備忘の都

40年間の読書で得た偏った知識をツギハギしながら、偏った記事をまとめています。同好の士の参考に。

みすず書房「日本の精神鑑定」読了

日本の精神鑑定

ウワサを聞いて、一度読んでみたかったみすず書房「日本の精神鑑定 増補新版」。
昭和から平成初期にかけて発生した歴史的事件についての精神鑑定を集めた本です。
収録された事件は以下の通り。(リンク先は該当事件のWikipedia記事です)
犯罪史に残る大きな事件がずらっと並んでいます。
ほとんどの事件が、実際の裁判に提出された精神鑑定書そのものを収録しています。
これが、素人が読んでも面白い。
基本的には論文のような硬く正確な記述ですが、場合によってはなかなか文学的に仕上げられていたりもします。
本書自体は出版社がみすず書房であることからもわかる通り、刑法、精神医学、心理学などの研究者向けにまとめられた専門書なのですが、私のような単なる犯罪ノンフィクション好きが手を出してもかなり興味深い一冊となっています。

なかでも、やはり一読の価値があるのは阿部定、金閣寺、永山則夫あたりでしょうか。
いずれも供述が一問一答で並んでいたり、詳細な犯罪事実が綴られていたりで、生々しい内容です。
阿部定は、犯罪事実は概ね映画などで描かれているとおりですが、すべての行動には一応、説明がつく事情があり、意外とマトモな精神状態だったと知りました。
一方の金閣寺は、「金閣寺の美しさに嫉妬した」といった文学的な解釈は本人の供述で明確に「いいえ」と否定され、随分とだらしない即物的な動機が語られています。

というわけで、事件関係者に対しては不謹慎ではありますが、読み物として抜群の面白さです。
しかし、これが高い!
もともと昭和48年に刊行された「日本の精神鑑定」という本があり、平成11年に刊行された「現代の精神鑑定」と合本にして今回の「日本の精神鑑定 増補新版」となっています。
専門書2冊分のボリュームなので1200ページ以上と非常に分厚く、価格は税込み19800円也。

実は私は自分では買わず、図書館で借りました。
ところが、住んでいる市には図書館には10館くらいあるにも関わらず、どこにもこれが所蔵されていなかったんですね。
そこで、購入してもらうべくリクエスト。3ヶ月くらい待ってようやく用意できたと連絡をもらえました。
こんなにも予算を使わせて申し訳ないという気分と、いやいや人口100万人を超える市の図書館がこれを一冊も蔵書してないってのはあかんやろ、と逆に良い事をしたような気分とがせめぎ合ってますが、せっかく買ってもらったからにはちゃんと読もうと、10日間ほどかけて頑張って読みました。


学習漫画「日本の歴史」買うならオススメはこれ!【2021年最新情報】人気5大シリーズ+αを比較

小学館日本の歴史

最終更新日:2021年6月22日

はじめに

日本の歴史をマンガで学べる学習漫画。あちこちからシリーズが出ています。
わが家でも小学生の息子に買ってやるため、果たしてどれを買えばよいのか、各社版の特色を調べてみました。

現在、書店に並んでいる日本史の学習まんがのうち、特に人気があるのは小学館、集英社、角川、学研、講談社の5社です。
なお、掲載している情報は改訂されたり新刊が追加されたりで、価格やセット内容など随時変わってきます。なるべくフォローするようにしていますが、最新情報はリンク先のAmazonで確認していただければと思います。



これらのシリーズは一冊ずつバラバラでも買えますが、どうせなら箱入りセットで買うことをおすすめします。


というのは、時期によって異なるのですが、セットで買うと特別価格になったり、セットだけに限定の付録がついていたりするためです。家庭での保管にも箱に入っていたほうが何かと楽です。
筆者としては、書店でバラ売りをしているのは「内容確認のための見本」で、買うならセットが当然、と思っています。
また、小学生の親御さんの中には「うちの子は歴史にはあんまり興味ないかな……」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、それは大丈夫です。
中学生・高校生になったら高校受験・大学受験のために確実に読みます。また、この記事で紹介するシリーズは、いずれも率直に言って大学受験対策までカバーできます。大学受験で出題される日本史というものは、本格的な歴史好きからしたら基本中の基本のことばかりなんで、子ども向けとはいえ、この手のシリーズを一通り読んでおけば、分厚い参考書を必死で暗記するより楽に勉強できるわけです。
春休み、夏休みなど長期休暇前に購入して自宅学習するのもよいでしょう。

