入ってしまった。すると気がつくと追い剥ぎと思われる四人組の男に縄で縛り上げられてしまい、村まで引っ張られてしまった。村に着くととある家へ押し込まれた。そこはなんと張青と孫二娘の家だった。四人組は慌てて武松の縄を解いた。一方、孟州では武松の引き起こした事件が発覚し、捜索の命令が発せられた。張青は武松に、魯智深や楊志が立てこもる宝珠寺へ逃げ込むことを勧める。しかし、宝珠寺への道中に役人に捕まる恐れがある。孫二娘の提案で、頭を剃り行者の姿となることにした。武松は逃げる途中、夜の山中の庵で道士が女を横に抱き笑っているのを目撃する。出家の分際でふざけたやつだと、道士に闘いを挑む。

第三十二回 武行者酔打孔亮 錦毛虎義釈宋江

登場人物:武松、孔亮、孔明、宋江、花栄、燕順、王英、鄭天寿
あらすじ:武松は道士を斬り殺した。囚われていた女に話を聞くと、ここは蜈蚣嶺という場所で、道士は庵を勝手に占拠していたのだった。武松は女を逃がすと庵に火を放ち、また旅を続けた。道中で居酒屋へ入ると主人は肉は売り切れて酒しかないと言う。ところがその後で入ってきた客の前にはたくさんの料理が並び宴会を始める。主人によれば、これは客が自分たちで食料を持ち込んだものだというのだが、武松は激怒する。宴会をしていた男たちと喧嘩になり、そのうちの一人を殴って川へ放り込む。皆が逃げ出すと、武松は料理や酒を平らげてしまった。そうこうしていると、先ほど川へ放り込まれた男が濡れた服を着替え、大勢の手下を連れて戻ってきた。武松は屋敷へ連れ込まれ、そこで先ほどの男のその兄からこてんぱんに殴られる。すると、屋敷の中から別の男が出てきて事情を聞く。そして、武松を顔を見ると、驚いた。なんと宋江だったのだ。武松を殴っていた兄弟は弟が孔亮、兄が孔明と言い、白虎山にあるこの屋敷に宋江は匿われていたのだ。孔亮と孔明は武松が宋江の義兄弟と知り、平伏した。二人はしばらくこの屋敷に滞在し、旧交を温める。宋江は清風寨の武官・花栄からこちらへ来ないかと招かれていると話し、魯智深のいる宝珠寺へ行こうとしている武松にも同行を勧める。しかし、武松は宝珠寺へ行くことを決意し、清風寨へ向かう宋江とはそこで別れる。宋江は一人で山へ入っていくが、山賊に捕まってしまう。山賊たちは宋江をスープにして大王へ献上しようと話し合う。この山には三人の大王がおり、それは燕順、王英、鄭天寿だった。三人は一緒に山にこもって強盗をはたらいていた。しかし、囚われたのが宋江だと知ると、三人はガバッと平伏した。かねがね宋江の高名を聞き及んでいたのだった。そして宴会を開いてもてなした。そうこうしていると、麓の手下から籠が通りかかったと報告が入った。好色な王英は籠には女が乗っているのに違いないと手下を連れて駆け下りていった。案の定、籠には女が乗っていた。宋江、燕順、鄭天寿の三人は王英の好色を戒め、女の素性を尋ねると、清風寨の文官・劉高の妻だという。宋江は劉高が花栄の同僚と知り、女を助ける。その際、自分のことは?城県の商人だと告げる。一方、妻を山賊にさらわれた劉高は激怒し、部下へ取り戻してくるよう命じる。部下の一団が山へ向かうと、そこへ妻が降りてきた。部下たちは自分たちが助け出したことにしないと具合が悪いと妻へ話し、妻は劉高へ開放してもらったのではなく助け出されたのだと話す。宋江はこの一件があってからしばらく経ってから山をおり、清風寨へ向かう。

第三十三回 宋江夜看小鰲山 花栄大閙清風寨

登場人物:宋江、花栄、劉高、黄信、慕容彦達
あらすじ:宋江は清風寨を訪れ、花栄と再会した。花栄は劉高の妻が助けられた話を聞くと、「あいつの口を塞ぐ絶好の機会だったのに!」と嘆く。劉高は清風寨の正知寨に任命され、横暴に振る舞っているのだという。宋江はそんな花栄をたしなめる。一ヶ月ほど滞在したある日、元宵節の提灯見物に出かけた。そこで劉高夫妻に出くわすと、妻は宋江を指差し「あれが自分をさらった山賊の首領だ」と夫に告げた。直ちに兵卒は宋江を捕まえた。宋江は?城県の商人・張三で山賊ではないと主張するが、劉高は取り合わない。花栄は劉高に手紙を出し、「あの男は提灯見物に訪れただけの親戚の劉丈だ」と手紙を書くが、このことがますます事態を悪化させた。花栄を力づくで宋江を奪い返す。宋江は、このままでは劉高は自分を捕縛する命令を出すだろうから、今夜中に清風寨から逃げると告げる。しかし、これを察した劉高にまたもや捕まってしまう。さて、青州の長官・慕容彦達はこの報告を聞き、兵馬都監の黄信に調査を命じる。黄信は劉高の言葉を信じ、山賊と手を組んだ花栄も捕縛し、青州の役所へ護送する。

