備忘の都

40年間の読書で得た偏った知識をツギハギしながら、偏った記事をまとめています。同好の士の参考に。

必読

名作ミステリ必読リストについて

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「ミステリを読みたいけど、何を読めばよいか教えてほしい」と尋ねられることがよくあるのですが、なかなか一口では答えられません。
単に面白い小説を読みたいだけなのか? あるいは体系的に読み進めてミステリマニアになりたいのか?
そこで、「読者層」にあわせてミステリを分類し、それぞれのおすすめリストを作ってみることにしました。

本格ミステリ編」は、ミステリマニア養成講座のつもりです。ミステリの評論を読んだり、あるいはミステリ好きのコミュニティで活動したりしようと思うと、やはりミステリの世界で「共通了解事項」とされている知識は持っていた方がよいかと思います。そのためにはどの辺の作品を読めばよいか、という観点で選定しました。
ハードボイルド編」は、ハードボイルド、冒険小説、警察小説をまとめています。こちらもマニア養成講座のつもりですが、本格ミステリとハードボイルド、冒険小説とでは読者層が異なるため(もちろん、両方とも大好き、という人も大勢いますが)、リストを分けることにしました。
エンターテインメント編」は、いわゆる「広義のミステリ」です。ジャンルとしての「ミステリ」に特に強いこだわりを持つことなく、面白い小説ならなんでもいい、という読者におすすめのものです。物語のメインが謎解きであっても、読者が謎解きよりも物語そのものを重視していると考えられるものは、「本格」ではなく「エンターテインメント」としています。また、社会派ミステリやホラーもここへ入れています。

分類は作品ごとではなく、作家ベースで行っています。
例えば、東野圭吾や米澤穂信はブレイク前には「本格ミステリ」の読者に支持されていましたが、現在の読者層はもっと広がっていると考えられるため、「エンターテインメント編」へ分類しています。
逆に、高木彬光や都筑道夫などは本格ミステリ以外のエンターテインメントも、かつてはたくさん書いていました。しかし、それらは一般的にはほとんど忘れられ、現在の読者層はコアな本格好きがメインと思われます。したがって「本格ミステリ編」へ分類しています。
結果的に、現役のベストセラーはエンターテインメントで、そうでなければ本格、というような形になってしまっていますが、それを狙ったわけではありません。
個々の作家紹介は稿を改めます。

しかし、そもそも「エンターテインメント」とはミステリに限らず小説一般に当てはまるもので、他の娯楽小説と、ここで対象としている「広義のミステリ」とは、どう区別するのか。
作品の内容に基づいて厳密に判定するということは不可能なので、おおざっぱに次の基準を設けました。

・ミステリの賞を受賞している(ホラー・サスペンスの賞も含む)
・このミスへランキングされるなど、ミステリファンのあいだでミステリと認識されてる

ミステリとSFとは近接したジャンルで、両方を書いている作家も多いのですが、ファンのあいだではやはり「竹本健治はミステリ作家」「山田正紀はSF作家」と認識されているかと思います。了見が狭いかも知れませんが、SF作家の書いたミステリやホラーは、単体の作品で評価されているとしても、今回のリストからは除外しています。(いずれSFで同じようなリストを作ったら、そちらへ入れます)
入れるべきかどうか悩んだ作家も多くいます。例えば栗本薫はデビュー時はミステリ畑でした。また、古くは海野十三も探偵小説家としてデビューし、のちにSF小説の祖となります。
しかし、栗本薫のファンは現在ではSF読者がメインと思われます。また、海野十三は「必読」というほど重要視されている作品は特にないかな、という考えで外しています。

それから、本格とエンタメはそれぞれ100作品、ハードボイルドは50作品をあげていますが、これはキリのよい数にしたほうがリストとして美しいから、ということで作為的に数を揃えています。このため、泣く泣く落としたものや、逆に、別に入れなくてもいいのに入っている作品も数篇あります。

と、いろいろいいわけを重ね、我ながら突っ込みどころの多いリストだと思います。
とはいえ、「ミステリ」をキーワードにして読書の幅を広げていきたいという方には、ある程度はチェックリストとして使えるものになっているのでは、と自負しています。
次回以降、それぞれのリストの内容について解説していきます。ミステリ初心者の方は、そちらも解説も併せて目を通していただければ幸いです。