それでは、それぞれの特色を見ていきましょう。

小学館「学習まんが少年少女日本の歴史」


公式サイト:http://www.shogakukan.co.jp/pr/manganichireki/

小学館は、学習まんがの老舗であり、ド定番と言えるシリーズだと思います。
実は筆者も子どもの頃に読んでいたので、かなり思い入れがあります。
1981年に刊行されてから、細かい改訂は何度か行われていますが、大きくは刷新していません。このため、現在の子どもから見ると若干イラストが古いと思われるようですが、これだけ長く読み継がれているのは、それだけ完成度が高いからだといえます。
人物の描き分けや画面の構図などは肖像画や絵巻物、近代であれば写真などを参考に描かれており、高校生になってから日本史の図録を見て、「あ、これは学習漫画のイラストと同じだ」と気づくことが何度もありました。⇒この辺の話、別のページにまとめてみました。学習まんが「少年少女日本の歴史」(小学館)はここがスゴイ!
また、他社に比べるとかなり細かいコマ割りで、情報量が多く感じられます。
筆者の兄などは、このシリーズをさんざん読み込んだ知識だけで大学入試を済ませて、今は中学校で社会科の教師をやっているほどです。
価格は他社より高めですが、自信を持っておすすめできます。例の「ビリギャル」も、慶応大入試をこれで済ませたそうです。

なお、上記「24巻セット」は、本編22冊に「人物事典」「史跡・資料館事典」という補巻2冊が加わったものです。
2018年10月に新刊として追加された「22巻 平成の30年」を含みます。



また、電子書籍のシリーズも出ています。大きめのタブレットをお持ちの家庭にはこちらもおすすめです。


(リンク先は本編全22冊に別巻2冊を加えた24冊セットです。電子書籍の価格は変動するため正確なところはリンク先のAmazonで確認していただきたいのですが、たいていは単行本よりもかなり安い設定になっています)

集英社「新版 学習まんが 日本の歴史」

公式サイト:https://www.shueisha.co.jp/rekishi/

集英社は、2016年末に内容を全面的に刷新したばかりです。最新の研究成果・知見を取り入れた内容と言えます。
また、最も大きな特長は現代史に力を入れている点です。
他社版は現代史の部分は昭和・平成をまとめて1~2冊というところですが、集英社版だけは昭和史3冊、平成史1冊と、かなりの充実です。
平成史なんて子どもに読ませる意味あるの?と大人は思ってしまいますが、バブル崩壊、阪神大震災、構造改革、グローバル化、インターネットの普及、テロとの戦争、リーマンショック、東日本大震災と、もはや「歴史」として学ばなければいけないことは山のようにあるわけです。
表紙絵は各巻、少年ジャンプの人気漫画家たちが競演していますが、本編は別の漫画家が描いていますので、その点はご注意ください。
また、小学館版が「学習」を重視しているのに対し、マンガとしてのストーリー展開を重視しており、絵柄を含めて読みやすさを狙っています。コマ割りはかなり大きめです。
全巻セットで買うと、バラで買うより価格がお得になります。

また毎年、数量限定で価格はそのままの特典付きセットも発売されています。
2020年版は『はって楽しむ! 日本史イラストマップ』。「訪ねてみたい! 城と祭り」&「歴史をつくった偉人たち」の豪華両面仕様。「A2判の大判サイズ&合成紙製なので、お風呂にはっても楽しめます」とのことです。(2021年版特典セットは出ていないようです)



なお、集英社版は内容はそのままで価格を下げ、判型を小さくソフトカバーにした「コンパクト版」が2021年6月に発売されました。場所を取らず、価格も安くなり購入しやすくなりました。



KADOKAWA「角川まんが学習シリーズ 日本の歴史」


公式サイト:http://shoten.kadokawa.co.jp/sp/mangagakushu/nihonnorekishi/

KADOKAWAは他社が菊判ハードカバーしか出していなかった時期にB6判ソフトカバーというコンパクトサイズを刊行し、一躍人気シリーズとなりました。
冊数は少なくまとまっているものの、1冊あたりのページ数は多く、実は総ページ数では小学館、集英社を上回っています。
にもかからず、価格も安く設定されています。
このような圧倒的なコストパフォーマンスで、日本史の学習漫画で一番よく売れているのはこの角川版なのです。
筆者的には、イラストがちょっとキラキラしすぎで、コマも大きめじゃないか、と思うのですが、どうなのでしょう。今の子どもには小学館版の野暮ったい絵よりも、こちらの方が受けているようです。
どちらかというとストーリー重視ですが、集英社版がマンガとしての「面白さ」を狙っているのに対し、角川版は歴史の「流れ」を捉えようとしており、学校の授業を補完するのにうってつけの内容です。
さらに角川版は、本編15冊のほかに、別巻として「よくわかる近現代史」という全3冊のシリーズが出ています。歴史学習ではどうしても近現代史が手薄になりがちですが、そこもバッチリ押さえられるというわけです。
他社版で揃えた場合でも、この別巻だけ購入して近現代を補うこともできます。



