備忘の都

40年間の読書で得た偏った知識をツギハギしながら、偏った記事をまとめています。同好の士の参考に。

小説新潮五月臨時増刊 ミステリー大全集「昭和名作推理小説」(平成元年5月)


昭和名作推理小説015

手元に中学生の頃からずっと宝物のように大事にしている一冊の雑誌があります。
小説新潮の臨時増刊として平成元年春に発行された「昭和名作推理小説」という本です。
昭和が終わったタイミングで、「江戸川乱歩から逢坂剛まで昭和の名作短編40」と銘打って刊行されました。
当時は個人的には乱歩を読み尽くし、横溝ブームの真っ最中という状態でしたが、新聞に掲載された広告にポツポツと「聞いたことがあるな」という作家名があったため買ってきたのでした。
それからしばらくは、ずっと貪るように読んでいました。
中学生というタイミングで読んだということもあるかと思いますが、やはり今になって振り返っても、このラインナップはすごすぎます。ミステリ初心者がガツンとやられるのも無理はありません。
ネットで検索してみましたが、この本の目次はヒットしませんので、ここで収録作品を紹介しておきましょう。(星印はこの特集のための書き下ろしエッセイ)

渡辺温
夜の街 城昌幸
死後の恋 夢野久作
押絵と旅する男 江戸川乱歩
殺された天一坊 浜尾四郎
絶景万国博覧会 小栗虫太郎
悪魔の指 渡辺啓助
かいやぐら物語 横溝正史
五人の子供 角田喜久雄
骨仏 久生十蘭
天狗 大坪砂男
原子病患者 高木彬光
張込み 松本清張
落ちる 多岐川恭
作並 島田一男
白い密室 鮎川哲也
吉備津の釜 日影丈吉
案山子 水上勉
十五年は長すぎる 笹沢佐保
葬式紳士 結城昌治
死火山の灰 黒岩重吾
敵討ち 山田風太郎
犯罪講師 天藤真
ナポレオンの遺髪 三好徹
雪どけ 戸川昌子
やさしい密告者 生島治郎
神獣の爪 陳舜臣
山のふところに 仁木悦子
科学的管理法殺人事件 森村誠一
盲目物語 土屋隆夫
人形の家 都筑道夫
特急夕月 夏樹静子
雲雀はなぜ殺された 日下圭介
復讐は彼女に 小泉喜美子
紳士の園 泡坂妻夫
菊の塵 連城三紀彦
無邪気な女 阿刀田高
遠い国から来た男 逢坂剛
糸ノコとジグザグ 島田荘司
気まぐれな鏡 佐野洋
三冊の文庫本 青柳友子
「ピエールとリュース」と「また逢う日まで」 赤川次郎
パンダ狂騒曲 井沢元彦
なりたくて 内田康夫
ヘアリキッドの匂い 大沢在昌
「義」のために 笠井潔
まぼろしの土地 菊村到
色川さん、大好き 黒川博行
鶴見事故 小池真理子
ダーティな美学 河野典生
英雄の最期 小杉健治
三浦和義の溜息 小林久三
わたしの高橋和己 佐々木譲
だれかのために死ねますか? 志水辰夫
納豆の食べ方 高橋克彦
青いペンキを地球に塗って 多島斗志之
二つの戦争体験 伴野朗
逆しま 中井英夫
九時間の落差 楢山芙二夫
熱血って何 乃南アサ
昭和三十八年の夏 原尞
新人類ではない 東野圭吾
パリゴロ 藤田宜永
ダニエル・リペス 船戸与一
明るい東京 三浦浩
鉄道少年とサヨナラした日 本岡類
あの夕焼け/洞爺丸台風の襲った日 森真沙子
女の時代・幕開けの闇 山崎洋子
巨匠との出会い 山村正夫
千年の長さ 由良三郎
「名作」の基準 長谷部史親

