20170527探偵小説昔話080

前回の「探偵小説五十年」に続き、「探偵小説昔話」のご紹介です。

これは、講談社から1974年から刊行された「新版横溝正史全集」の第18巻として刊行されたものです。
1972年に初のエッセイ集である「探偵小説五十年」が刊行されたばかりでしたが、にわかに世間の注目が集まり、エッセイを発表する機会が増えたため、前著で収録から漏れたものを加えて、直近のエッセイで構成した一冊です。

収録エッセイは以下のとおりです。

探偵小説昔話
 1 森下雨村と「樽」
 2 乱歩と稚児の草紙
 3 甲賀三郎と電話
 4 大下宇陀児と青酸加里
 5 海野十三と敗戦日記
 6 浜尾四郎と春本
 7 小栗虫太郎とピンチヒッター
 8 木々高太郎と人生二回結婚説
 9 一杯亭主人の憂うつ
槿槿先生夢物語
続槿槿先生夢物語
探偵小説闇黒時代
あとがき集
 「本陣殺人事件」
 「蝶々殺人事件」
 「獄門島」
 「悪魔が来りて笛を吹く」
真言秘密の自分の道楽
大阪の友人・藤沢桓夫君
まあちゃんのお婿さん
誤植奇談
屍体を匿す
エラリー・クィーン氏、雑誌の廃刊を三ヵ月おくらせること
余暇善用
山荘無精記
ノンキな話
初対面の乱歩さん
西田さんご兄弟のこと
好敵手甲賀・大下
不如丘と不木
啓蟄記
傷ましき母
本格探偵小説への転機
四半世紀ゆめうつつ
私の衆道趣味
蟇とともに
金硫黄奇談
ご趣向本意
しかも私は飲む
一杯亭綺言
むささび悲歌
「国定忠治」の思い出
年寄りの冷や水
探偵作家の嘆き
黒岩涙香を読む
山荘愚談
贋作楢山節考
淋しさの極みに立ちて
鬼の大罪
お目出度き男
わが町・わが本
八つ当りの記
しずごころなく
「パノラマ島奇譚」と「陰獣」が出来る話
対談
 金田一耕助VSコロンボ警部――石上三登志
 歌手が来りて推理小説を語る――大橋国一
桜日記
桜日記に寄せて
年譜・目録――中島河太郎編
 年譜
 執筆作品目録
解説 中島河太郎

表題の「探偵小説昔話」は1972年から朝日新聞に連載されたもので、戦前戦後の同時代作家の思い出を綴っています。山藤章二のイラスト付き。
「桜日記」は「本陣殺人事件」「蝶々殺人事件」を並行して執筆した時期の誠に興味深い日記です。金田一耕助がこの世に誕生した日もわかります。
エッセイを読んでいると全体的に「真説金田一耕助」の記述を重複している内容が多いのですが、本書の刊行と「真説金田一耕助」の執筆の時期が重なっていますので、「探偵小説昔話」収録のエッセイをを参照しながら「真説金田一耕助」を書いたのでは、と推測しています。

また、巻末の中島河太郎による目録は、小説だけでなくエッセイなども対象としたもので、完全な内容ではないと但し書きはついているものの、今に至るもなかなか貴重な資料です。

なお、本書は初版が刊行されたのみですが、刷り部数が多かったのか、比較的に容易に入手できます。また、現在は電子書籍にもなっていますので、さらに簡単に読むことができるようになりました。

探偵小説昔話
横溝正史
講談社
2014-08-29


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