さて、今回から順番に「少年探偵江戸川乱歩全集」27巻以降の作品紹介をしていきます。
第27巻は「黄金仮面」。初版は昭和45年8月に刊行されました。
原作は講談社の雑誌「キング」に昭和5年から連載された同題の「黄金仮面」です。
「キング」は戦前、小説誌としては最大の発行部数を誇った雑誌であり、乱歩としてもとにかく大衆受けのするものを、ということで変態心理を抑え、「最も不健全性の少ない、明るい作」(自著解説より)となっています。このことが、少年向けリライト第一弾に選ばれた理由ではないかと推測されます。
リライトを担当したのは武田武彦で、このことは本書の「はじめに」という一文に明記されています(「はじめに」は乱歩本人が書いているようです)。初出は、前回も書きましたが、昭和28年「日本名探偵文庫9」として刊行されています。
表紙絵は柳瀬茂、挿絵は山内秀一が担当しています。山内秀一は昭和35年に刊行された「少年探偵小説全集1 黄金仮面」の挿絵も担当していますので、おそらくはこの時の挿絵をそのまま流用しているのでしょう(現物は未確認)。柳瀬茂による表紙絵は昭和42年にポプラ社から刊行された「名探偵シリーズ」版と同じです(「名探偵シリーズ」版は挿絵も柳瀬茂だったようですが、現物未確認)。
内容的には原作におおむね忠実で、浴室での殺人もそのまま描かれます。不二子ちゃんもそのまま登場しています。
面白いのは、子ども向け、ということで少年探偵団が顔見せ程度に登場している点です(といっても、このリライトシリーズはどれも、無理やり少年探偵が登場しますが)。
冒頭、黄金仮面の出没を目撃するのは、原作では市井の名もなき人びとですが、本書では小林君をはじめとする団員たちです。また、中盤、黄金仮面にぐるぐるに縛られてしまう運転手も小林君ということになっています。
大きな(というほどでもありませんが)違いといえばその程度で、筆者は子どもの頃に本書を読んでから原作へ手を伸ばしましたが、全く同じ話を改めて読んだだけ、という印象で、何の違和感もなかった記憶があります。
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