備忘の都

40年間の読書で得た偏った知識をツギハギしながら、偏った記事をまとめています。同好の士の参考に。

筋肉少女帯

元ネタ探求 筋肉少女帯「サーカス団パノラマ島へ帰る」

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さて、元ネタがいろいろありすぎて、ついていくのが大変なアルバムです。できるだけ頑張ります。
タイトルの「パノラマ島」は、言うまでもなく乱歩の「パノラマ島奇談」より。
「サーカス団」については、乱歩にも「魔術師」「地獄の道化師」「サーカスの怪人」のようにサーカスが登場する作品が多々ありますし、また「スラッシュ禅問答」でも引用していた中原中也の「サーカス」という詩もあり、どちらの影響が強いのかよくわかりません。
アルバムはデジパックで絵本風に作られています。ジャケットを描いているのは、むらいこうじという、ピエロ専門の画家。

2.ビッキー・ホリディの唄

ビッキー・ホリディという名前に特に元ネタはなさそうです。

3.詩人オウムの世界

【オウム】
オウム真理教事件を描いているように思ってしまいますが、事件が起こる5年前に発表された曲で、むしろ予言的な詩と言えます。
『大槻ケンヂ20年間割りと全作品』によれば、当時、オウム真理教の名前は知っていたが、ここで出てくる「オウム」は、諸星大二郎の漫画の中で、人びとが宗教的な恍惚感にとらわれると「オウム、オウム」と響きだす、というシーンがあり、そこからということです。どの漫画を指しているのかはわかりません。
歌詞カードでは「オーム」となっています。

4.労働者M

インディーズ時代、空手バカボン名義で発表した曲。中学校の同級生が原詩を書いたとのことです。
【アンモナイト】
「花火」のあとがきで「アンモナイトは貝じゃない!」と自ら突っ込んでいますが、オウムガイの仲間。貝よりはイカやタコなどに近い頭足類。
【シーモンキー】
エビの仲間。昭和40年代に卵が学習雑誌の付録となるなどして、子どもたちの間で飼育が流行した。

6.23の瞳

壺井栄の児童向け小説「二十四の瞳」から。この物語で描かれるような感動的な学校生活への嫌悪感が現れています。インディーズ時代にナゴムレコードから出た「子どもたちのCity」というオムニバスアルバムに原曲が収録されており、そちらでは「暗い目をした僕」ではなく、「片目の僕」となっています。。

7.電波Boogie

【マーク・ボラン】
T-Rexのギタリスト・ボーカリスト。

8.パノラマ島へ帰る

【小人】
ここでいう「小人」は、おとぎ話に出てくるドワーフなどの小人ではなく、乱歩がいうところの一寸法師のこと。

12.元祖 高木ブー伝説

原曲はインディーズ時代の「高木ブー伝説」。
昭和40~50年代にかけて、毎週土曜の8時に放映された伝説的なバラエティ番組「8時だョ!全員集合」がネタになっています。
【一人で生きろよ つらくとも死ぬな】
原曲ではここは「フロ入れよ 宿題やれよ 歯みがけよ」となっています。これは、番組最後に全員でエンディング曲を歌う中で加藤茶が入れる合いの手。


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元ネタ探究 筋肉少女帯「月光蟲」

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アルバムタイトルはアングラ風を狙ったものですが、「蟲」という文字に乱歩を感じるのは筆者だけではないでしょう。名曲揃いで、個人的には初期の筋少では最高傑作だと思っています。


1.風車男ルリヲ

【パノラマの島】
大槻ケンヂがことのほか気に入っている乱歩の短編「パノラマ島奇談」より。
【月の裏のクレーター】
同じ言葉が3曲目「デコイとクレーター」、6曲目「僕の宗教へようこそ」にも出てきます。

2.少年、グリグリメガネを拾う

歌詞全体はドラッグで飛んでいる景色を表現しているようです。「グリグリメガネ」という言葉に元ネタがあるのかはわかりませんが、なんとなく藤子不二雄Aの漫画「まんが道」の満賀道雄、あるいは内田雄一郎のメガネをイメージしてしまいます。
「花火」のあとがきによれば、ドラッグ体験にあこがれて作って曲ということです。

