201710水滸伝136

前回に続き、現在刊行中の新訳「水滸伝」(講談社学術文庫)を読みながら、メモとして作成しているあらすじと登場人物です。赤字は百八星の初登場回です。講談社学術文庫版「水滸伝」は第二十二回までが1巻、第二十三回からが2巻の収録です。「金瓶梅」の原型として有名な武松・潘金蓮・西門慶のエピソードは2巻の冒頭にあります。

第二十一回 虔婆酔打唐牛児 宋江怒殺閻婆惜

登場人物:宋江、王婆、閻婆、張文遠、唐二哥(唐牛児)
あらすじ:声をかけたのは仲人婆をしている王婆だった。友人の閻婆が困っているので金を融通してほしいという話で、宋江は快く引き受けた。閻婆は宋江を気に入り、娘・閻惜の婿にしたいと考え、王婆が話をまとめた。宋江はもともと女性に興味が薄かったため、閻惜との関係はすぐに冷えた。ある日、宋江は同僚の張文遠を連れて閻惜の家で酒を飲んだ。閻惜は張文遠に一目惚れしてしまい、あっという間に二人は深い仲になった。噂は宋江の耳にも入ったが、特に気にもとめず、ますます閻惜の家から足が遠のいた。閻婆は二人を仲直りさせようと、役所にいた宋江を無理やり家へ連れてくると、なんのかんのともてなそうとした。その時、家の前を宋江の知人の唐二哥(唐牛児)が通りかかり、機転を効かせて宋江を外へ連れ出そうとした。閻婆は怒り、唐牛児にビンタを食らわすと追い出した。結局、宋江は閻惜と改めて罵り合い、明け方に家を出た。帰宅途中、宋江は役所からそのまま持って出ていた書類袋を閻惜宅に忘れてきたことに気づいた。中には、晁蓋から受け取った手紙が入っている。宋江は慌てて取りに戻った。一方の閻惜は、宋江が忘れ物を覗き、彼が梁山泊の強盗とつるんで金をもらっていることを知り、宋江を排除して張文遠と一緒になる手がかりを得たと喜んだ。そこへ宋江が、袋を取りに戻ったため離縁を迫り、宋江は了承する。そして、晁蓋から贈られた金も要求するが、宋江は金を受け取っていないため、口論となり、はずみで宋江は閻惜を殺害する。宋江は手紙を取り返し、その場で燃やした上で、階下へ降り、閻婆に娘を殺したことを告げる。閻婆ははじめは「娘が悪い」と理解を示すが、外へ出た途端に宋江を捕まえ「人殺し」と叫び始めた。宋江をよく知る人々は信じようとしなかったが、通りかかった唐牛児は機転を効かせて宋江を逃がす。すると、今度は唐牛児が閻婆に捕まってしまった。

第二十二回 閻婆大閙?城県 朱仝義釈宋公明

登場人物:唐牛児、張文遠、宋大公、宋清、朱仝、雷横、武松
あらすじ:唐牛児は役人に引き渡され、役所へ連れていかれた。閻婆は殺人犯の宋江を唐牛児が逃したと訴えるが、長官は宋江をよく知っていたため、唐牛児が犯人だと決めつける。張文遠が出てきて、捜査を開始する。張文遠もやはり宋江が犯人だと訴え、長官もかばいきれなくなってきたが、宋江はすでに逃亡したあとだった。代わりに父親の宋大公と弟の宋清とを捕まえようとするが、父親はすでに宋江と縁を切っており、役所の証明書も持っていた。長官は諦めようとしたが、閻婆と張文遠が更に上級の役所へ訴えると言い出すため、やむを得ず朱仝と雷横とを父親宅へ派遣する。朱仝が床板を剥がすと宋江が隠れていた。朱仝は宋江を見逃す。そして、朱仝と雷横とは役所へ戻り、宋江の行方はわからず、父親も縁を切っているため罪に問えないと伝え、さらに朱仝はあちこちへ賄賂をばらまいて一件は落着する。宋江は穴蔵から出てくると、弟の宋清と共に逃避行に出る。二人は滄州の柴進の元へ行くことにする。そして、柴進の屋敷で兄弟は歓待を受ける。宋江は酔って部屋へ戻る途中、炭火がいっぱい入った十能の柄を踏んでしまい、火にあたっていた男に火傷を負わせてしまう。