「落ちる」「葬式紳士」「紳士の園」「無邪気な女」「糸ノコとジグザグ」……最も衝撃を受けたのはこの辺ですが、これらすべて、タイトルを知らなかったのはもちろん、多岐川恭、結城昌治、泡坂妻夫、阿刀田高、島田荘司という作家で初めて読んだ作品ということになりました。
エッセイの方も、笠井潔、原尞、中井英夫など、錚々たる顔ぶれがそれぞれに印象的な一文を寄せており、何も知らない中学生に、いきなりこんなものを読ませちゃいけない、というレベルの内容です。
その後、新潮文庫からはこの特集がもとになったと思われる「昭和ミステリー大全集」という全3冊のアンソロジーが刊行されましたが、ラインナップが変わってしまったうえ、エッセイも収録されておらず、がっかりしたものです。
ページは全て茶色くなってしまいましたが、死ぬまで処分できない一冊です。

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昭和天皇の驚きエピソード――「あっそう」に込められた意味

20170402昭和天皇062

筆者は昭和史に興味を持つより先に、昭和天皇のファン(?)として昭和天皇について書かれた本を読みあさっていた時期があります。
読み物として非常に面白いものがたくさんあり、読書好きにとっては金脈の一つだと思っていますが、今回は本の紹介ではなく、本を読む中で知った、昭和天皇のエピソードをいくつかご紹介したいと思います。

記憶の王

(リンク先はAmazon)
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松本健一は昭和天皇について書かれた著書をいくつか遺していますが、その中で昭和天皇のことを「記憶の王」と呼んでいます。
昭和天皇の記憶力が異常に良かったということは、側近たちの日記などいくつもの史料から確認することができるそうで、『昭和天皇伝説』『畏るべき昭和天皇』のなかでは、昭和天皇の記憶にまつわるさまざまなエピソードが紹介されています。
また、昭和天皇の口癖として「あ、そう」という言葉がよく知られています。
園遊会などの様子をテレビで見ると「あっそう」を連発していたものですが、松本健一は、この口癖と、異常な記憶力とは、いずれも昭和天皇が伝統的な天皇のあるべき姿に忠実であろうとした結果だと分析しています。

どういうことか。

明治維新後の統治権・統帥権を総攬する国家元首としての天皇は、古代から続く天皇の歴史においては異例なもので、むしろ戦後の象徴天皇のほうが、伝統的な天皇の姿に近いというのは、よく言われることです。
では、「伝統的な天皇の役割」とは、いったい何か。
松本健一によれば、それは日本という国を「知ろしめす」ことでした。
「日本のあらゆる土地から入ってくる情報を、いわば『あ、そう』と受け入れる存在が天皇であった」(『畏るべき昭和天皇』より)
日本にまつわるあらゆることを知っておくこと。国家のための祭祀を司る存在として、それこそが天皇の最も重要な仕事であったのです。
幕末の勤王家・高山彦九郎が詠んだ
「われを吾としろしめすとや皇のたまのみこえのかかるうれしさ」
という歌には、その天皇の役割がずばり読み込まれていますが、昭和天皇は「あ、そう」と受け入れた情報を、しっかりと記憶し続けることで、伝統的な天皇たらんとしていたのでは、ということです。

天皇晴れ

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紹介する本を間違えているのでは、と思われるかもしれませんが、間違えていません。怪談を集めたこの本にも仰天エピソードが載っています。
昭和天皇は「究極の晴れ男」として知られていました。そのことが詳細に書かれているのです。
例えば……
・札幌オリンピックの開会式の日には、朝から小雪がちらついていたものの、開会式直前には空が明るくなり、天皇が会場についた途端、まぶしいくらいに日がさした。
・昭和46年の訪欧の際には、前日に関東へ台風が上陸し、日程への影響が危ぶまれたが、当日は台風一過の快晴となった。
・さらに、アンカレッジへ到着すると、晴れているばかりでなく、みごとなオーロラが現れた。
・ロンドンの到着すると長く降り続いた雨がやみ、「テムズ川の川霧が消えた。空がしみるように青い」と当時報道された。
・一方、日本は天皇が飛び立ってから記録的な長雨が続き、天皇が帰国する日は台風が関東へ接近して横殴りの雨となり、空港は滑走路も見えないほどだった。ところが、着陸直前に雨はやみ、用意された傘が使われることはなかった。台風は進路を変えて去っていった。
・翌年のアメリカ訪問時にも同様の現象が起こった。
ということで、まさに「神がかっている」としか言いようのない晴れ男ぶりです。