第三十四回 鎮三山大閙青州道 霹靂火夜走瓦礫場

登場人物:宋江、花栄、劉高、黄信、慕容彦達、燕順、王英、鄭天寿、秦明
あらすじ:黄信と劉高とが役所へ宋江・花栄を護送する途中、山中の前途に潜んでいる者がいた。黄信が挑みかかると、それは燕順、王英、鄭天寿の三人だった。黄信は戦ったが歯が立たず、捕まるのを恐れて馬を返した。一方、劉高はそのまま捕まってしまい、山の寨へ連行される。三人は宋江と花栄が護送されていると聞き、救出に駆けつけたのだった。一同は宴会を開き、劉高はその場で殺された。慕容彦達は花栄が山賊側についたと報告を受けて、青州指揮本部の秦明を呼ぶ。秦明は清風山を攻めるが、山賊たちの散々に翻弄される。ついに、山賊たちはダムを作って川をせき止め、秦明軍を追い込んだ場所へ放流したため、兵士のほとんどは流され、秦明も捕まった。しかし、宋江と花栄は秦明を豪傑と知って丁重にもてなす。秦明もかねて宋江の高名を耳にしていたため、慕容長官にとりなそうと言う。宋江たちは秦明も自分たちの仲間になるよう勧めるが、秦明は役所へ帰っていった。ところが、城へ入ろうとする門が閉ざされ、「裏切り者」と罵声を浴びせられる。前夜に何者かが秦明の姿をして城の中でめちゃくちゃに暴れていたのだった。このことによって秦明の妻もすでに処刑されていた。秦明が清風山へ帰ると、実はこれは宋江たちの計略だった。秦明を役所へ帰さないための策で、自分たちに帰順するよう説き、ついに秦明もそれを受け入れる。秦明は更に黄信も仲間へ入るよう誘う。

第三十五回 石将軍村店寄書 小李広山射雁

登場人物:宋江、花栄、黄信、秦明、燕順、王英、鄭天寿、呂方、郭盛、石勇、林冲、劉唐、朱貴、晁蓋、呉用
あらすじ:黄信は清風寨の門を開き、宋江たちの軍団を受け入れる。清風寨は占拠された。しかし、花栄・秦明・黄信の謀反に対してに大軍が討伐に来るとの報に、宋江の手引で全員が梁山泊へ逃れることにする。そのさい、怪しまれないよう「山賊討伐軍」と旗を掲げ、梁山泊討伐へ向かっているふりをした。宋江と花栄とが軍を進めていくと、行く手にそれぞれ百人ほどの軍団を引き連れた二人の将が現れ、対決をはじめた。しかし、力は拮抗し決着がつかない。二人の戟の紐が絡まっているのをみて、花栄は弓を放ち、紐を断ち切る。驚いて闘いを中断した二人は、呂方・郭盛と名乗った。対影山をめぐって争っていたのだったが、花栄の言葉で仲直りする。この二人も梁山泊行きの仲間に加わることになった。さらに先へ進む途中、居酒屋で石勇という豪傑と知り合う。石勇は宋江の弟・宋清が書いた手紙を持って、宋江の元へ行こうとしている道中だった。手紙を読むと、父が亡くなったという内容だった。宋江は慟哭し、周囲が止めるのも聞かずに急いで故郷へ向かって帰っていってしまった。さて、別に行動していた豪傑たちの合流し、揃って梁山泊へ近づくと、林冲・劉唐が行く手を遮った。一同は宋江の手紙を示し、事情を話すと、まず朱貴の酒屋で梁山泊へ入る手続きをするよう告げられる。梁山泊で一同は歓待を受ける。花栄は宴会の中で、呂方・郭盛の戟の紐を矢で断ち切った話をしたが、晁蓋に信じてもらえない。飛んでいる雁の群れの先頭から三羽目を射落とすと予告して矢を放つと、見事に命中し、花栄は喝采を受ける。翌日も宴会は開かれ、一同は義兄弟の契りを結ぶ。一方の宋江は家へ帰り着くが、なんと父親は生きていた。宋江はなかなか帰ってこないため、父が宋清にウソの手紙を書かせていたのだった。宋江は事情を聞き、父に平伏する。その夜、「宋江を出せ」と、父の屋敷を集団が取り巻いた。


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