備忘の都

40年間の読書で得た偏った知識をツギハギしながら、偏った記事をまとめています。同好の士の参考に。

元ネタ探究 筋肉少女帯「最後の聖戦」

20170109最後の聖戦018
筋肉少女帯の曲を読み解くには、音楽の知識よりも読書の知識のほうが要求されます。
これから何回かにわたって、筆者なりに読み取った元ネタや歌詞の背景をご紹介していきます。
目指すのは詩の解釈ではなく、元ネタ探しです。大槻ケンヂの詩は、いったいどんな深い意味が込められているのかと思えば、単にお気に入りのネタを引用しているだけ、ということがよくあります。特に若いファンの方は、そのあたりについてゆけず、おかしな解釈をしているのを見かけるため、おせっかいながら、筆者が知っている範囲でご紹介しておこうと思った次第です。
大槻ケンヂ本人が、元ネタについて発言している部分もあれば、単に筆者が推測しているだけの部分もありますので、オーケン本人の発言がある場合はなるべく出典をメモしておこうと思います。

活動一時休止前の最後のアルバムからさかのぼっていきます。
そんなわけで、1回目は「最後の聖戦」から。

ジャケットを描いているのは漫画家の小林源文です。この人はミリタリー漫画の専門で、あまり普通のコミック誌では見かけません。アルバム「最後の聖戦」のジャケットは猫やウサギが戦っているイラストですが、これは「Cat Shit One」という漫画から。「Cat Shit One」はベトナム戦争を舞台にした本格的な戦争漫画ですが、登場するアメリカ人はウサギ、ベトナム人は猫として描かれています。イラストはこのアルバム用の描き下ろしのようです。

1.カーネーション・リインカネーション

輪廻転生は大槻ケンヂの作品に頻出するテーマですが、この曲もその一つ。
【猫をカン袋にさ つめ込んで】
服部良一が作詞した童謡「山寺の和尚さん」の歌詞から
 山寺の和尚さんが
 毬はけりたし 毬はなし
 猫をかん袋に 押し込んで
 ポンとけりゃ ニャンとなく
【猫とシュークリームを詰め替えて】
元ネタがあるのかわかりませんが、特撮の「ケテルピー」という曲に「猫かと思ってよく見りゃパン」という歌詞があり、同じような発想かな、と思います。
【ワトソン君】
言うまでもなく、シャーロック・ホームズの助手。このアルバムは全体的にホームズがテーマとなっており、各曲にホームズネタが散りばめられています。

2.トキハナツ

鬱状態のときの心境を歌ったものだそうです。身中に巣食う憂鬱を、飼い犬にたとえています。
【バスカービル家の犬】
ホームズの第3長編「バスカヴィル家の犬」から。闇夜に光り、人を襲う不気味な魔犬。「人生はねバスカービル家の犬だ」というまとめ方はちょっと意味がわかりませんが……

3.境目のない世界

【ネジ式】
つげ義春の漫画「ねじ式」が念頭にあると思われます。
【ルイス・キャロルとアリス】
言うまでもなく「不思議の国のアリス」のこと。
【ライナスと毛布】
スヌーピーで有名なアメリカのコミック「ピーナッツ」に出てくる少年ライナスがいつも抱いている毛布のこと。「ライナスの毛布」は心理学用語となっており、持っていると安心するお気に入りのもののことを言います。
【ホームズとパイプ】
ホームズネタ

4.お散歩ネコちゃん若き二人の恋結ぶ

作詞は「茉莉花」となっていますが、オーケンの詩集『花火』のあとがきによれば「テロリストの娘さん」とのことです。

6.友と学校

『花火』によれば、「実際にこんな状況があったのです」とのこと。

7.221B戦記

タイトルの「221B」は、ホームズのロンドンでの住所「ベイカー街221-B」から。
大槻ケンヂ以外に3人のボーカルが登場します。
水木一郎は言うまでもなく、アニメソングの帝王。神谷明は「北斗の拳」ケンシロウ役などで有名な声優。宮村優子は「新世紀エヴァンゲリオン」のアスカ役などで当時人気絶頂だった声優。
【フランダースの犬】
イギリスの作家ウィーダの児童向け小説を原作とした1975年のアニメ。「世界名作劇場」の枠では最高視聴率を記録したヒット作。悲劇的なラストシーンで知られています。
【こんないいお天気の日に】
中原中也の詩「別離」の一節「こんなに良いお天気の日に お別れしてゆくのかと思ふとほんとに辛い」からの引用思われます。この一節はデビューアルバム「仏陀L」の一曲「サンフランシスコ」でも引用されています。