そして、この昭和天皇の晴れ男伝説にトドメを刺すのが、大喪の礼でした。
昭和生まれの人は、この時テレビに映った大雨をよく覚えているでしょう。
今上陛下のさす傘がものすごくきれいに水を弾いていて、さすが天皇の傘は違うものだと、当時中学生だった筆者は感嘆したものですが、あの雨は、究極の晴れ男であった昭和天皇を悼むものだったのです。

東京大空襲の視察

昭和の劇―映画脚本家・笠原和夫
笠原 和夫
(リンク先はAmazon)


ここまでは、神がかったエピソードばかり紹介しましたが、最後は昭和天皇の人間としての一面をうかがい知るエピソードです。
昭和20年3月18日、昭和天皇は東京大空襲の罹災地域を視察します。
一面の焼け野原を、軍服に身を固めた昭和天皇がお付の者を従えて徒歩で視察する姿は写真でもよく知られています。
この行動に対しては、現在に至るも「のんきだ」という批判がありますが、笠原和夫は『昭和の劇』の中で全く違った解釈をしています。

側近たちは皆、この視察に反対したが、昭和天皇の強い希望によって視察は決行された。アメリカの偵察機が上空をブンブンと飛び回る時期であり、もし見つかれば機銃掃射を受けるのは目に見えている。にもかかわらず、当初十数分程度で終えるはずだった視察は、1時間近くにも及び、その間に自動車から降りて歩きまわることまでしている。
これは、昭和天皇が撃たれて死ぬことを望んでいたからではないか? そのような決意のもとに行われた視察だったのではないか?
笠原和夫以外に、このような分析をしている文章を読んだことがなく、また、この発言の出典についても触れられていません。したがって、本当なのかどうかは全くわかりません。
しかし、昭和天皇の内面にも人間的なドラマがあったはずです。それを知ることで、昭和史の見え方もまた変わってくるのではないか。そんなことを考えさせられたエピソードです。

ちなみに、この視察のあいだ、東京上空には一機も現れることはなく、笠原和夫によれば、昭和天皇は「ガッカリして」宮城へ帰ってきたそうです。
ここでもまた、昭和天皇の晴れ男ぶりが発揮されてしまっていたのではないか。そんな気もします。

関連記事:
能條純一『昭和天皇物語』解説

元ネタ探求 筋肉少女帯「仏陀L」

20170120仏陀L030

メジャーデビューアルバムです。

1.モーレツア太郎

赤塚不二夫のギャグ漫画「もーれつア太郎」から。なぜ、もーれつア太郎が登場しているのかは、筆者にはいまだにわかりません。

2.釈迦

インディーズ時代から少しずつ歌詞を変えて歌われている曲。アンテナ売り、脳髄など、筋少に頻出のモチーフが詰まっています。「脳髄」は夢野久作の「ドグラ・マグラ」ほか諸作からの連想かと思われます。

3.福耳の子供

最後の方にボソボソと聞こえる女性の声が、アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」に登場する綾波レイの喋り方のヒントになっているそうです。ちなみに、綾波レイの見た目は「何処へでも行ける切手」の「包帯で真っ白な少女」です。

4.オレンヂ・エビス

インディーズ時代の原曲は「オレンヂペニス」というタイトルでした。
【ラッシャー木村】【ストロング小林】【ロッキー羽田】【ジョー樋口】【ミスター林】
プロレスラー。
【マキ上田】
女子プロレスラー。
【ラジャ・ライオン】
空手家。
【ダイバダッタ】
釈迦仏の弟子で、後に違背したとされる人。(Wikipediaより)。

5.孤島の鬼

タイトルは乱歩の長編「孤島の鬼」から。内容的には特に関係ありません。インディーズ時代の原曲は「から笑う孤島の鬼」というタイトルでした。また、「孤島の檻」という自主制作盤も作っています。
【金のなる木の あるじゃなし】
クレイジー・キャッツの曲「ハイそれまでヨ」に「金のなる木があるじゃなし」という一節がありますが、元ネタなのかどうかはわかりません。大槻ケンヂはドリフターズの話はよくしていても、クレイジー・キャッツの話は見かけた覚えがありません。(桑田佳祐が歌っていたら、間違いなく元ネタなんですが)

