
前回の「探偵小説五十年」に続き、「探偵小説昔話」のご紹介です。
これは、講談社から1974年から刊行された「新版横溝正史全集」の第18巻として刊行されたものです。
1972年に初のエッセイ集である「探偵小説五十年」が刊行されたばかりでしたが、にわかに世間の注目が集まり、エッセイを発表する機会が増えたため、前著で収録から漏れたものを加えて、直近のエッセイで構成した一冊です。
収録エッセイは以下のとおりです。
探偵小説昔話1 森下雨村と「樽」2 乱歩と稚児の草紙3 甲賀三郎と電話4 大下宇陀児と青酸加里5 海野十三と敗戦日記6 浜尾四郎と春本7 小栗虫太郎とピンチヒッター8 木々高太郎と人生二回結婚説9 一杯亭主人の憂うつ槿槿先生夢物語続槿槿先生夢物語探偵小説闇黒時代あとがき集「本陣殺人事件」「蝶々殺人事件」「獄門島」「悪魔が来りて笛を吹く」真言秘密の自分の道楽大阪の友人・藤沢桓夫君まあちゃんのお婿さん誤植奇談屍体を匿すエラリー・クィーン氏、雑誌の廃刊を三ヵ月おくらせること余暇善用山荘無精記ノンキな話初対面の乱歩さん西田さんご兄弟のこと好敵手甲賀・大下不如丘と不木啓蟄記傷ましき母本格探偵小説への転機四半世紀ゆめうつつ私の衆道趣味蟇とともに金硫黄奇談ご趣向本意しかも私は飲む一杯亭綺言むささび悲歌「国定忠治」の思い出年寄りの冷や水探偵作家の嘆き黒岩涙香を読む山荘愚談贋作楢山節考淋しさの極みに立ちて鬼の大罪お目出度き男わが町・わが本八つ当りの記しずごころなく「パノラマ島奇譚」と「陰獣」が出来る話対談金田一耕助VSコロンボ警部――石上三登志歌手が来りて推理小説を語る――大橋国一桜日記桜日記に寄せて年譜・目録――中島河太郎編年譜執筆作品目録解説 中島河太郎
表題の「探偵小説昔話」は1972年から朝日新聞に連載されたもので、戦前戦後の同時代作家の思い出を綴っています。山藤章二のイラスト付き。
「桜日記」は「本陣殺人事件」「蝶々殺人事件」を並行して執筆した時期の誠に興味深い日記です。金田一耕助がこの世に誕生した日もわかります。
エッセイを読んでいると全体的に「真説金田一耕助」の記述を重複している内容が多いのですが、本書の刊行と「真説金田一耕助」の執筆の時期が重なっていますので、「探偵小説昔話」収録のエッセイをを参照しながら「真説金田一耕助」を書いたのでは、と推測しています。
また、巻末の中島河太郎による目録は、小説だけでなくエッセイなども対象としたもので、完全な内容ではないと但し書きはついているものの、今に至るもなかなか貴重な資料です。
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