4.サボテンとバントライン

個人的な感想ですが、酒鬼薔薇事件の犯人が中学2年と知ったとき、この曲を連想しました。むろん、事件が起こるより7年も前に発表された曲です。
全体的に西部劇風でまとめられています。
【バントライン】
「OK牧場の決斗」で有名なアメリカ西部開拓時代の保安官ワイアップ・アープが使用したとされる拳銃。
【真夜中のカウボーイ】
歌詞カードには「カウボーイ」とありますが、日本での公開タイトルは「真夜中のカーボーイ」。しかし、現代は「Midnight Cowboy」なので、「カウボーイ」の方が正解です。アメリカンニューシネマの代表作とされています。西部劇ではありません。

5.夜歩くプラネタリウム人間

【夜歩く】
アルバム「SISTER STRAWBERRY」には「夜歩く」という曲が収録されています。横溝正史の金田一耕助シリーズ3作目、もしくはジョン・ディクスン・カーのデビュー作がこのタイトルです。
【サルガッソー海】
バミューダ三角地帯と並び、70~80年代に子どもたちを震え上がらせた魔の海域。メキシコ近海ですが、風がほとんどなく、サルガッソーという藻のような海草に覆われているため、一度入り込んだ船はなかなか脱出できず、遭難事件が多発すると言われています。(実際には根拠ゼロ)

6.僕の宗教へようこそ

「少年とネコ」というモチーフが「サボテンとバントライン」と共通します。
【リュックサックに子ネコをつめた】
2枚目のアルバム「SISTER STRAWBERRY」に収録された「キノコパワー」にも「リュックサックに子猫を詰めて」という表現が出てきます。
【アンテナ】
この記事を読んでいる方には説明するまでもなく、「釈迦」や「いくじなし」にもアンテナ売りが出てきます。


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元ネタ探究 筋肉少女帯「断罪!断罪!また断罪!!」

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ジャケットはジョージ秋山の漫画「デロリンマン」に登場するオロカメンです。大槻ケンヂがこのキャラクターを気に入っていたため、一時期、筋少のギタリストだった後藤クマオ氏が造形したと、『大槻ケンヂ20年間わりと全作品』にあります。タイトルは、自身の音楽活動を断罪するという意味が込められているそうです。

1.おまけの一日

筋少は20年以上経って、2015年に同じタイトルでアルバムを出しています。大槻ケンヂにとっては、この言葉が人生のテーマの一つと思われます。
【ルチャドール】
メキシコ版プロレス「ルチャリブレ」の選手のこと。
【トベデレベルサ】
ルチャリブレの技の一つ。ふつうの人には聞きなれない名前の技をあえて持ってきたものと思われます。

3.猫のおなかはバラでいっぱい

前作「月光蟲」に収録された「少年、グリグリメガネを拾う」には「ネコの中は薔薇」という一節があります。

4.パブロフの犬

【パブロフの犬】
犬に、ベルの音を聞かせてから餌を与え続けると、やがてベルの音を聞いただけでヨダレを垂らすようになるということ。ロシアの学者パブロフが行った条件反射の実験。
「パブロフの犬に噛まれてはいけない」という部分は、個人的には天才的なフレーズだと思っています。
【象牙の塔】
一般的には主に、浮世離れした研究に勤しむ学者が集まる大学を指します。筋少のインディーズ時代の曲に「猿の左手 象牙の塔」というものもあります。

5.代わりの男

【昔えらい人が娘を刺したこの駅】
何かネタがありそうなのですが、わかりません。

6.何処へでも行ける切手

【包帯で真っ白な少女】
この一節が「新世紀エヴァンゲリオン」に登場する綾波レイのキャラクター設定に影響を与えたというのは有名な話で、大槻ケンヂ自身もエッセイ等で書いています。そもそもは、丸尾末広の漫画「少女椿」のみどりちゃんをイメージしているとのことです。

今回はあまり紹介できるネタがなくて申し訳ないです。

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筆者:squibbon
幼稚園児の頃から40を過ぎた現在に至るまで読書が趣味。学生時代は読書系のサークルに所属し、現在も出版業界の片隅で禄を食んでいます。
好きな作家:江戸川乱歩、横溝正史、都筑道夫、泡坂妻夫、筒井康隆、山田風太郎、吉村昭。好きな音楽:筋肉少女帯、中島みゆき。好きな映画:笠原和夫、黒澤明、野村芳太郎、クエンティン・タランティーノ、ティム・バートン、スティーヴン・スピルバーグ、デヴィッド・フィンチャー。
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