6.サンフランシスコ

【さようなら さようなら こんなに遠い異国の果てでお別れするなんて 本当に辛い】
中原中也の詩「別離」の一節「さよなら、さよなら! こんなに良いお天気の日に お別れしてゆくのかと思ふとほんとに辛い」から。
【空気女】
乱歩の中編「ぺてん師と空気男」からの連想かと思います。乱歩の短編の空気男は単にそういうあだ名の男ですが、「空気女」は「蛇女」のようにサーカスで見世物になる存在のようです。

8.ノーマン・ベイツ

ヒッチコックの名作サスペンス映画「サイコ」の登場人物。筋少のファンクラブも「ノーマン・ベイツ」という名前でした。ただ、オーケンがそこまで「サイコ」に思い入れがあるという文章も読んだ覚えがないのですが。

9.ペテン師、新月の夜に死す!

【ペテン師】
空気女と同じく、乱歩の「ぺてん師と空気男」からの連想かと思います。意図せずして、活動休止前最後のアルバム「最後の聖戦」の最後の曲「ペテン」と対の内容になっています。

さて、このアルバムとほぼ同時に「釈迦」のプロモーションビデオを納めたVHS「KIN-SHOWの大残酷」も発売されています。現在、DVDにもなっていますが、この「釈迦」PVは映画「悪魔のいけにえ」のパロディになっていて、これは必見です。個人的に「悪魔のいけにえ」の殺人鬼レザーフェイスが、殴り殺した死体を部屋へひきづりこんで、慌てたようすで扉を閉めている仕草が好きなのですが、そこを忠実に再現していてかなり笑いました。


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『鼻行類』『偽書百選』……「嘘本」とは何か?

20170401鼻行類063

学術書やノンフィクションなど、小説以外の本には、本当のことしか書いてないはず。
一般的にはそう信じられていますが、中にはデタラメな嘘ばかり書いた本もあるので、要注意。
今回は小説とは一味違う、嘘本の世界をご紹介します。

鼻行類



まずは、鼻行類。
わざわざご紹介するまでもなく、変な本が好きな人のあいだではよく知られています。
筆者が本書を知ったのは、学生時代でした。
友人が持っている本の表紙に描かれた奇妙な生き物に釘づけになり、何の本なのか尋ねると、生物学の教科書とのこと。
開いてみると、たしかに「鼻行類」という生物についての観察図や解剖図など、学術書の体裁です。版元は思索社。訳者は京大の生物学者。
内容は、南太平洋の孤島で、鼻で歩いたり、狩をしたりする新しい哺乳類が発見されたものの、フランスの核実験により、その島は消滅し、その生き物も絶滅した、というもの。なんとなんと。
この友人が、本気で教科書だと思っていたのか、それとも単に筆者をからかっただけなのか、これが未だに謎なのですが、ともかく、筆者はまるきり信じ込んでしまい、「こんな変な哺乳類が存在したとは!」とえらく興奮し、先輩にこの本のことを話すと「お前はアホか」と、鼻行類が有名な嘘本であることを教えられました。
嘘だとわかったらわかったで、ますますこの本に愛着が湧きました。
その時点ではすでに思索社版は絶版となっており、ちょうど博品社から新版が出ていたため、私はそちらを購入しました。
じっくり読むと、本当によくできた本です。「フィクションである」ということは本のどこを探しても一切書かれておらず、ただひたすら鼻行類の生態について淡々とした記述が続くのですが、どれもこれも、あまりにふざけすぎ。奇想天外の極みのような内容です。
今は平凡社ライブラリーで版を重ねていますが、惜しむらくは解説でフィクションであることに触れています。できれば平凡社版でも嘘を突き通してほしかったものです。

