201801石上三登志169

新刊案内(しかも映画関係)の記事ばかり続きますが、すばらしい新刊が出ました。



石上三登志といえば、筋金入りの映画マニア・ミステリマニアとして知られ、氏がかつて編集に参加していた「映画宝庫」に憧れた町山智浩氏らが「映画秘宝」を創刊したとも言われています。
つまり、「映画秘宝」の大先輩格ですね。
そんな石上三登志が日本のミステリ映画について語りまくる!

ミステリ映画について紹介した本は世の中に多々あります。筆者も書店で見かけるといちいちチェックしています。しかし、例えば「横溝映画」とか「清張映画」とか、テーマを限定した本以外は、たいていかなりのコレジャナイ感がありました。ミステリじゃないものや、ミステリでもマニアは見向きもしないようなものが混じっていると、やはり萎えます。
ミステリマニアの心をくすぐる映画だけに限定して語り続けるというのは、なかなか難しいようなのです。

しかし、本書は!
目次を開いただけで「ぎゃ」と叫びましたね。
戦後すぐに製作された片岡千恵蔵の金田一耕助に始まり、数々の横溝映画への言及。乱歩原作映画についても「パレットナイフの殺人」「死の十字路」など興味深いテーマがズラリ。都筑道夫、松本清張、その他、もうどのページも「今すぐ読みたい」と前のめりになってしまうネタばかりで、どこから読み始めてよいやら、恐慌状態になりました。書店の棚で手にとって、レジへ持っていくあいだにすでに熟読です。税込4,104円。安い!

内容的には、これまで(といっても昭和50年代からつい最近まで、かなりの年代に渡りますが)雑誌などの掲載した単行本未収録の文章を集めたものです。「キネマ旬報」に掲載された時評や、10年くらい前に「ミステリマガジン」に連載されたコラムなど。
筆者にとっては伝説的な映画であっても、石上さんの世代はリアルタイムで鑑賞しており、評論家としての蘊蓄はもちろんのことながら、劇場で最初に観た時の感想が一番楽しいですね。
高倉健主演の「悪魔の手毬唄」なんかは、珍品として語り継がれているので、筆者などは一度は観てみたいとずっと願っているのですが、この映画については「見るわけない(笑)。ミステリ好きでこの映画を見たという人に会ったことないなあ」とのこと。言われてみると当たり前のようにも思いますが、そうか、そういうものか、と納得。

というわけで、簡単に内容紹介を書いておきます。

・横溝正史の映像世界(桂千穂との対談)
・松本清張の映像世界(瀬戸川猛資との対談)
・鈴木清順のプログラムピクチャー(森卓也との対談)

・時評(公開時にキネマ旬報などに掲載されたもの)
 東京流れ者
 本陣殺人事件
 暴走パニック!大激突
 超高層ホテル殺人事件
 江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者
 野性の証明
 黄金のパートナー
 野蛮人のように
 ジャズ大名
 ピストル・オペラ
 鉄の爪

・日本映画のミステリライターズ(ミステリマガジンの連載。原作者や脚本家に焦点を当てて作品を解説するコラム)
 七つの顔
 獄門島(千恵蔵版)
 にっぽんGメン
 三本指の男
 昨日消えた男
 幽霊列車
 パレットナイフの殺人
 神阪四郎の犯罪
 野良犬
 闇を裂く一発
 死の十字路
 夜の牙
 警視庁物語
 張込み
 黒い画集
 三十六人の乗客
 五瓣の椿
 青春銭形平次
 穴
 暗黒街の対決
 顔役暁に死す
 野獣の青春
 危いことなら銭になる
 100発100中
 天国と地獄
 飢餓海峡
 砂の器
 新幹線大爆破
 犬神家の一族
 悪魔の手毬唄(市川崑)
 犬神家の一族(リメイク版)
 疑惑
 MURDER
 真夜中まで
 ホワイトアウト
 なごり雪
 理由

以前の記事で都筑道夫原作映画「危いことなら銭になる」を紹介したことがありますが、これ、うっかり気づいていなかったのですが、池田一朗の脚本だったんですね。(池田一朗はのちに隆慶一郎名義で時代小説家として活躍。石上さんは隆慶一郎には興味ないそうですが……)
うーん。舐めるように読みたいと思います。しばらくは退屈しません。



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