201901小酒井不木308

「怪奇探偵小説傑作選」につづいて、翌年には「名作選」の刊行が始まりました。
名作選は当初、傑作選と同じく全5冊予定でしたが、好評だったためか、翌年には6巻から10巻が刊行され、全10冊のシリーズとなりました。
今回は、前半の1~5巻をご紹介します。

1巻目は乱歩の師匠筋に当たる小酒井不木。小酒井不木の傑作集は、創元推理文庫、国書刊行会の「探偵クラブ」、さらには「論創ミステリ叢書」と、あちこちから刊行されています。名作とされる作品はほぼ決まっている印象がありますが、この「探偵小説名作選」版はそれらを外さずきれいに収録しており、これ一冊読んでおけば、小酒井不木のことはだいたいわかった、と言い切ってしまって差し支えないと思います。
個人的に気に入っているのは、『橘外男集』です。
橘外男は探偵小説作家といえるのかどうか、怪奇小説家と呼ぶほうがしっくりします。中でも、本書にも収録された「蒲団」は、最強の怪談。幽霊が出てくる因縁話ですが、あとにも先にも、これほど恐ろしい小説は読んだことがありません。
この短編は他のアンソロジーにもときどき収録されており、それほど珍しくはありませんが、文庫で手軽に読めるのは本書くらいだったのでは、と思います。

というところで、5巻までの目次です。

『怪奇探偵小説名作選 1小酒井不木集』

恋愛曲線
人工心臓
按摩
犬神
遺伝
手術
肉腫
安死術
秘密の相似
印象
初往診
血友病
死の接吻
痴人の復讐
血の盃
猫と村正
狂女と犬
鼻に基く殺人
卑怯な毒殺
死体蝋燭
ある自殺者の手記
暴風雨の夜
呪われの家
謎の咬傷
新案探偵法
愚人の毒
メデューサの首
三つの痣
好色破邪顕正
闘争
解説(日下三蔵)

『怪奇探偵小説名作選 2渡辺啓助集』

偽眼のマドンナ
佝僂記
復讐芸人
疑似放蕩症
血笑婦
写真魔
変身術師
愛欲埃及学
美しき皮膚病
地獄横丁
血痕二重奏
吸血花
塗込められた洋次郎
北海道四谷怪談
暗室
灰色鸚哥
悪魔の指
血のロビンソン
紅耳
聖悪魔
血蝙蝠
屍くずれ
タンタラスの呪い血
決闘記
ニセモノもまた愉し
解説(日下三蔵)

『怪奇探偵小説名作選 3水谷準集』

好敵手
孤児
蝋燭
崖の上
月光の部屋
恋人を喰べる話
街の抱擁
お・それ・みを
空で唄う男の話
追いかけられた男の話
七つの閨
夢男
蜘蛛
酒壜の中の手紙

胡桃園の青白き番人
司馬家崩壊
屋根裏の亡霊
R夫人の横顔
カナカナ姫
金箔師
窓は敲かれず
今宵一夜を
東方のヴィーナス
ある決闘
悪魔の誕生
魔女マレーザ
まがまがしい心
解説(日下三蔵)

『怪奇探偵小説名作選 4佐藤春夫集』

西班牙犬の家
指紋
月かげ
陳述
「オカアサン」
アダムス・ルックスが遺書
家常茶飯
痛ましい発見
時計のいたずら
黄昏の殺人
奇談
化物屋敷
山妖海異
のんしゃらん記録
小草の夢
マンディ・バナス
女人焚死
或るフェミニストの話
女誡扇綺譚
美しき町
探偵小説小論
探偵小説と芸術味
解説(日下三蔵)

『怪奇探偵小説名作選 5橘外男集』

令嬢エミーラの日記
聖コルソ島復讐奇譚
マトモッソ渓谷
怪人シプリアノ
女豹の博士
逗子物語
蒲団
生不動
幽魂賦
棺前結婚
解説(日下三蔵)



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