8.タチムカウ

【人間の証明】
歌詞とは内容的にあまり関連がありませんが、森村誠一のベストセラー「人間の証明」と、それを映画化して大ヒットした角川映画が元ネタ。
【リンゴ売り窓の外】
井上陽水の曲「氷の世界」冒頭の一節「窓の外にはリンゴ売り」から。「氷の世界」は「筋少の大水銀」で筋少もカバーしています。
【なぁ兄弟?】
次曲「青ヒゲの兄弟の店」へつながる。
【一人一殺】
大槻ケンヂが意識したかわかりませんが、昭和初期に起こったテロリスト集団「血盟団」のスローガン。

10.山と渓谷

ここでも「ドーナツ」登場。6曲目「友と学校」に出てくるドーナツからの連想かと思います。

11.ペテン


『花火』によれば、この曲冒頭の「もう十分に君は苦しんだ 今から楽しめよ開放の鐘だ」は、バンド解散を決意しての歌詞とのこと。
【ペテン師】
「仏陀L」にも「ペテン師、新月の夜に死す!」という曲があります。乱歩の「ぺてん師と空気男」からの連想と思われます。
【ライヘンバッハの滝】
スイスにある滝。ホームズは短編「最後の事件」の中で、宿敵モリアーティ教授と対決し、ここの滝壺へ落下して死にます。コナン・ドイルはこれをもってホームズの物語を終了にするつもりでしたが、読者からの抗議が激しく、「空き家の冒険」で復活させます。実は「バリツ」という武術を使って教授に勝ち、生き延びていた、という話。
【死んじゃったと思ってた?】
上記、ホームズの復活を茶化しています。
【胎児よお前はなぜ踊る ママの夢わかって怖いのか?】
夢野久作『ドグラ・マグラ』の冒頭歌「胎児よ 胎児よ 何故躍る 母親の心がわかって おそろしいのか」から。
【ワルサーP38】
ルパン三世が使用したことで有名なドイツの拳銃。ここでは「インディ・ジョーンズ 最後の聖戦」に登場することから連想した可能性もあります。


最後の聖戦ツアー

なお、このアルバムの発表後に筋肉少女帯はツアーを行い、その模様はビデオで発売されました。
ツアータイトルは「最後の聖戦ツアー その後は養蜂と読書の日々」で、ビデオタイトルは「science fiction double feature 筋肉少女帯 Live & PV-clips」です。
【養蜂】
シャーロック・ホームズが引退後に養蜂家となったことから。これは「最後の挨拶」に出てくるエピソードです。今にして思えば、このツアータイトルから活動休止を予想すべきでした。(筆者は当時、全く何も気になりませんでした)
【science fiction double feature】
映画「ロッキー・ホラー・ショー」の冒頭の楽曲のタイトルから。「SF映画2本立て」という意味。

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江戸川乱歩入門 最終回 講談社「江戸川乱歩推理文庫」

さて、9回も続くとちっとも入門編ではない内容になってきましたが、最後に講談社が昭和62年から平成元年にかけて全65冊で刊行した「江戸川乱歩推理文庫」のご紹介をしましょう。
このシリーズは刊行されて数年で絶版となったため、古本屋で探すしかありません。
特色としては、完全な全集を目指していたことがあります。したがって、単行本未収録のエッセイ・評論なども収録されており、いまだに他の版では読めない文章がたくさんあります。もちろん、このシリーズの刊行後に発見された文章もありますし、児童向け作品は光文社版全集ほど完璧は目指していませんので、なにもかも収録されているというわけではありませんが。
乱歩が作家デビューする前、古本屋を経営していたときに「奇譚」という手作りの評論書を作って棚へ出したことあり、結局それは売れることなく乱歩の手元でずっと保管されていたのですが、そんなものまで全ページ写真複製で収録しています。
全体は大きく3つのパートに別れ、青帯=一般向け小説、赤帯=児童向け小説、緑帯=評論・エッセイとなっています。古本屋でも時々見かけますが、やはり他では読めない緑帯はかなりの値がついています。