「よくわかる近現代史」を含めた箱セットもあります。別巻を含めても、小学館・集英社より安い。


また毎年、中学受験に役立つ特典をつけた限定セットが発売されています。定価は上記セットと同じなので、おまけの分だけ単純にお得です。2020年の特典は「豪華3大特典! 戦国&近現代史すごろくと戦国武将のぼり旗しおり定規5枚。戦国&近現代史すごろくで遊びながら学ぼう! しおり定規5枚セットは織田信長・豊臣秀吉・明智光秀・武田信玄・真田幸村ののぼり旗デザイン! まんがを読みこんですごろくで遊び倒したら、キミも日本史マスター!」とのことです。(2021年版特典セットについては2020年10月時点で発売の情報は出ていません)




学研「DVD付き NEW日本の歴史」


学研版は売れ行きの面では他社に遅れを取っている印象がありましたが、今年(2021年)2月に大リニューアルを仕掛けます。なんと全巻にDVDが付録されます。もともと刊行されていたシリーズと本編は特に変わりませんが、DVDが新たに追加される形になります。またハードカバーからソフトカバーへ変更され、サイズも菊判からA5判へとやや小ぶりになりました。
学習図鑑の世界ではDVD付きがスタンダードになっていますが、学習まんがにDVDがつくのは初めての試みで、人気次第では他社に広がっていくでしょう。
NHKの資料映像などを素材として使用しているということで、漫画とあわせて歴史への興味が盛り上がるのは間違いないでしょう。
DVD以外の特長としては、もともと学習参考書を手がけている出版社だけに、巻末資料が充実していることです。資料部分がかなりの割合を占めており、きちんと読み込めば、ほかの参考書は不要になるでしょう。小学館版が漫画の中で学習しようとしているのに対し、ストレートに学習参考書的資料がついているわけです。
巻数はコンパクトに収まっており、刊行時期も新しいため、フルカラーで見やすい絵柄です。
別巻2冊は2021年発売予定のDVD付きの箱セットには収録されません。こちらも資料が充実した内容で、図鑑好きの子どもはずっと眺め続けることでしょう。
以前からに刊行されているハードカバー版箱セットは別冊も含めた14冊セットでした。こちらも引き続き販売されているようです。


講談社「学習まんが 日本の歴史」


公式サイト:http://rekishimanga.jp/

講談社からも新しいシリーズ「学習まんが 日本の歴史」が2020年7月に刊行されました。
角川のシリーズと同じく、B6判ソフトカバーのコンパクトなサイズです。しかし、既刊のシリーズに対抗してか、総ページ数は他社を上回り、ナンバーワンです。
まず目を引くのは各巻冒頭の図録です。このコーナーだけでなかなかのボリュームがありますが、ビジュアルでその巻の内容を予習し、その上でマンガ本編に入っていく流れとなっています。
また、ページの枠外に「マメ知識」として受験に役立つ内容や歴史に興味を持てるトリビアが書かれているのですが、これがなんと全ページに書き込まれていて、情報量は膨大。中学受験、高校受験、大学受験まで視野に入れて作られているようです。
また、他社はほぼ無名の漫画家を起用しているのに対し、講談社の週刊・月刊漫画誌で活躍した経験のある人気作家を起用しており、画力でも他のシリーズを圧倒しています。
まだ刊行されたばかりですが、これはもしかすると、現時点の王者・角川を超える人気シリーズになるかも、と思いました。
全巻セットには特典として「歴史人物データカード全120枚」「日本史重要人物イラスト年表」がつきます。

まとめ

というわけで、各社版を簡単におさらいすると

小学館:菊判ハードカバー。時代考証が手堅く定評がある。学習重視。大学受験まで使える。
集英社:菊判ハードカバー。近現代史が充実。ストーリー展開重視。内容はそのままにソフトカバーにしたコンパクト版もあり。
角川:B6判ソフトカバー。場所を取らずコンパクトで価格も安い。別巻の近現代史もあり。歴史の流れを重視。
学研:A5判ソフトカバー。学習まんが初のDVD付き。本編は巻末資料が充実。学習重視。参考書の代わりになる。以前から販売されている菊判ハードカバー版はDVDなし。
講談社:B6判ソフトカバー。価格を抑えつつも、マメ知識欄など情報量が多く、ページ数も最大。著名な人気漫画家を起用。