偽書百選



個人的に、『鼻行類』と双璧をなすと思っているのが本書です。
無類の古書コレクターである垣芝折多氏が、明治から昭和にかけて刊行された珍本を紹介している内容なのですが、これまた、どれもこれもとんでもなく奇妙な本ばかり。
種を明かせば、実はこれが全て評論家・松山巖の創作なのです。何やってんだ、この人、と思わざるをえない、本当にふざけた内容。
「週刊文春」に連載中は、フィクションであるとは明記されていなかったため、紹介された本に対する問い合わせが殺到したそうです。
個人的に最も感心したのは「肉世國」というポルノ小説。「ニクヨクニ」。そう、回文。
読みづらい性描写が延々続く本文が引用されているのですが、これが全体で回文になっているという……。
とても週刊連載の一コラムとは思えない、大変な労作なのです。この章だけでも、松山巖の名は書物の歴史に永遠に刻まれる価値があります。
他にも馬鹿げた本、ふざけた本、しかし全ていかにもあり得そうな本ばかりが、写真やイラストをふんだんに交えて紹介されています。
こんな本が本当に刊行されている世界に生まれたかった、とまで思ってしまいます。
初版の単行本では松山巖は解説を書いているのみで、奥付の著者名も垣芝折多となっていました。
こんなすごい本が初刷のみで絶版だなんて……

秘密の動物誌

秘密の動物誌 (ちくま学芸文庫)
ジョアン フォンクベルタ


初版の装丁は、祖父江慎が担当していて、その点でも個人的にはお気に入りの本ですが、今は文庫で読むことができます。
ちくま文庫ではなく、学芸文庫というあたりが筑摩書房のセンスの良いところですが、本書は鼻行類と同じく、架空の動物誌です。
ただし、鼻行類ほど専門書然とはしておらず、そのかわり、各ページに写真が満載です。この写真がすごい。
発光する象。走る魚。下半身が馬、上半身が猿の「ケンタウルス」……
どれもリアルな写真でギョッとしますが、著者はアーティスト。
日本のクラフト・エヴィング商會のように、架空のものを作っている人で、本書ももともとは展覧会の図録として作ったそうです。
ほかにもソ連が秘密裏に打ち上げたロケットにまつわる記録『スプートニク』などの著書があります。この本の表紙に写っている宇宙飛行士は著者本人。
スプートニク
ジョアン フォンクベルタ

コリン・マッケンジー物語

コリン・マッケンジー物語
デレク・A. スミシー


「ロード・オブ・ザ・リング」の監督ピーター・ジャクソンが製作したモキュメンタリー「光と闇の伝説 コリン・マッケンジー」を書籍化したもの。
ピーター・ジャクソンは映画産業不毛の地であったニュージーランドを、一代で映画王国にした偉人で、「ロード・オブ・ザ・リング」の撮影前から、祖国では英雄扱いでした。
その頃にテレビ放映したのが、本書の元となった「光と闇の伝説」です。
世界初の映画監督コリン・マッケンジーは、実はニュージーランド人だった……という話。
世界初の短編映画、世界初のトーキー映画、これらは世間では知られていませんが、全てニュージランドの天才映画監督が生み出していたのです。
番組の最後には、ニュージランドの山奥に分け入ったピーター・ジャクソン一行が、コリン・マッケンジーの作り出した巨大な映画セットの廃墟を発見します。
番組中ではフィクションであることが全く触れられていなかったため、テレビ放映後には、「ニュージーランド、すげえ」と大反響。しかし、その後に種が明かされ、さらに大騒ぎになったと伝わっています。
とはいえ、これまた内容的にはふざけています。世界初のトーキー映画はカンフー映画で、リアリズムを重んじるマッケンジー監督は全編を中国語で撮影したため、せっかくのトーキーなのに誰もセリフを聞き取れなかった……というようなエピソードばかり。
「光と闇の伝説 コリン・マッケンジー」はVHSでは発売されましたが、DVDは未だに発売されていません。空前のピーター・ジャクソンブームの頃にも出なかったので、たぶんもう出ないでしょう。筆者はアメリカ版のDVDを持っています。