筆者は、このシリーズの刊行が始まったとき、小学6年生で、まさに乱歩にドはまりしていた時期でした。したがって、全て揃えようと思えば揃えられるタイミングだったのですが、一歩先に刊行が始まっていた春陽文庫版で大人向け作品は揃えていたため、春陽文庫に未収録の作品のみ、江戸川乱歩推理文庫で買うということをしていました。今なら重複を厭わず全部揃えるのですが、小学生のこづかいでは、それは無理な相談でした。
というわけで、手元にあるのは赤帯、緑帯のみで、青帯は一冊だけ、リレー小説を収録した「畸形の天女」のみ購入しました。
前回同様、以下に目次を掲載しますが、手元にあるものだけの目次となります。
このシリーズも、巻末に著名人がエッセイを寄せており、こちらもなかなかの名文がたくさんありました。

書名 作品名 著者名
畸形の天女 畸形の天女 江戸川乱歩
畸形の天女 畸形の天女 大下宇陀児
畸形の天女 畸形の天女 角田喜久雄
畸形の天女 畸形の天女 木々高太郎
畸形の天女 五階の窓 江戸川乱歩
畸形の天女 江川蘭子 江戸川乱歩
畸形の天女 殺人迷路 江戸川乱歩
畸形の天女 黒い虹 江戸川乱歩
畸形の天女 女妖 江戸川乱歩
畸形の天女 悪霊物語 江戸川乱歩
畸形の天女 大江戸怪物団 江戸川乱歩
畸形の天女 二人の探偵小説家 江戸川乱歩
畸形の天女 解題 中島河太郎
畸形の天女 私にとっての江戸川乱歩 尾崎秀樹
怪人二十面相/少年探偵団 怪人二十面相 江戸川乱歩
怪人二十面相/少年探偵団 少年探偵団 江戸川乱歩
怪人二十面相/少年探偵団 解題 中島河太郎
怪人二十面相/少年探偵団 顔の大きな怪老人 安部譲二
妖怪博士/青銅の魔人 妖怪博士 江戸川乱歩
妖怪博士/青銅の魔人 青銅の魔人 江戸川乱歩
妖怪博士/青銅の魔人 解題 中島河太郎
妖怪博士/青銅の魔人 乱歩と私 斎藤栄
虎の牙/透明怪人 虎の牙 江戸川乱歩
虎の牙/透明怪人 透明怪人 江戸川乱歩
虎の牙/透明怪人 解題 中島河太郎
虎の牙/透明怪人 憧れのBDバッジ 中野翠
怪奇四十面相/宇宙怪人 怪奇四十面相 江戸川乱歩
怪奇四十面相/宇宙怪人 宇宙怪人 江戸川乱歩
怪奇四十面相/宇宙怪人 解題 中島河太郎
怪奇四十面相/宇宙怪人 凡庸な一読者からの感謝 田中芳樹
鉄塔の怪人/海底の魔術師 鉄塔の怪人 江戸川乱歩
鉄塔の怪人/海底の魔術師 海底の魔術師 江戸川乱歩
鉄塔の怪人/海底の魔術師 解題 中島河太郎
鉄塔の怪人/海底の魔術師 いざ翔ばん乱歩世界へ 内藤陳
灰色の巨人/魔法博士 灰色の巨人 江戸川乱歩
