未だDVD、Blu-rayが発売されていない邦画で、最も待望されているのは深作欣二監督の「黒蜥蜴」ではないでしょうか。

江戸川乱歩原作・三島由紀夫脚本の舞台劇「黒蜥蜴」は、2度映画化されてます。
最初の映画化は1962年に大映が製作した井上梅次監督・京マチ子主演のもの。
これはミュージカル仕立てのかなり狂った演出でカルト的な人気があり、DVDも発売されています。

黒蜥蜴 [DVD]
京マチ子
角川書店



2度目の映画化は、1968年松竹製作の深作欣二監督版。
これは主演を美輪明宏(当時は丸山明宏)が務め、今に至るも「黒蜥蜴」映像化の決定版的な評価を受けています。
三島由紀夫自身が演じた「人間の剥製」と美輪明宏とのディープキスも衝撃的ですが、深作欣二ファンの筆者としては、岩瀬家に詰めている用心棒たちがピラニア軍団よろしくワラワラワラ、と飛び出してくる乱歩映画っぽくないところが好きだったりします。

ところが、この松竹版のDVDがなかなか発売されません。
2003年に深作欣二監督が亡くなった前後に深作作品が一気にDVD化されていった時期があり、そのときは当然、「黒蜥蜴」も出るだろうと待ち構えました。
いや、それどころか雑誌「映画秘宝」で、「黒薔薇の館」などと並び、発売を予告する広告も見た記憶があります(いつ頃のことか忘れましたが、バックナンバーをひっくり返せば見つかるはず)。
ところが、そのまま何事もなく月日は流れ、未だに日本だけでなく全世界的に正規のDVD化はされていないようです。
名画座での上映やCS放送などは割りと頻繁にあるようで、見るのが難しい映画ではなく、事情があって封印されているというわけでも無いようですが、いったいどんな事情があるんでしょうか。
三島由紀夫の著作権が切れるのが2020年なので、そのあたりで何か動きあるといいな、という勝手な期待を抱いていて、正直、オリンピックよりもそっちの方が気がかりだったりします。

それから、映画の原作となった三島由紀夫の戯曲「黒蜥蜴」についても、2007年に一度だけ文庫化されたのですが、あろうことかそれに気づいたのが数年も経ってから、という「俺ともあろう奴がなにやってんだ」と言いたくなる始末なのですが、乱歩の著作権はすでに切れており、さらに三島由紀夫の著作権が切れたら、これも当然またどこかの文庫が収録すると思われるので、それも気にしています。

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