まあ、正直なところ、熱心に読み込むお子さんであれば、「学習」という観点ではどれを買ったところでたいした違いはないかと思います。
筆者としては個人的な思い入れがあるということで、やはり小学館をベストと考えています。
イラストの雰囲気については、実際のところを確認されたい場合は、それぞれの公式サイトで試し読みをでき、また無料のお試し版を電子書籍で読めるものもあります。







Amazon商品ページ一覧表

Amazonで「日本史学習まんが」を検索すると、大量の商品がヒットします。ここに紹介したシリーズでもいろいろバージョンがあります。
混乱される場合もありますので、ここまでの記事と重複する部分もありますが、簡単にまとめてみます。

小学館
小学館は他社のように特典をつけたりしていません。ベーシックなセット1種類だけで勝負しています。価格はバラ売りでもセット売りでも変わりません。

 2018年に発行された「平成の30年」を含む最新セット。

 「平成の30年」が刊行される前のセット。上記「24巻セット」は「23冊セット+平成の30年」ということになります。現在は中古のみ出品されていますが、安く入手できる場合があります。

集英社
集英社のセットは書籍の内容はすべて同じで、毎年特典が変わっています。
価格はずっと同じですが、売り切れたセットについては、中古価格で出品されています。2016年に最初に刊行されたセットは定番として継続販売されているようです。
単品で揃えるより、セットで買ったほうが安くなります。

集英社 コンパクト版 学習まんが 日本の歴史 全巻セット( 全20巻+別巻1 )【最新版】
 コンパクト版は特典なしのバージョンのみです。

集英社 学習まんが 日本の歴史 全20巻+2020年版特典セット【最新版】
 ハードカバー版は2019年11月12日発売のものが最新セット。特典は『はって楽しむ! 日本史イラストマップ』。「訪ねてみたい! 城と祭り」&「歴史をつくった偉人たち」の豪華両面仕様。A2判の大判サイズ&合成紙製なので、お風呂にはっても楽しめます、とのことです。(2020年末は新しい特典セットは発売されていないようです)

 2018年末刊行セット。特典は『わくわく、冒険! 日本史マスター3点セット』。くり返し遊びながら学べるクイズブックと、お風呂にも貼れるポスター、昔の地名がわかるクリアファイル、ということです。

 2017年末刊行。特典は「幻の江戸城天守クリスタルアート」。これ、なかなかかっこいいです。

 2016年末刊行。特典はクリアファイル5枚。(常時入手可能な定番セットです)

KADOKAWA
角川版は最もバージョンが多くて迷いますが、内訳は以下のとおりです。
まず、セットに含まれる書籍ラインナップがいくつか分かれます。
価格はセットで買ってもバラで買っても変わらないので、まずは定番セットを買って、順次別巻を買い足す、という形でも損はありません。特典が欲しい場合はセットを選んだほうがよいです。特典の有無では価格は変わりません。

 特典・別巻なしのベーシックセット。

 上記15冊セットに別巻「歴史まるわかり図鑑」を加えたもの。


 上記「全15巻+別巻1冊セット」と「全3巻セット」をあわせたもの。角川のシリーズはこのセットにすべて含まれます。

以下は、特典付きセット。毎年特典が変わるセットが出ています。書籍のラインナップは全て「全15巻+別巻4冊セット」と同じです。

角川まんが学習シリーズ 日本の歴史 3大特典つき全15巻+別巻4冊セット【特典付き最新セット】
 2019年11月15日発売最新版。豪華3大特典は「戦国すごろく」「近現代史すごろく」「戦国武将のぼり旗しおり定規5枚」。書籍の内容は「全15巻+別巻4冊セット」と同じ。(2020年末は新しい特典セットは発売されないようですので、こちらが最新です)


学研
2021年発売のDVD付きは通常版と初回限定バージョンがあります。いずれも12冊セットで特典内容が異なります。

通常版



初回限定版
(上記通常版に加えてトートバック、「写真で見る平成史」がついていました。すでに品切れしています)
DVD付き 学研まんが NEW日本の歴史 初回限定5大特典付き全12巻セット

以前は、別巻2冊を加えた14冊セットを販売していました。特典なしのスタンダードなセットと年によって変わる特典付きセットとがありましたが、価格はすべて同じです。本編1冊あたりの価格はDVD付きのリニューアル版よりやや安いものでした。


学研まんが NEW日本の歴史 5大特典(金印レプリカ・平成史・歴史年表・寝る前5分暗記ブック・特製エコバッグ)つき 全14巻セット
 2020年6月刊行セット。特典がどんどん増えてます。