灰色の巨人/魔法博士 魔法博士 江戸川乱歩
灰色の巨人/魔法博士 解題 中島河太郎
灰色の巨人/魔法博士 悪のヒロインに憧れて 鳥井加南子
黄金豹/妖人ゴング 黄金豹 江戸川乱歩
黄金豹/妖人ゴング 妖人ゴング 江戸川乱歩
黄金豹/妖人ゴング 解題 中島河太郎
黄金豹/妖人ゴング 乱歩をめぐるプロトコール 竹本健治
魔法人形/サーカスの怪人 魔法人形 江戸川乱歩
魔法人形/サーカスの怪人 サーカスの怪人 江戸川乱歩
魔法人形/サーカスの怪人 解題 中島河太郎
魔法人形/サーカスの怪人 千鳥足の乱歩コース 中津文彦
奇面城の秘密/夜光人間 奇面城の秘密 江戸川乱歩
奇面城の秘密/夜光人間 夜行人形 江戸川乱歩
奇面城の秘密/夜光人間 解題 中島河太郎
奇面城の秘密/夜光人間 あの「透明人間」は夢だったのか 菊地秀行
塔上の奇術師/鉄人Q 塔上の奇術師 江戸川乱歩
塔上の奇術師/鉄人Q 鉄人Q 江戸川乱歩
塔上の奇術師/鉄人Q 解題 中島河太郎
塔上の奇術師/鉄人Q 理科室の魔人 岡嶋二人
仮面の恐怖王/電人M 仮面の恐怖王 江戸川乱歩
仮面の恐怖王/電人M 電人M 江戸川乱歩
仮面の恐怖王/電人M 解題 中島河太郎
仮面の恐怖王/電人M 乱歩が人生を変えた 大谷羊太郎
おれは二十面相だ/妖星人R おれは二十面相だ 江戸川乱歩
おれは二十面相だ/妖星人R 妖星人R 江戸川乱歩
おれは二十面相だ/妖星人R 解題 中島河太郎
おれは二十面相だ/妖星人R 思い出の図書室 石井敏弘
超人ニコラ/大金塊 超人ニコラ 江戸川乱歩
超人ニコラ/大金塊 大金塊 江戸川乱歩
超人ニコラ/大金塊 解題 中島河太郎
超人ニコラ/大金塊 乱歩と私 山村美紗
新宝島 新宝島 江戸川乱歩
新宝島 知恵の一太郎 江戸川乱歩
新宝島 赤いカブトムシ 江戸川乱歩
新宝島 解題 中島河太郎
新宝島 ランポ→亂歩→乱歩 泡坂妻夫
海外探偵小説作家と作品1 海外探偵小説作家と作品 江戸川乱歩
海外探偵小説作家と作品1 解題 中島河太郎
海外探偵小説作家と作品1 アニマ、アニムス 荒巻義雄
海外探偵小説作家と作品2 海外探偵小説作家と作品 江戸川乱歩
海外探偵小説作家と作品2 解題 中島河太郎
海外探偵小説作家と作品2 醒めたロマンチスト 石川喬司
海外探偵小説作家と作品3 海外探偵小説作家と作品 江戸川乱歩
海外探偵小説作家と作品3 解題 中島河太郎
海外探偵小説作家と作品3 隠れ乱歩、隠れ探偵 難波弘之
悪人志願 悪人志願 江戸川乱歩
悪人志願 解題 中島河太郎