第二十三回 横海郡柴進留賓 景陽岡武松打虎

登場人物:宋江、武松、柴進
あらすじ:飛び起きた男・武松は怒ったが、宋江の名を聞くと平伏した。武松は清河県で人を殴り、殺してしまったと思いこんで柴進の屋敷へ逃げ込んでいたのだった。しかし、死んだと思っていた男が息を吹き返していたとしり、兄の家へ帰ろうと考えていたところだった。柴進の屋敷で宋江と武松は親交を深め、やがて武松は兄の元へ去ることになった。宋江と宋清とは見送りに出た。途中の居酒屋で宋江と武松とは義兄弟の契りを結ぶ。宋江と宋清は武松とわかれ、柴進の屋敷へ帰った。武松は一人で旅を続け、陽谷県に差し掛かると居酒屋で一休みした。そこの主人から、道の先にある景陽岡では大きな虎が出るので気をつけるよう忠告を受けるが、ベロベロに酔った武松は気にせず岡をのぼった。すると、途中で本当に大虎に出くわす。武松は虎と格闘し、殴り殺してしまった。大虎に悩まされた人々は大喜びし、陽谷県の長官は武松を都頭に任命した。武松は上官からも愛され、住民にも慕われた。そんなある日、役所の前で急に声をかけられた。

第二十四回 王婆貪賄説風情 ?哥不忿閙茶肆

登場人物:武松、武大、潘金蓮、王婆、西門慶、?哥
あらすじ:声をかけたのは、武松の兄・武大だった。武大は「チンチクリンの青びょうだん」とあだ名される冴えない男だったが、最近、潘金蓮という美女を娶ったばかりだった。しかし、周囲が潘金蓮の浮気性をからかうため清河県で落ち着いて生活ができず、陽谷県へ引っ越してきて、役所の前で餅を売って生活していたのだった。武大が武松を連れて家へ帰ると、潘金蓮は武松の魅力の虜になってしまい、武松もこの家へ引っ越してくるよう言いくるめてしまった。武松がさっそく兄の家へ身を寄せると、潘金蓮は武大の留守を狙って武松へ言い寄ったが、武松は一喝して拒絶する。そして、武松は家を出てまた役所で寝泊まりするようになった。そんなある日、県の長官は溜め込んだ財産を東京の親類の元へ預けようと考えたが、輸送中に強奪されるのを恐れ、武松に護衛を命じる。武松は武大の元を訪れ、しばらく出張に行くことを告げ、毎日の商売に出かけるときは遅く出かけて早めに帰るように、と忠告をする。潘金蓮は武大がほとんど家をあけなくなったため怒るが、やがておとなしく生活するようになった。そんなある日、門前の簾を下ろそうとした潘金蓮は通りかかった男の頭へぶつけてしまう。西門慶という男で、もともとは金持ちのゴロツキで、いまは役所の前で薬屋を営んでいる。西門慶は潘金蓮に一目惚れした。なんとか彼女に近づこうと潘金蓮の隣家に住む王婆に協力を求める。王婆は仲を取り持ち、あっという間に二人は深い仲になる。さて、?哥という少年が西門慶を尋ねて王婆の家を訪ねたが、殴られて追い出される。そのため、この二人の関係に気づいてしまう。

第二十五回 王婆計啜西門慶 淫婦薬鴆武大郎

登場人物:武大、潘金蓮、王婆、西門慶、?哥、何九叔
あらすじ:?哥は潘金蓮と西門慶との関係を武大へ告げ口する。そして、武大は二人が密会している王婆の家へ、?哥の協力を得て踏み込む。しかし、そこで西門慶に胸を蹴られて、意識を失ってしまう。潘金蓮は寝たきりになった武大を看病もせず、相変わらず西門慶と逢引を重ねる。武大が、このことを弟の武松が知ったらただでは済まないと告げると、潘金蓮は王婆に相談し、武大の殺害を決意する。王婆が授けた知恵は、西門慶の営む薬屋にある毒を武大へ飲ませることだった。薬を飲んだ武大は体中の七つの穴から血を流して死んでしまった。検死官の何九叔が武大の家を訪れようとすると、西門慶がなんやかやともてなされ、多額の金を渡される。訝しみながら武大の死体を見た何九叔は、驚いて倒れてしまう。

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