学研まんが NEW日本の歴史 3大特典(金印・平成史・歴史年表)つき 全14巻セット
 2019年11月刊行セット。

 2019年6月刊行のセット。半年後の11月に刊行された一つ上のセットの方がお得です。

 2016年刊行のセット。成績アップ4大特典、ということで「大坂城リアル再現キット(プラモデル)」「歴史年代暗記カード(124枚・リング2個つき)」「寝る前5分暗記ブック まんが日本の歴史バージョン(32ページ)」「日本の歴史年表(2枚)」と、なかなか豪華です。

講談社
刊行されたばかりということもあり、2種類の特典をつけた全巻セットのみです。

日本の歴史(全20巻セット) (講談社 学習まんが)

 各社とも、10月~11月頃に新しい特典をつけたセットを売り出す傾向があります(クリスマス商戦を睨んでのものと思われます)。特典が気になる方は、その時期にチェックしてみてください。

番外:大人向け文庫版

以上、お子さん向けのシリーズをご紹介しましたが、電車の中で大人が読むにはやや抵抗があります。
子どもだけでなく、自分でも読みたいというお父さん、お母さんには文庫版が出ています。

【角川文庫】


最も売れているシリーズである「角川まんが学習シリーズ」がそのまま文庫版になっています。
児童向けではなく、一般向けという形で刊行されていますが、イラストや字が小さくなり、カラーページもモノクロになっていることさえ気にしなければ、価格も安く、コンパクトに揃えることができます。
全巻箱入りセットも発売されています。




【集英社文庫】




集英社文庫からは「日本の歴史」と「世界の歴史」も出ています。
集英社の学習漫画シリーズは何度か改訂されていますが、この文庫に収録されているのは20年ほど前に刊行されたバージョンです。とはいえ、小中学生が学ぶレベルの歴史が10年や20年程度で大きく変わるわけではなく、大人がいま読んでも一向に差し支えない内容です。
コンパクトにまとまっており、場所を取らないし、価格も安いしで、かなりよく売れているようです。

【中公文庫】
さて、中公文庫からは2020年11月より、石ノ森章太郎版「マンガ日本の歴史」の新装版が刊行されています。これは全55巻という規格外のボリューム。20年ほど前にも一度中公文庫に収録されましたが、その新装版です。
大人向けに描かれた作品のため、小学生にはやや難しいかもしれませんが、文句なしの画力と確かな時代考証で平成元年の刊行開始時にはベストセラーとなっています。
子ども向けの学習漫画では満足できない、歴史好きのお子さんはこちらをどうぞ。



箱セットも順次刊行されています。
文庫 新装版マンガ日本の歴史 1~12巻
石ノ森 章太郎
中央公論新社
2021-03-25



関連記事:
学習漫画「世界の歴史」買うならオススメはこれ! 4大シリーズを比較
こども向け図鑑を揃えるなら、おすすめはどれ?4大出版社を比較!
小学館「ドラえもんの学習シリーズ」全巻一覧

弩級の奇書「冤罪と人類 道徳感情はなぜ人を誤らせるのか」(管賀江留郎・ハヤカワ文庫)

202105冤罪と人類035

2016年に洋泉社から刊行された「道徳感情はなぜ人を誤らせるのか―冤罪、虐殺、正しい心」が改題され、ハヤカワ文庫ノンフィクションに収録されました。
単行本が出た際にもかなり評判になっているのことは知っており、書店で何度か手には取っていたのですが、タイトルからいまいち内容を想像できず、重量級の雰囲気に恐れをなしたこともあって見送っていました。

このたび文庫化されたということで改めて手に取ってみると、装丁からして「タダモノでない」というオーラが漂っており(まあそれは単行本のときもそうだったのですが)、また内容についても興味を持てそうなものであると確認できたため、買ってきました。
 
いや、これはとんでもない本ですね。
文庫版のあとがきで著者は「そもそも、本書は『白鯨』や『黒死館殺人事件』の如き文学作品のつもりで執筆しました。」と記していますが、まさに!
個人的な事情ですが、「白鯨」について以前に下記の記事でこれがいかにとんでもない「奇書」であるかを紹介し、なおかつそこで「黒死館殺人事件」と比較していたということがあるため、本書のあとがきを読みながら、「うんうんうん」と、強くうなづいてしまいました。

「白鯨」を読破するなら、おすすめの文庫はどれ?

