201710光の教会132

今年2017年9月から12月にかけて、東京六本木の国立新美術館で「安藤忠雄展―挑戦―」が開催されているため、建築家・安藤忠雄に改めて注目が集まり、関連本が次々刊行されています。
一般向けに書かれた建築の本は、写真集や建築家のエッセイなど、かなりたくさん出ており、書店での人気分野の一つと言ってよいかと思いますが、その中でも安藤忠雄の関連本は突出した売れ方をしています。例えば日経新聞に連載された「私の履歴書」をまとめた『仕事をつくる』は、その年に日本経済新聞出版社が刊行した本の中ではベストセラートップでした。
筆者も建築物には特に興味はないにもかかわらず、建築関係の本はいろいろ読んでいるのですが、やはり安藤忠雄関係の本は面白いと思います。

魅力は2つあります。
本人の破天荒なキャラと、天才の仕事ぶり。
その辺を堪能できる本を3冊ご紹介します。

『光の教会 安藤忠雄の現場』

光の教会―安藤忠雄の現場
平松 剛
建築資料研究社



筆者が初めて読んだ安藤忠雄関連の本なのですが、これは本当に面白いです。
大阪・茨木の住宅街にある教会を作った時の話をノンフィクションに仕立てており、著者の平松剛は本書で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞しています。
光の教会は安藤忠雄の代名詞ともいうべき建築物なのですが、そもそもは、そんなだいそれたものを目指して発注されたわけではありません。単に町の教会に新しい教会堂を建てたい、というだけの話でした。小さな教会なので、お金もありません。
ところが、依頼を受けた安藤センセイはノリにノッてしまい、施主の意向にお構いなく、どんどん我が道を進んでいきます。
しかも天才なので常人には及ばぬ発想をします。
「屋根がなくても教会はなりたつだろう」
と施主へ迫ったりなど、ぶっ飛んだエピソードが次々紹介されます。
この一冊で、安藤忠雄を知るには十分です。

『建築家安藤忠雄』

建築家 安藤忠雄
安藤 忠雄
新潮社



本書は安藤忠雄の自伝です。
はた目には、『光の教会』に描かれているようなぶっ飛んだ発想を次々実現させる豪腕建築家ですが、果たして本人はどのような思考でそんな行動を取っているのか?
そこには、文化や自然、人間に対する深い洞察があります。
建築物を見てもピンと来ない筆者のような人間にも、安藤忠雄の天才ぶりがよく理解できます。

『仕事をつくる』

安藤忠雄 仕事をつくる―私の履歴書
安藤 忠雄
日本経済新聞出版社



日経新聞から発行されているため、ビジネス書っぽいタイトルになっていますが、冒頭にもご紹介したとおり、「私の履歴書」をまとめた自伝エッセイです。
上記2冊に比べるとかなり読みやすいため、安藤忠雄関連本の入門にうってつけです。

さて、今回の六本木での展覧会にあわせ、新刊もいくつか出ています。



別冊太陽なので、ビジュアルをふんだんに使い、安藤忠雄の代表的建築、これまでの人生を振り返る内容になっています。



15000円もする巨大な本ですが、これまでの全建築物についての記録と評論が収録されています。
安藤忠雄の全貌を手元に置いておきたいという方向けの本です。(筆者は買っていませんが……)




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