201707横溝正史の世界100

横溝正史エッセイ集第3弾となる本書は、1976年に単行本として発行されました。
本書の特徴は、対談がたくさん含まれている点です。昭和24年の乱歩との対談、昭和51年の都筑道夫との対談など、その顔合わせだけでミステリファンには感動的です。
乱歩は作家同士の付き合い以前に、編集者と作家という関係があり、また長年の友人でもあるため、なかなか作品を書かない乱歩に対する横溝正史の容赦ない突っ込みが見どころです。
都筑道夫は評論家でもあるので、後輩として、また一ファンとして横溝正史に対する敬意を示しつつ、的確な質問を繰り出しており、これもまた興味深い内容です。
巻末には、「幻影城」増刊「横溝正史の世界」に掲載された「続桜日記」「書かでもの記」が収録されています。「書かでもの記」は幼少期の生い立ちを綴った内容なのですが、探偵小説関係のエピソードはほとんどなく、育った家庭の複雑な人間関係について書かれています。
横溝ミステリの特色の一つは、「血の系譜」を巡る抗争であり、そこには生い立ちが影を落としているというのはよく言われることですが、そのあたりを自身で語っています。

目次は以下のとおりです。

エッセイ ちかごろ想うこと
 七十三翁の執念
 七十三歳の抵抗
 善き哉、プロ野球
 「パノラマ島奇譚」と「陰獣」が出来る話
 私たちの結婚式
 本格探偵小説への転機
 「本陣殺人事件」封切を前にして
 「本陣殺人事件」映画化
 奪われた旅の愉しみ
 私の一九七五年
 クリスティと私
 甦る青春の日々
 書かでもの記
 無題

小説 私の好きな自作
 ネクタイ綺譚――ナンセンス時代
 蔵の中――耽美・ロマン派時代
 蜃気楼島の情熱――本格時代

対談 愉しき哉、探偵小説
 探偵小説の阿修羅として VS大西赤人
 野球 このスリルとミステリィ VS佐野洋・有馬頼義
 「探偵小説」対談会 VS江戸川乱歩
 歌手が来りて推理小説を語る VS大橋国一
 金田一耕助VSコロンボ VS石上三登志
 われら華麗なる探偵貴族 VS都筑道夫

日記 私の闘いの記録
 続桜日記 昭和二十二年度

年譜
横溝正史の人と作品 中島河太郎
あとがき

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