裏表紙に記載の内容紹介を見ると以下の通りとなっています。
18歳の少年が死刑判決を受けたのち逆転無罪となった〈二俣事件〉をはじめ、戦後の静岡で続発した冤罪事件。その元凶が、“拷問王”紅林麻雄である。検事総長賞に輝いた名刑事はなぜ、証拠の捏造や自白の強要を繰り返したのか? アダム・スミスからベイズ統計学、進化心理学まで走査し辿りついたのは、〈道徳感情〉の恐るべき逆説だった! 事実を凝視することで昭和史=人類史を書き換え、人間本性を抉る怪著。
ということで、一見、冤罪事件を取材したノンフィクションと思われますが、実はそれは全く入り口に過ぎません。
あまりに情報量が多すぎて、一回読んだだけでは頭の中で内容を全然整理できないのですが、事件に関わる人物の一人ひとりについて、常軌を逸した熱量で文献を渉猟していきます。
この結果、内容紹介にある通り「昭和史=人類史を書き換え、人間本性を抉る」という次元にまで到達してしまうのですが、正直なところ、脇道に入り込みすぎて、何を読んでいるのか途中でワケがわからなくなってくることもしばしばです。
これぞまさに「白鯨」や「黒死館殺人事件」の世界。

ただし、これは書き方を真似たというわけではなく、「『白鯨』のような例があるから、こういう書き方でも許される(あるいは、読者がついてこられる)だろう」という精神的な拠り所になっていたということかな、と思われました。
というのは、著者がこれだけ細部に執着するのには理由があり、世の中にあふれる以下のような本、すなわち、一次資料に当たらず受け売りで書かれた本、事象に関連性を見出し物語として図式的理解に落とし込んでしまう本といったものは、冤罪事件と本質的に同根の人間の本性から生み出されている、と本文中でしきりに繰り返しているのです。
このような批判を展開しているからには、本書自体は必然的に百科全書的な書き方にならざるを得なかったわけです。

ともかく、中途半端な文字数で書評など書けない、超弩級の内容でした。
みすず書房あたりが、何千円という価格で何十年も版を重ねているような古典的名著と比較しても全く劣らない、現代の名著です。


「東京人 2021年6月号」はミステリファン必読

東京人202106

今月発売された雑誌「東京人」の特集は「地図と写真で旅する江戸東京探偵散歩」。
ミステリ専門でない雑誌でミステリ特集をやるとあっさりした内容に終わっていてがっかりすることが少なくありませんが、そこはさすがの「東京人」。
執筆者を見ると日下三蔵、新保博久、川本三郎、末國善己、杉江松恋…と、マニアでも間違いなく満足できる布陣です。

ミステリに限らず、やはり日本の小説を読む上では「東京」は重要なんですよね。
筆者は高校を卒業するまでは名古屋にいたため、ミステリを読み始めた中学生の頃は東京の歴史・地理が全くわからず、地名によって暗示される背景などは何も読み取ることができませんでした。
仕事を始めてから東京でしばらく暮らし、と言ってもわずか10年しかいなかったので、やはりそれほど東京に詳しいとは言い難いのですが、なんとなくは地理感覚を持って小説を読めるようになり、この手のミステリと東京を絡めた特集や評論なども楽しめるようになりました。

で、既読の小説は「おお、そんなこと書いてあったか」と読み返したくなり、未読の小説は「なんとそんなことが書いてあるのか」と読んでみたくなる情報が満載ですが、紹介されている小説については書誌情報はほとんど記載されていなかったため、お節介ながら、Amazon購入ページへのリンク一覧を作ってみました。
特集を読んでいるあいだは、なるべく品切れ・絶版の本は避けて入手が容易な本のみで構成しているのかな、という印象を受けていたのですが、調べてみるとそうでもないですね。
そこそこ年をとってくると「ああ、この本はちょっと前に文庫が出たばかりだ」と思うものが平気で20年くらい前のことだったりして、すでに入手困難な本はそれなりにありました。出版社名の横に「★」マークをつけているものはこの記事を執筆した時点で品切れのものなので、古本屋かマーケットプレイスでお求めください。



