「樹海都市」とは、もう20年以上前から予告されているものの、一向に刊行される気配のない島田荘司の短編集です。
筆者が初めて知ったのはまだインターネットなど普及していない頃のこと。1995年に発行された立教大学ミステリ・クラブの機関誌「立教ミステリ」が島田荘司のロングインタビューを掲載していると知り、つてを辿って連絡を取り入手したのですが、そこで以下のように紹介されていました。
島田氏はデビュー当初から、短編のタイトルを英語名で構想していた。「都市の声」が“シティ・ヴォイス”でV、「糸ノコとジグザグ」が“ジグソー・アンド・ジグザグ”でZ、というように、すべてのタイトルのキーワードにアルファベットをあてはめていた。そしてアルファベットを網羅できる26篇が完成したら、『樹海都市』という単行本にまとめるという計画である。なんとも壮大な。
この記事を読んだのが22年前ということになりますが、その後、Web上で島田荘司本人が発言することが多くなり、「樹海都市」の進捗状況もちょこちょこと漏らしています。
では「ジャングルの虫たち」は、何故存在を憶えていたのかというと、「樹海都市」というアンソロジーの設計図にタイトルを書いていたからで、だから探す気になった。S村氏によれば、講談社はもうじき創立百年の節目を迎えるそうなので、そうなれば記念出版物が相次ぐから、「樹海都市」も豪華装丁本として、そのおりに出してはどうかと言う。それもいいが、そうなるとまた刊行が延びてしまう。 「帝都衛星軌道」も、実はこの「樹海都市」に収録予定の一作で、英題を「Orbit of Tokyo」という。「ジャングルの虫たち」は「Jungle Insects」で、だから「ジャングルの虫たち」という題は、ただこれの和訳である。「帝都衛星軌道」もまあそうで、これも翻訳から構想したタイトルである。 英文タイトルを、その頭文字に着目し、ZからAに向けて逆向きに並べる設計図の、それぞれ「O」と「J」を、この2作は担っている。今回「帝都」を書いて、やっと完成一歩手前までこぎつけた。あとは「C」だけで、ここまで来たからにはもう一気呵成にと思っていたら、創立百年を待てと言う。少々辛いところだが、まあ来春「帝都衛星軌道」を、「ジャングルの虫たち」とカップリングで上梓するのなら、この余波が一段落するのも待たなくてはならないだろう。
という形で、2011年には「終わった!」とのことなのですが、未だに刊行されていません。
その後も、例えば島田荘司サイン会に参加された方のレポートなどを探すと、たまに続報が得られますが、たいした進展はなさそうです。
また、収録作も、ポロポロと情報がこぼれてくる以外には公開されておらず、いまだ謎です。
本当に出るのかどうか、出るとしたら予約販売という噂もあるので、情報に乗り遅れずちゃんと購入できるか。ここ20年間、ずっとそのことを気にしながら生きているわけですが、しかし考えてみれば、収録作に新作はないはず。すべて発表済みの中短編のはずなのです。
だから、これは読めない本というわけではない。手にできないだけで。
ってことは、収録作を予想してみるのも一興。
ということで、以下の通り考えてみました。
ご本人の口から情報が漏れているものはその位置へ持ってきました。またタイトルにアルファベットが入っているものも、当然そこだろうということにしています。
しかし、発表された日本語タイトルのほかに英文タイトルが想定されているということで、読者にはうかがい知れないタイトルになっているものも多々あるでしょう(ご本人がつぶやいておられる「展望塔の殺人」も、なぜAなのか、全っ然わかりません)。
全く見当のつかない文字がいくつもあり、かなり無理やりに当てはめているものが多々あります。
果たして正答率はどのくらいか?