悪人志願 乱歩と私 高柳芳夫
鬼の言葉 鬼の言葉 江戸川乱歩
鬼の言葉 幻影の城主 江戸川乱歩
鬼の言葉 解題 中島河太郎
鬼の言葉 十二階の空飛ぶ住人 島田荘司
探偵小説の謎 随筆 探偵小説 江戸川乱歩
探偵小説の謎 探偵小説の謎 江戸川乱歩
探偵小説の謎 解題 中島河太郎
探偵小説の謎 乱歩と私 藤本泉
幻影城 幻影城 江戸川乱歩
幻影城 解題 中島河太郎
幻影城 乱歩の囁き 山崎洋子
続・幻影城 続・幻影城 江戸川乱歩
続・幻影城 解題 中島河太郎
続・幻影城 脹らんだり、縮んだり 梶龍雄
探偵小説四十年1 探偵小説四十年 江戸川乱歩
探偵小説四十年1 解題 中島河太郎
探偵小説四十年1 乱歩と私 井沢元彦
探偵小説四十年2 探偵小説四十年 江戸川乱歩
探偵小説四十年2 解題 中島河太郎
探偵小説四十年2 『ランポを殺す会』 長井彬
探偵小説四十年3 探偵小説四十年 江戸川乱歩
探偵小説四十年3 解題 中島河太郎
探偵小説四十年3 鬼の側面 山村正夫
探偵小説四十年4 探偵小説四十年 江戸川乱歩
探偵小説四十年4 解題 中島河太郎
探偵小説四十年4 乱歩とわたし 東野圭吾
わが夢と真実 わが夢と真実 江戸川乱歩
わが夢と真実 解題 中島河太郎
わが夢と真実 初めて読んだ小説 横尾忠則
乱歩随想 乱歩随想 江戸川乱歩
乱歩随想 解題 中島河太郎
乱歩随想 すべては乱歩に始まる 戸川安宣
奇譚/獏の言葉 奇譚 江戸川乱歩
奇譚/獏の言葉 獏の言葉 江戸川乱歩
奇譚/獏の言葉 解題 中島河太郎
奇譚/獏の言葉 大先輩乱歩 川村二郎
うつし世は夢 うつし世は夢 江戸川乱歩
うつし世は夢 解題 中島河太郎
うつし世は夢 乱歩と私 渡辺啓助
蔵の中から 蔵の中から 江戸川乱歩
蔵の中から 解題 中島河太郎
蔵の中から 乱歩先生のこと 戸川昌子
幻影城通信 幻影城通信 江戸川乱歩
幻影城通信 解題 中島河太郎
幻影城通信 乱歩と夢と少年と 小峰元
子不語随筆 子不語随筆 江戸川乱歩
子不語随筆 解題 中島河太郎
子不語随筆 乱歩マジックについて 森真沙子
書簡 対談 座談 乱歩書簡集 横溝正史
書簡 対談 座談 探偵小説論争 江戸川乱歩
書簡 対談 座談 対談 座談 江戸川乱歩
書簡 対談 座談 解題 中島河太郎
書簡 対談 座談 亡父乱歩とユーモア 平井隆太郎
乱歩年譜著作目録集成 江戸川乱歩年譜 中島河太郎
乱歩年譜著作目録集成 江戸川乱歩著作目録 中島河太郎
乱歩年譜著作目録集成 解題 中島河太郎
乱歩年譜著作目録集成 乱歩と私 中島河太郎