以下、一覧です。特集登場順。書名が言及されているだけ、という程度のものは省略しました。

岡本綺堂 「半七捕物帳」光文社文庫
横溝正史 「人形佐七捕物帳」春陽堂書店
野村胡堂 「銭形平次捕物控」双葉文庫
宮部みゆき 「ぼんくら」講談社文庫
平岩弓枝 「お宿かわせみ」文春文庫
山本一力 「深川駕籠」祥伝社文庫
藤沢周平 「消えた女」新潮文庫
池波正太郎 「鬼平犯科帳」文春文庫
泡坂妻夫 「夢裡庵先生捕物帳」徳間文庫
山田風太郎 「明治断頭台」角川文庫
江戸川乱歩 「D坂の殺人事件」春陽文庫
江戸川乱歩 「一寸法師」春陽文庫(「地獄の道化師」収録)
江戸川乱歩 「吸血鬼」春陽文庫
江戸川乱歩 「人間豹」春陽文庫
江戸川乱歩 「兇器」春陽文庫(「偉大なる夢」収録)
江戸川乱歩 「怪人二十面相」ポプラ文庫クラシック
江戸川乱歩 「少年探偵団」ポプラ文庫クラシック
横溝正史 「夜光虫」柏書房
小栗虫太郎 「聖アレキセイ寺院の惨劇」河出文庫
角田喜久雄 「奇跡のボレロ」国書刊行会★
横溝正史 「貸しボート十三号」角川文庫★
高木彬光 「初稿・刺青殺人事件」扶桑社文庫★
山田風太郎 「十三角関係」光文社文庫★
鮎川哲也 「黒いトランク」創元推理文庫
仁木悦子 「猫は知っていた」ポプラ文庫ピュアフル
松本清張 「或る「小倉日記」伝」新潮文庫
松本清張 「菊枕」新潮文庫(「或る「小倉日記」伝」収録)
松本清張 「張込み」新潮文庫
島田荘司 「火刑都市」講談社文庫
宮部みゆき 「理由」朝日文庫
乃南アサ 「凍える牙」新潮文庫
佐々木譲 「新宿のありふれた夜」角川文庫
久生十蘭 「魔都」創元推理文庫
北村薫 「銀座八丁」文春文庫(「街の灯」収録)
広瀬正 「マイナス・ゼロ」集英社文庫
石川喬司 「求婚ごっこ」集英社文庫★(「絵のない絵はがき」収録)
戸板康二 「中村雅楽探偵全集」創元推理文庫★
日影丈吉 「女の家」中公文庫
中井英夫 「虚無への供物」講談社文庫
植草圭之助 「冬の花 悠子」中公文庫★
都筑道夫 「泡姫シルビアの華麗な推理」新潮文庫★
都筑道夫 「殺人現場へ二十八歩」光文社文庫★
日影丈吉 「吉備津の釜」河出文庫(「日影丈吉傑作館」収録)
若竹七海 「さよならの手口」文春文庫
岡崎琢磨 「下北沢インディーズ」実業之日本社
北森鴻 「花の下にて春死なむ」講談社文庫
東川篤哉 「謎解きはディナーのあとで」小学館文庫
都筑道夫 「やぶにらみの時計」中公文庫★
馳星周 「ゴールデン街コーリング」KADOKAWA
荻堂顕 「擬傷の鳥はつかまらない」新潮社
森村誠一 「」角川文庫★
石田衣良 「池袋ウエストゲートパーク」文春文庫
京極夏彦 「姑獲鳥の夏」講談社文庫
大藪春彦 「野獣死すべし」光文社文庫
紀田順一郎 「古本屋探偵の事件簿」創元推理文庫★
逢坂剛 「クリヴィツキー症候群」講談社文庫★
逢坂剛 「おれたちの街」集英社文庫
東野圭吾 「新参者」講談社文庫
宮部みゆき 「刑事の子」光文社文庫
宮部みゆき 「淋しい狩人」新潮文庫
小杉健治 「灰の男」祥伝社文庫
半村良 「下町探偵局」角川文庫★
高野和明 「ジェノサイド」角川文庫
江戸川乱歩 「智恵の一太郎」光文社文庫(「江戸川乱歩全集 第14巻」収録)
 「シャーロック・ホームズの古典事件帖」論創社

笠原和夫「昭和の劇」復刊!

201811昭和の劇288

当ブログではこれまで何度も映画脚本家・笠原和夫のことを取り上げてきたのですが、記事を書くたびに「『昭和の劇』が品切れになっているのは残念だ」ということが頭にありました。
「昭和の劇」は笠原和夫の最晩年に刊行されたロングインタビューです。2002年11月に刊行され、奥付の刊行日からちょうど1ヶ月後に笠原和夫は世を去りました。
実を言えば筆者は、この本が出たとき、笠原和夫という存在をあまり認識してはいませんでした。
「仁義なき戦い」シリーズは見ていたものの、それ以外の深作欣二監督作品や、ましてや笠原和夫脚本を追いかけるということもしておらず、要するにほとんど関心を持ってはいなかったのです。
そんな程度だったにも関わらずなぜ書店で手にとったのか。
それは鈴木一誌によるあまりにもかっこいい装丁のためです。
なんだろうこの本は、と手に取ってパラパラめくってみたところから、大げさではなく人生が変わってしまいました。

