28呪いの指紋035

今回は第28巻「呪いの指紋」をご紹介します。昭和45年10月の刊行です。
原作は新潮社の大衆文芸雑誌「日の出」に昭和12年から連載された「悪魔の紋章」です。
「日の出」は講談社の「キング」に対抗すべく創刊された雑誌で、乱歩はほかにも「黒蜥蜴」などいくつかの作品を連載しています。
リライト担当は氷川瓏ですが、本書の中には明記はありません。初出は、昭和30年「日本名探偵文庫1」としてポプラ社から刊行されています。
表紙絵・挿絵とも担当は柳瀬茂。柳瀬茂は昭和42年に刊行された「名探偵シリーズ」版の表紙絵・挿絵も担当しており、本書ではそれを流用しています。

原作について、乱歩自身は「完全に筋ができていないまま執筆をはじめ」「全体として整った感じを受けない」と、していますが、改めて読んでみると、ミステリとしてもなかなかよくできている印象があります。なかでも三重渦状紋の持ち主については、意外性十分と思います。

原作には割りと忠実に展開していきます。一番大きな違いは、「宗像博士」が「宗方博士」になっていることくらいでしょうか。
また、原作では川でボートを遊びをしていたカップルが錫の小箱を拾いますが、本書では「林君」という少年が拾い、明智探偵事務所の小林君へ届けますが、明智先生があいにく不在のため、宗方博士のもとへ持ち込むという展開になります。そして、そのまま原作に登場した林助手の役割を果たしていくことになるのです。無理矢理な印象がなくもないのですが、なんとか小林君を登場させることに成功しています。

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