31赤い妖虫038

今回は第31巻「赤い妖虫」をご紹介します。昭和45年8月の刊行です。
原作は「キング」に昭和8年から連載された「妖虫」です。
「キング」連載作品にはほかに「黄金仮面」「大暗室」などありますが、それらに比べると地味な印象があります。乱歩の自作解説では「動機はちょっと珍しい着想」という程度のことしか触れておらず、あとは本作の着想を流用した二十面相モノ「鉄塔の怪人」が映画化されたときの思い出という、あまり関係ない話を書いています。
リライトは氷川瓏が担当しています。初出は昭和31年「日本名探偵文庫12」としてポプラ社から刊行されました。
表紙絵・挿絵はともに柳瀬茂。いずれも昭和42年に刊行された「名探偵シリーズ」版からの流用です。

原作は明智小五郎ではなく、三笠竜介という老探偵が登場しますが、本書ではもちろん、明智小五郎が探偵役を努めます。三笠竜介は麹町にある二階建てレンガ造りの家に住んでいたため、本書の明智探偵事務所も麻布の二階建てレンガ造りということになっています。小林君も事務所に住み込んでいます。
また、主人公は原作では相川守という青年ですが、これが少年となり、賊に狙わえる珠子さんも高校生という設定です。乱歩が「ちょっと珍しい」と自負する動機は少年向けではないため、サラッと書かれて終わります。

Amazon販売ページ(古本は入手できます)


関連記事:
ポプラ社 少年探偵江戸川乱歩全集の27巻以降


関連コンテンツ