いやその前に、ちゃんと刊行されるのか? 出てくれないことには答え合わせもできません。
ということで、いったいどこで誰が止めているのかわかりませんが、とにかくいつでもいいから死ぬまでには手にしたい!ということを改めて訴えておきます。
島田荘司『樹海都市』収録作大予測!(外れても責任は一切負いません)
Z. 『糸ノコとジグザグ』 (毒を売る女)
Y. 『Y字路』 (踊る手なが猿)
X. 『ドアX』 (天国からの銃弾)
W. 『毒を売る女』 (毒を売る女)
V. 『都市の声』 (展望塔の殺人)
U. 『UFO大通り』 (UFO大通り)
T. 『渇いた都市』 (毒を売る女)
S. 『SIVAD SELIM』 (御手洗潔のメロディ)
R. 『疾走する死者』 (御手洗潔の挨拶)
Q. 『バイクの舞姫』 (毒を売る女)
P. 『Pの密室』 (Pの密室)
O. 『帝都衛星軌道』 (帝都衛星軌道)
N. 『数字錠』 (御手洗潔の挨拶)
M. 『溺れる人魚』 (溺れる人魚)
L. 『最後のディナー』 (最後のディナー)
K. 『ある騎士の物語』 (御手洗潔のダンス)
J. 『ジャングルの虫たち』 (帝都衛星軌道)
I. 『IgE』 (御手洗潔のメロディ)
H. 『丘の上』 (網走発遥かなり)
G. 『ギリシャの犬』 (御手洗潔の挨拶)
F. 『化石の街』 (網走発遥かなり)
E. 『発狂する重役』 (展望塔の殺人)
D. 『D坂の密室殺人』 (展望塔の殺人)
C. 『クロアチア人の手』 (リベルタスの寓話)
B. 『ボストン幽霊絵画事件』 (御手洗潔のメロディ)
A. 『展望塔の殺人』 (展望塔の殺人)
関連記事:
島田荘司「異邦の騎士」の舞台をGoogleストリートビューで巡る
福島萍人『続有楽町』入手
筆者が初めて知ったのはまだインターネットなど普及していない頃のこと。1995年に発行された立教大学ミステリ・クラブの機関誌「立教ミステリ」が島田荘司のロングインタビューを掲載していると知り、つてを辿って連絡を取り入手したのですが、そこで以下のように紹介されていました。
島田氏はデビュー当初から、短編のタイトルを英語名で構想していた。「都市の声」が“シティ・ヴォイス”でV、「糸ノコとジグザグ」が“ジグソー・アンド・ジグザグ”でZ、というように、すべてのタイトルのキーワードにアルファベットをあてはめていた。そしてアルファベットを網羅できる26篇が完成したら、『樹海都市』という単行本にまとめるという計画である。なんとも壮大な。
『立教ミステリ 創刊50号記念号』1995年3月 p57より
この記事を読んだのが22年前ということになりますが、その後、Web上で島田荘司本人が発言することが多くなり、「樹海都市」の進捗状況もちょこちょこと漏らしています。
では「ジャングルの虫たち」は、何故存在を憶えていたのかというと、「樹海都市」というアンソロジーの設計図にタイトルを書いていたからで、だから探す気になった。S村氏によれば、講談社はもうじき創立百年の節目を迎えるそうなので、そうなれば記念出版物が相次ぐから、「樹海都市」も豪華装丁本として、そのおりに出してはどうかと言う。それもいいが、そうなるとまた刊行が延びてしまう。 「帝都衛星軌道」も、実はこの「樹海都市」に収録予定の一作で、英題を「Orbit of Tokyo」という。「ジャングルの虫たち」は「Jungle Insects」で、だから「ジャングルの虫たち」という題は、ただこれの和訳である。「帝都衛星軌道」もまあそうで、これも翻訳から構想したタイトルである。 英文タイトルを、その頭文字に着目し、ZからAに向けて逆向きに並べる設計図の、それぞれ「O」と「J」を、この2作は担っている。今回「帝都」を書いて、やっと完成一歩手前までこぎつけた。あとは「C」だけで、ここまで来たからにはもう一気呵成にと思っていたら、創立百年を待てと言う。少々辛いところだが、まあ来春「帝都衛星軌道」を、「ジャングルの虫たち」とカップリングで上梓するのなら、この余波が一段落するのも待たなくてはならないだろう。
「季刊島田荘司 on line」島田荘司のデジカメ日記 第254回(2000/11/4)より
http://www.harashobo.co.jp/online-shimada/shukan/backnumber/index254.html
http://www.harashobo.co.jp/online-shimada/shukan/backnumber/index254.html
