
横溝正史エッセイ集第4弾となる本書は角川文庫で割りと長いあいだ版を重ねたものなので、最もよく読まれたものと言えるでしょう。
もともとは昭和51年から翌年にかけて1年間、毎日新聞日曜版に連載された同タイトルのコラムであり、単行本も毎日新聞社から発行されました。
連載時には和田誠のイラストが添えられ、単行本・文庫本にもそれらは全て収録されています。
全体的に軽いノリではあるのですが、ちょうど「犬神家の一族」の映画公開、連続ドラマ放映など横溝ブームの絶頂期であり、その一年間に執筆されたエッセイということでそれなりに資料的価値があるのではないかと思います。
また、「獄門島」の犯人は奥さんが決めたとか、津山事件を「八つ墓村」へ取り入れた経緯、自選ベスト10など、ファンには興味深いエピソードも披露されており(他のエッセイでも語っている話の繰り返しも多いのですが)、ひとまず横溝正史のエッセイはこれ一冊読んでおけばOK、と言ってもよい総集編的な内容です。
毎日新聞社から発行された単行本には、連載されたエッセイのほかに同年の日記も併録されているようですが、筆者は単行本を見たことがないため、確認したことはありません。文庫版では削除されています。
文庫版の目次は以下のとおりです。
金田一耕助恐縮す人気とは不可解なもの映画初出演の弁映画になった金田一耕助金田一耕助最後の事件 Ⅰ金田一耕助最後の事件 Ⅱ金田一耕助最後の事件 Ⅲ「犬神家の一族」の思い出金田一耕助、山を下る最高と最低タレント業失格本名と筆名小説と映画 Ⅰ小説と映画 Ⅱ勲章を貰う話金田一耕助の収入騒がしかりきこの一年終戦後の初正月私のベスト10一人の金田一耕助の死屁をかぞえる人びと腰砕けディクソン・カー Ⅰ腰砕け ディクソン・カー Ⅱカゼをひくの弁「本陣殺人事件」由来 Ⅰ「本陣殺人事件」由来 Ⅱカーの死バレンタイン・デーの恐怖Whodunitの映画化昭和52年4月2日横溝正史シリーズ人形佐七捕物帖 Ⅰ人形佐七捕物帖 Ⅱ「蝶々殺人事件」縁起 Ⅰ「蝶々殺人事件」縁起 Ⅱ三本指の男蝶々失踪事件ブームやつれ「獄門島」懐古「八つ墓村」考 Ⅰ「八つ墓村」考 Ⅱ「八つ墓村」考 Ⅲ「陰獣」の試写を見る病院坂の首縊りの家怪奇探偵作家モウロクもまた愉しYの悲劇悪魔が来たりて笛を吹くさらば金田一耕助あとがき
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