なお、このシリーズの表紙絵は全て天野喜孝が描き下ろしていました。これを集めた画集も刊行されています。

天野喜孝 乱歩幻影画集
天野喜孝
復刊ドットコム
2012-03-17
(リンク先はAmazon)

関連記事:
江戸川乱歩入門 その1 名作短編集のおすすめ
江戸川乱歩入門 その2 明智小五郎事件簿
江戸川乱歩入門 その3 少年探偵団シリーズ
江戸川乱歩入門 その4 長編のおすすめ
江戸川乱歩入門 その5 創元推理文庫版
江戸川乱歩入門 その6 春陽文庫版(短編)
江戸川乱歩入門 その7 春陽文庫版(長編)
江戸川乱歩入門 その8 光文社文庫「江戸川乱歩全集」

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江戸川乱歩入門 その8 光文社文庫「江戸川乱歩全集」

今回は、光文社文庫版「江戸川乱歩全集」のご紹介です。
このシリーズは、生前最後の全集を底本とした創元推理文庫版とは対照的には、初出の表記にこだわっています。掲載順も発表順となっています。また、小説だけでなく、児童向け作品、エッセイ、評論に至るまで、収録して、本当の意味での全集を目指しています。
特筆すべきは、児童向け作品。初出の雑誌掲載のみで、これまで単行本へ収録されたことのなかった作品がいくつかありましたが、それらを漏れなく収録しています(といっても、雑誌「たのしい一年生」に掲載した「かいじん二十めんそう」とかですが)。
また、評論・エッセイについては生前に単行本としてまとまったものを収録しています。
というわけで、乱歩初心者がいきなりこれで読んでも構いませんが、初めから全作読破を目指す、上級者向けの全集だと思います。
収録作品は以下のとおりです。各巻末には現役ミステリ作家を中心に、著名な乱歩ファンがエッセイを寄稿しています。
(各書名からのリンク先はAmazon)

江戸川乱歩全集 第1巻 屋根裏の散歩者

二銭銅貨
一枚の切符
恐ろしき錯誤
二廢人
双生児
D坂の殺人事件
心理試験
黒手組
赤い部屋
日記帳
算盤が恋を語る話
幽霊
盗難
白昼夢
指環
夢遊病者の死
百面相役者
屋根裏の散歩者
一人二役
疑惑
人間椅子
接吻
解説(山前譲)
祖父と土蔵の思い出(平井憲太郎)

江戸川乱歩全集 第2巻 パノラマ島綺譚

闇に蠢く
湖畔亭事件
空気男
パノラマ島綺譚
一寸法師
解説(新保博久)
「江戸川乱歩」として生きた人の物語。(大林宣彦)

江戸川乱歩全集 第3巻 陰獣

踊る一寸法師
毒草
覆面の舞踏者
灰神楽
火星の運河
五階の窓
モノグラム
お勢登場
人でなしの恋
鏡地獄
木馬は廻る
空中紳士
陰獣
芋虫
解説(新保博久)
二十面相の墓(間村俊一)

江戸川乱歩全集 第4巻 孤島の鬼

孤島の鬼
猟奇の果
解説(新保博久)
深夜の田舎は恐怖一色で塗りつぶされた(横尾忠則)

江戸川乱歩全集 第5巻 押絵と旅する男

押絵と旅する男

蜘蛛男
盲獣
解説(山前譲)
乱歩は散歩(久世光彦)

江戸川乱歩全集 第6巻 魔術師

魔術師
吸血鬼
解説(山前譲)
D寺時代のこと(福島泰樹)

江戸川乱歩全集 第7巻 黄金仮面

何者
黄金仮面
江川蘭子
白髪鬼
解説(山前譲)
私と乱歩(青柳いづみこ)

江戸川乱歩全集 第8巻 目羅博士の不思議な犯罪

目羅博士の不思議な犯罪
地獄風景
恐怖王

火縄銃
殺人迷路
悪霊
妖虫
解説(新保博久)
生命の尊さを訴える(上野正彦)

江戸川乱歩全集 第9巻 黒蜥蜴

黒い虹
黒蜥蜴
人間豹
柘榴
解説(新保博久)
最も恐ろしいトリック(唐沢俊一)

江戸川乱歩全集 第10巻 大暗室

怪人二十面相
大暗室
解説(山前譲)
いつまでも特別な存在(瀬名秀明)

江戸川乱歩全集 第11巻 緑衣の鬼

緑衣の鬼
幽霊塔
解説(山前譲)
乱歩邸訪問の思い出(伊藤秀雄)

江戸川乱歩全集 第12巻 悪魔の紋章

少年探偵団
妖怪博士
悪魔の紋章
解説(新保博久)
二十面相に花束を(田中芳樹)

江戸川乱歩全集 第13巻 地獄の道化師

暗黒星
地獄の道化師
幽鬼の塔
大金塊
解説(山前譲)
西洋館の光と影(藤森照信)

江戸川乱歩全集 第14巻 新宝島

新宝島
智恵の一太郎
偉大なる夢
解説(山前譲)
幻の同居人(種村季弘)

江戸川乱歩全集 第15巻 三角館の恐怖

青銅の魔人
虎の牙
断崖
三角館の恐怖
解説(山前譲)