注文販売のみの精選集、「樹海都市」(講談社)を作っています。ZからAまで、英文のタイトルが26並ぶ、前代未聞の箱入り週刊誌大の豪華本です。ゲラでの加筆修正、Iまで終わりました。今H。
? 島田荘司 (@S_S_Kingdom) 2011年1月26日
『樹海都市』の改訂完全化、Dを終了! あとはABCだけど、Cは近作だから手入れほとんどないはず。あとはAとBのみ。
? 島田荘司 (@S_S_Kingdom) 2011年2月11日
『樹海都市』、Aの『展望塔の殺人』終わった! Aを先にやったので。あと残るはBとC。北京は昨日初雪なんだって。今零下10℃だそう。
? 島田荘司 (@S_S_Kingdom) 2011年2月12日
『樹海都市』終わった! 短い終章書いて、講談社に送った。あとは巻末の自作解説だけど、これ、やるべきか否か。もっと別の趣向の付録にするか、悩みどころ。
? 島田荘司 (@S_S_Kingdom) 2011年2月15日
という形で、2011年には「終わった!」とのことなのですが、未だに刊行されていません。
その後も、例えば島田荘司サイン会に参加された方のレポートなどを探すと、たまに続報が得られますが、たいした進展はなさそうです。
また、収録作も、ポロポロと情報がこぼれてくる以外には公開されておらず、いまだ謎です。
本当に出るのかどうか、出るとしたら予約販売という噂もあるので、情報に乗り遅れずちゃんと購入できるか。ここ20年間、ずっとそのことを気にしながら生きているわけですが、しかし考えてみれば、収録作に新作はないはず。すべて発表済みの中短編のはずなのです。
だから、これは読めない本というわけではない。手にできないだけで。
ってことは、収録作を予想してみるのも一興。
ということで、以下の通り考えてみました。
ご本人の口から情報が漏れているものはその位置へ持ってきました。またタイトルにアルファベットが入っているものも、当然そこだろうということにしています。
しかし、発表された日本語タイトルのほかに英文タイトルが想定されているということで、読者にはうかがい知れないタイトルになっているものも多々あるでしょう(ご本人がつぶやいておられる「展望塔の殺人」も、なぜAなのか、全っ然わかりません)。
全く見当のつかない文字がいくつもあり、かなり無理やりに当てはめているものが多々あります。
果たして正答率はどのくらいか?
いやその前に、ちゃんと刊行されるのか? 出てくれないことには答え合わせもできません。
ということで、いったいどこで誰が止めているのかわかりませんが、とにかくいつでもいいから死ぬまでには手にしたい!ということを改めて訴えておきます。
島田荘司『樹海都市』収録作大予測!(外れても責任は一切負いません)
Z. 『糸ノコとジグザグ』 (毒を売る女)
Y. 『Y字路』 (踊る手なが猿)
X. 『ドアX』 (天国からの銃弾)
W. 『毒を売る女』 (毒を売る女)
V. 『都市の声』 (展望塔の殺人)
U. 『UFO大通り』 (UFO大通り)
T. 『渇いた都市』 (毒を売る女)
S. 『SIVAD SELIM』 (御手洗潔のメロディ)
R. 『疾走する死者』 (御手洗潔の挨拶)
Q. 『バイクの舞姫』 (毒を売る女)
P. 『Pの密室』 (Pの密室)
O. 『帝都衛星軌道』 (帝都衛星軌道)
N. 『数字錠』 (御手洗潔の挨拶)
M. 『溺れる人魚』 (溺れる人魚)
L. 『最後のディナー』 (最後のディナー)
K. 『ある騎士の物語』 (御手洗潔のダンス)
J. 『ジャングルの虫たち』 (帝都衛星軌道)
I. 『IgE』 (御手洗潔のメロディ)
H. 『丘の上』 (網走発遥かなり)
G. 『ギリシャの犬』 (御手洗潔の挨拶)
F. 『化石の街』 (網走発遥かなり)
E. 『発狂する重役』 (展望塔の殺人)
D. 『D坂の密室殺人』 (展望塔の殺人)
C. 『クロアチア人の手』 (リベルタスの寓話)
B. 『ボストン幽霊絵画事件』 (御手洗潔のメロディ)
A. 『展望塔の殺人』 (展望塔の殺人)
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島田荘司「異邦の騎士」の舞台をGoogleストリートビューで巡る
福島萍人『続有楽町』入手
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