八上康司

八上康司
森川 史則
三一書房


さて、ここまではほのぼのした本ばかりご紹介してきましたが、最後は血まみれ。
「1999年10月に池袋から渋谷にかけて一晩で119人が殺害された連続通り魔事件の犯人・八上康司に関する実録」なのですが、もちろん我々にはそんな事件の記憶はありません。
そういうのは、単に「小説」というのではないか、と言われそうですが、これがかなり高いレベルでノンフィクションとしての体裁を整えています。帯には「2001年度異常犯罪研究賞受賞」だとか、雑誌に掲載された書評の抜粋などが刷られています。文章もいかにも犯罪実録の雰囲気で、巻末には初出の掲載誌まであります。奥付をめっくた、本当に最後のページにだけ、「本書の内容はすべて虚構である」と書いてあるが、それ以外は、どこからどう見ても完全にノンフィクション。
しかも、こんな凄まじい内容の本なのに、著者は若い! 著者の略歴が嘘でないならば、25歳でこんな本を書いています。それが一番衝撃かもしれません
しかし、その後、この著者の本を目にすることはありません。全てが謎に包まれた本です。
それにしても、一晩で119人って。

謎といえば、筆者は確かにこの本を購入し、本棚に並べていたのですが、いつどこへ行ったしまったものやら、この記事を書くために探したのに、全く見当たりません。こんな本を売ってしまうわけないんだけどなあ。なおかつ、当時作成していた蔵書目録にも登録がありません。
仕方なく、この記事は10年以上前に別のところで書いた文章をもとにこの記事を書きましたが、本当にどこへしまってしまったのか。謎です。

元ネタ探求 筋肉少女帯「SISTER STRAWBERRY」

20170119sister029

2枚めのアルバム。この頃はインディーズ時代に発表した曲の再録が多めです。インディーズ時代初期からのメンバーである三柴理(三柴江戸蔵)が正式メンバーだった最後のアルバムです。とはいえ、その後もサポートとして頻繁に参加していますが。。

1.マタンゴ

初期の筋少の代表作。インディーズ時代に原曲を発表しています。三柴理の超絶演奏を堪能できる一曲。
【マタンゴ】
1963年の東宝映画。本多猪四郎監督・円谷英二特技監督ということで特撮映画ファンにはカルト的な人気があります。無人島に漂着した男女が次々とキノコ人間に変身していくという怪奇映画。
【呪いの館】【タマミ】
楳図かずおのホラー漫画「赤んぼう少女」に登場する化け物が「タマミ」。「赤んぼう少女」は最初に単行本となったとき「のろいの館」というタイトルでした。
映画「マタンゴ」と漫画「赤んぼう少女」とは、全く関係なく、モチーフの共通点すらなく、それぞれに熱心なファンを持っている作品ですが、なぜか大槻ケンヂが歌うと説得力抜群に同じ世界にぶち込まれてしまいます。。

3.夜歩く

横溝正史の金田一耕助シリーズ第3長編「夜歩く」からタイトルを借りていると思われます。これも怪奇趣味はあるもののガッツリした本格で、この曲とは内容的に全く関係ありません。
非常に美しい曲で個人的には大好きです。。

5.ララミー

インディーズ時代に原曲を発表。「コンビニエンスストアー」が「ファミリーマート」、「なすがままにされてしまった」が「陵辱されてしまった」など、いろいろと放送禁止な部分に手を入れています。。

6.いくじなし

ライブのたびに即興で詩が変わるため、いろいろなバージョンがあります。
【アンテナ売り】
「釈迦」にも出てきました。
【脳髄】
これまた、「釈迦」にも登場。というか、そもそもインディーズでのデビューレコードのタイトルが「とろろの脳髄伝説」でした。この単語にこだわっているのは、「ドグラ・マグラ」の影響では、と推測します。


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筆者:squibbon
幼稚園児の頃から40を過ぎた現在に至るまで読書が趣味。学生時代は読書系のサークルに所属し、現在も出版業界の片隅で禄を食んでいます。
好きな作家:江戸川乱歩、横溝正史、都筑道夫、泡坂妻夫、筒井康隆、山田風太郎、吉村昭。好きな音楽:筋肉少女帯、中島みゆき。好きな映画:笠原和夫、黒澤明、野村芳太郎、クエンティン・タランティーノ、ティム・バートン、スティーヴン・スピルバーグ、デヴィッド・フィンチャー。
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