江戸川乱歩全集 第16巻 透明人間

透明人間
怪奇四十面相
宇宙怪人
畸形の天女
女妖
解説(新保博久)
世代を超えた稀有なシリーズ(井澤みよ子)

江戸川乱歩全集 第17巻 化人幻戯

鉄塔の怪人
兇器
悪霊物語
化人幻戯
海底の魔術師
解説(新保博久)
すれ違い(戸川安宣)

江戸川乱歩全集 第18巻 月と手袋

影男
月と手袋
灰色の巨人
黄金の虎
解説(新保博久)
そこにそれがあるというだけで怖いモノ(綾辻行人)

江戸川乱歩全集 第19巻 十字路

防空壕
大江戸怪物団
十字路
魔法博士
黄金豹
天空の魔人
解説(山前譲)
乱歩の墓(奥泉光)

江戸川乱歩全集 第20巻 堀越捜査一課長殿

堀越捜査一課長殿
妖人ゴング
魔法人形
サーカスの怪人
まほうやしき
赤いカブトムシ
二十面相の本名はなぜ明かされたのか(新保博久)
にわか少年探偵団、結成!(小泉武夫)

江戸川乱歩全集 第21巻 ふしぎな人

妻に失恋した男
秘中の秘
魔王殺人事件
奇面城の秘密
夜光人間
塔上の奇術師
ふしぎな人
かいじん二十めんそう
かいじん二十めんそう
解説(山前譲)
日本に乱歩がいてくれて本当によかった(恩田陸)

江戸川乱歩全集 第22巻 ペテン師と空気男

仮面の恐怖王
電人M
鉄人Q
ペテン師と空気男

桃源社版『江戸川乱歩全集』あとがき
解説(新保博久)
〈乱歩〉を生きた男──戦略的な、あまりに戦略的な(芦辺拓)

江戸川乱歩全集 第23巻 怪人と少年探偵

おれは二十面相だ!!
怪人と少年探偵
妖星人R
超人ニコラ
探偵小説の「謎」
解説(新保博久)
毒──密かな(花村萬月)

江戸川乱歩全集 第24巻 悪人志願

悪人志願
探偵小説十年
幻影の城主
乱歩断章
解説(山前譲)
読書の魔力にとりつかれた(堀江あき子)

江戸川乱歩全集 第25巻 鬼の言葉

鬼の言葉
探偵小説十五年
随筆探偵小説
解説(新保博久)
納戸のなかの乱歩(鬼海弘雄)

江戸川乱歩全集 第26巻 幻影城

幻影城
幻影城通信
類聚ベスト・テン
名古屋・井上良夫・探偵小説
少年の夢こそまこと(松山巖)

江戸川乱歩全集 第27巻 続・幻影城

続・幻影城
解説(新保博久)
嗚呼、乱歩さん(都筑道夫)

江戸川乱歩全集 第28巻 探偵小説四十年(上)

探偵小説四十年
解説(新保博久)
来れ好敵手(穂村弘)

江戸川乱歩全集 第29巻 探偵小説四十年(下)

探偵小説四十年
解説(山前譲)
夜と遊んだ日(朱川湊人)

江戸川乱歩全集 第30巻 わが夢と真実

わが夢と真実
海外探偵小説作家と作品
解説(山前譲)
屋根裏と影のいきもののこと(勝本みつる)

『亜智一郎の恐慌』の亜愛一郎ネタ探し

亜愛一郎のご先祖様を思わせる亜智一郎が活躍する『亜智一郎の恐慌』という短編集があります。この中に現れている亜愛一郎ネタを気づいた分だけ拾ってみます。
ちなみに、泡坂妻夫の別シリーズのネタもちょこちょこと書かれていますが、今回はそれは省略し、亜愛一郎シリーズとリンクするネタに限ります。リンク先は当ブログ「亜愛一郎辞典」の該当項目です。