立ち読みでチラッと内容を眺めたレベルでも、途方も無い面白さ。ずっしりとした本の厚みに見合った重量級の内容。これはとんでもない本だ。
その場で読み耽りそうになるのをなんとか堪えて、レジへ直行。当時の税率で税込4500円の本でしたが、むしろ安い、というくらいの勢いでした。
帰ってきてからは約3ヶ月間ずっと枕元に置き、特に後半部分を繰り返し読み返すという状態になってしまいました。

さて、そういうわけで、笠原和夫をあまり知らない方、興味のない方がいきなり読んでも全く問題なく楽しめる本であることは保証できます。
東映専属の脚本家として任侠映画、戦争映画、実録映画のシナリオを量産していたのですが、まず第一にここで描かれる東映という会社が最高。
「義理欠く、恥かく、人情欠く」の三かくマークを掲げる東映は、まさに実態がヤクザそのもので、抱腹絶倒エピソードが続きます。
そんな会社の中で、笠原和夫はヤクザ、戦争、テロなど、昭和史の闇に斬り込む作品を書き続けます。特に後半はシナリオ執筆のための取材エピソード、あるいは笠原和夫の目を通した昭和史が詳細に語られていきますが、この部分こそが本書の最大の価値です。
特に昭和天皇に対する並々ならぬ興味、愛憎相半ばする思いには胸が熱くなります。
本書刊行から18年経った今でも、筆者はなんとかここで語られる笠原和夫の「思想」を理解しようと、笠原の映画を観たり、シナリオを読むのはもちろん、やくざ、戦争、天皇、昭和史といったテーマの本や映画、ドキュメンタリーを漁り続けているのです。
先に書いた「人生が変わった」というのはそういう点においてです。笠原和夫の呪縛から逃れられなくなってしまったのでした。

というくらい、筆者にとっては生涯最大級の重要本、「無人島へ持っていく一冊」というよく言われる状況が本当に起こったならば、間違いなく選択するであろう本なのですが、ここ数年は品切れで書店店頭から消えていました。
筆者の記憶では、2013年頃には書店でもたまに見かけたので、刊行から10年くらいは重版していたようですが、さすがにこれだけの大部な高額本をずっと販売し続けるのは難しかったようです。

今月、これが復刊されます。

復刻版 昭和の劇
太田出版
2021-04-10


「復刻版」と銘打っているということは、ほぼ内容は変わっていないのでしょう。表紙や帯も、Amazonで確認する限りは、「【復刻版】」と入っている以外全く以前と同じです。
価格は驚きの税込9900円。
復刊されると軽装の普及版になることが多いものですが、逆で来ました。
単なる重版ではなく、あえて「復刻版」ということにしたのは、価格を変更するためなのかもしれませんね。

この価格設定はしかし、版元の「本気度」を表しているようにも思われます。
これだけの名著を再び埋もれさせるわけにはいかない。とはいえ、ロングセラーとして書店に常備してもらえるような本でもない。
となると、倉庫に置いて一冊ずつ注文に応じる、あるいは図書館が買い上げてくれるのを期待する、そのような形で細く長く販売を続けることになりますが、それでもペイできる価格設定。
きっとそうに違いない。太田出版は社が存続する限り、本書を品切れにはしないはずだ。
この記事を読んでいる皆さん、ここは一つ、社会貢献のつもりで買いましょう。内容的には1万円払う価値は十分にあります。それで一生、楽しめるのですから。

筆者もこれだけお世話になったお礼にもう一冊くらい買っておこうかな、と思わないでもありませんが、いやしかしさすがにこの価格で「ダブり本」は妻が承知しない。
せめて改めてブログで紹介し、一冊でもたくさん売れて、一日でも長く本書の販売が続くことを祈るばかりです。あと、近所の図書館にリクエストして入れてもらうようがんばります。

関連コンテンツ

スポンサーリンク
profile

筆者:squibbon
幼稚園児の頃から40を過ぎた現在に至るまで読書が趣味。学生時代は読書系のサークルに所属し、現在も出版業界の片隅で禄を食んでいます。
好きな作家:江戸川乱歩、横溝正史、都筑道夫、泡坂妻夫、筒井康隆、山田風太郎、吉村昭。好きな音楽:筋肉少女帯、中島みゆき。好きな映画:笠原和夫、黒澤明、野村芳太郎、クエンティン・タランティーノ、ティム・バートン、スティーヴン・スピルバーグ、デヴィッド・フィンチャー。
ブログ更新通知:https://twitter.com/squibbon19

プロフィール

squibbon