今回は、ちくま文庫「怪奇探偵小説名作選」の後半をご紹介します。
このシリーズは当初は全5冊ということで刊行されましたが、翌年になってから続巻が刊行され、最終的に全10冊となりました。
顔ぶれを眺めると、小栗虫太郎もいるのに、夢野久作の巻がないのが気になります。ちくま文庫では以前に夢野久作全集が出ていましたから、重複を避けたのでしょうか。
それはともかく、小栗虫太郎、日影丈吉と熱心なファンの多い作家が並びますが、いずれも有名作品をしっかり押さえた、すばらしいセレクションです。
驚いたのは氷川瓏です。氏は、この『氷川瓏集』が初めての、そして今のところ唯一の単著です。大変マイナーな作家と言ってもよい存在ですが、探偵小説のアンソロジーにはしばしば取り上げられています。
実は、個人的に氷川瓏には思い入れがあります。先日にこちらで、ポプラ社「少年探偵 江戸川乱歩」旧版の後半の巻は大人向け作品のリライトが収録されていたと書きましたが、そのリライトを請け負っていた一人が氷川瓏なのです。
ポプラ社のシリーズはリライト執筆者の名前を明記していないものが多いのですが、一部の巻には「江戸川乱歩・原作 氷川瓏・文」と書かれています(実際には、一部の巻どころかほとんどが氷川瓏の筆によるものだったようです)。
このため、筆者は小学生の頃からこの名前に親しんでおり、今振り返ってみれば、当時、乱歩の次にたくさん著書を読んでいた作家は氷川瓏ということになってしまうのです。
そんな作家のいわば単著デビューということなので、感慨深いものがありました。

というところで、収録作品をご紹介します。

『怪奇探偵小説名作選 6小栗虫太郎集』

完全犯罪
白蟻
海峡天地会
紅毛傾城
源内焼六術和尚
倶利伽羅信号
地虫
屍体七十五歩にて死す
方子と末起
月と陽と暗い星
解説(日下三蔵)

『怪奇探偵小説名作選 7蘭郁二郎集』

息を止める男
歪んだ夢
鉄路
自殺
足の裏
舌打する
古傷
孤独
幻聴
蝕眠譜

魔像
夢鬼
虻の囁き
腐った蜉蝣
鱗粉
白金神経の少女
睡魔
地図にない島
火星の魔術師
植物人間
脳波操縦士
解説(日下三蔵)

『怪奇探偵小説名作選 8日影丈吉集』

かなむぎうた
狐の鶏
奇妙な隊商
東天紅
飾燈
鶴の来歴
旅愁
吉備津の釜
月夜蟹
ねずみ
猫の泉
写真仲間
饅頭軍談
王とのつきあい
粉屋の猫
吸血鬼
解説(日下三蔵)

『怪奇探偵小説名作選 9氷川瓏集』

乳母車
春妖記
白い蝶
白い外套の女
悪魔の顫音
天使の犯罪
風原博士の奇怪な実験
浴室

睡蓮夫人
天平商人と二匹の鬼
洞窟
陽炎の家
華胥の島
路地の奧
風蝕
解説(日下三蔵)

『怪奇探偵小説名作選 10香山滋集』

エル・ドラドオ
美しき獣
海蛇の島
沈黙の復讐
美しき山猫
人魚
緑の蜘蛛
爬虫邸奇譚
タヒチの情火
心臓花
魔林の美女
不死の女王
シャト・エル・アラブ
有翼人
熱沙の涯
砂漠の魔術師
ソロモンの秘宝
マンドラカーリカ
十万弗の魚料理
解説(日下三蔵)


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