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雲見番 → 亜愛一郎は雲や昆虫を主な専門としているカメラマン。(雲見番拝命)
緋熊重太郎 → 緋熊五郎 (雲見番拝命)
経師屋橋之助 → 経師屋橋之助 (雲見番拝命)
宮前座 → 宮前市 (雲見番拝命)
地震 → 『亜愛一郎の狼狽』第一話「DL2号機事件」は宮前市を襲った大地震の話題で始まる。(雲見番拝命)
藻湖猛蔵 → 藻湖刑事 (雲見番拝命)
鈴木正團 → 鈴木正麻呂 (雲見番拝命)
古山奈津之助 → 古山奈津 (雲見番拝命)
普賢菩薩 → 古山奈津の背中には普賢菩薩の刺青があった。(雲見番拝命)
耳成新兵衛 → 耳成 (地震時計)
「ふつ」の字紋 → 最終話「亜愛一郎の逃亡」に登場する「フツ国」の紋章と同じ。(地震時計)
有江屋 → 有江屋 (地震時計)
桝金 → 桝銀 (ばら印籠)
上岡菊敬 → 上岡きくけこ (薩摩の尼僧)
「歩いてしなしなしている亜」 → 最終話「亜愛一郎の逃亡」に「歩いている亜」「歩いて寝ている亜」など大量の回文が登場する。(大奥の曝頭)

読んでいるあいだは、もっとたくさんのネタが登場していたように感じましたが、改めてまとめてみるとそれほどでもないですね。
『泡坂妻夫引退公演』に収録された「亜智一郎」ものについては、後日またまとめてみます。

江戸川乱歩入門 その7 春陽文庫版(長編)

昨日ご紹介した短編集に引き続き、長編の収録作品をご紹介します。
春陽文庫版「江戸川乱歩文庫」について、短編集9冊は「江戸川乱歩名作集」というタイトルで刊行されていたということを書きましたが、長編については以前に「江戸川乱歩長編全集」というタイトルで出ていました。この時は全20冊で、「三角館の恐怖」だけはこの全集に含まれず、独立して発行されていました。
この名残で、「江戸川乱歩文庫」として装いをあらためても、「三角館の恐怖」だけは2段組、他は1段組と、ちぐはぐな版面になっており、この辺がいかにも春陽文庫らしいところです。

収録作品は、以下のとおりです。

『孤島の鬼』
 孤島の鬼

『蜘蛛男』
 蜘蛛男

『魔術師』
 魔術師

『猟奇の果』
 猟奇の果

『黄金仮面』
 黄金仮面

『吸血鬼』
 吸血鬼

『白髪鬼』
 白髪鬼

『妖虫』
 妖虫

『人間豹』
 人間豹

『黒蜥蜴』
 黒蜥蜴
 湖畔亭事件

『緑衣の鬼』
 緑衣の鬼

『大暗室』
 大暗室

『悪魔の紋章』
 悪魔の紋章

『幽霊塔』
 幽霊塔

『地獄の道化師』
 地獄の道化師
 一寸法師

『暗黒星』
 暗黒星
 闇に蠢く

『幽鬼の塔』
 幽鬼の塔
 恐怖王

『化人幻戯』
 化人幻戯

『影男』
 影男

『十字路』
 十字路
 盲獣

『三角館の恐怖』
 三角館の恐怖

なお、最後に、春陽文庫版の表紙を飾っているのは多賀新の銅版画ですが、画集も刊行されています。春陽文庫版のファンは、こちらもおすすめです。(新版が出ました)

江戸川乱歩 幻想と猟奇の世界
多賀 新
春陽堂書店
2018-04-05

(リンク先はAmazon)


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筆者:squibbon
幼稚園児の頃から40を過ぎた現在に至るまで読書が趣味。学生時代は読書系のサークルに所属し、現在も出版業界の片隅で禄を食んでいます。
好きな作家:江戸川乱歩、横溝正史、都筑道夫、泡坂妻夫、筒井康隆、山田風太郎、吉村昭。好きな音楽:筋肉少女帯、中島みゆき。好きな映画:笠原和夫、黒澤明、野村芳太郎、クエンティン・タランティーノ、ティム・バートン、スティーヴン・スピルバーグ、デヴィッド・フィンチャー。
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