最後にもう一ついいわけ。
「必読」と謳っていますが、これはキャッチーなタイトルを狙っただけです。リストのすべてを本気で必読と思っているわけではありません。
「エンターテインメント編」は順番を気にせずに適当に読んでもらえばよいと思いますが、「本格ミステリ編」も、このリストにあるような作家を読んでいこうと考えている時点で、じゅうぶん立派なミステリマニアだと思います。

関連記事:
国内名作ミステリ必読リスト100(本格ミステリ編)
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国内名作ミステリ必読リスト100(エンターテインメント編)
国内名作ミステリ必読リスト(本格ミステリ編・解説)
国内名作ミステリ必読リスト(ハードボイルド編・解説)
国内名作ミステリ必読リスト(エンタメ編・解説)

国内名作ミステリ必読リスト100(エンターテインメント編)

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いわゆる「ミステリ」の名作を「本格ミステリ」「ハードボイルド・冒険小説・警察小説」「エンターテインメント」という、3つのカテゴリに分類してご紹介します。
順次、リストを公開した後、ジャンル分け、選定基準などについての解説は改めて以下の記事でまとめます。

関連記事:
名作ミステリ必読リストについて
国内名作ミステリ必読リスト(エンタメ編・解説)

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大下宇陀児
石の下の記録」(1948年)

木々高太郎
人生の阿呆」(1936年)

松本清張
点と線」(1957年)
眼の壁」(1958年)
ゼロの焦点」(1959年)
砂の器」(1960年)

多岐川恭
落ちる」(1958年)

水上勉
飢餓海峡」(1962年)

梶山季之
黒の試走車」(1962年)
せどり男爵数奇譚」(1974年)

西村京太郎
殺しの双曲線」(1971年)
名探偵なんか怖くない」(1971年)
終着駅殺人事件」(1981年)

森村誠一
高層の死角」(1969年)
人間の証明」(1975年)

赤江瀑
ニジンスキーの手」(1974年)
オイディプスの刃」(1974年)

辻真先
仮題・中学殺人事件」(1972年)
アリスの国の殺人」(1982年)

皆川博子
死の泉」(1997年)
開かせていただき光栄です」(2011年)

小峰元
アルキメデスは手を汚さない」(1974年)

赤川次郎
マリオネットの罠」(1977年)
三毛猫ホームズの推理」(1978年)
ひまつぶしの殺人」(1978年)

阿刀田高
ナポレオン狂」(1979年)

小池真理子
墓地を見おろす家」(1988年)
妻の女友達」(1989年)
無伴奏」(1990年)
」(1995年)

東野圭吾
放課後」(1985年)
名探偵の掟」(1996年)
どちらかが彼女を殺した」(1996年)
白夜行」(1999年)
容疑者Xの献身」(2005年)

中島らも
ガダラの豚」(1993年)

小野不由美
屍鬼」(1998年)
黒祠の島」(2001年)

乃南アサ
凍える牙」(1996年)
結婚詐欺師」(1996年)

宮部みゆき
魔術はささやく」(1989年)
火車」(1992年)
模倣犯」(1995年)
理由」(1996年)

帚木蓬生
三たびの海峡」(1992年)
逃亡」(1997年)

鈴木光司
リング」(1991年)

井上夢人
ダレカガナカニイル…」(1992年)
オルファクトグラム」(2000年)
ラバー・ソウル」(2012年)

恩田陸
六番目の小夜子」(1992年)
三月は深き紅の淵を」(1997年)
夜のピクニック」(2004年)

浅田次郎
プリズンホテル」(1993年)
蒼穹の昴」(1996年)

貫井徳郎
慟哭」(1993年)
愚行録」(2006年)

桐野夏生
OUT」(1997年)
柔らかな頬 」(1999年)

天童荒太
家族狩り」(1995年)
永遠の仔」(1999年)

瀬名秀明
パラサイト・イヴ」(1995年)
デカルトの密室」(2005年)

乙一
夏と花火と私の死体」(1996年)
GOTH」(2002年)
銃とチョコレート」(2006年)

奥田英朗
最悪」(1999年)
オリンピックの身代金」(2008年)

貴志祐介
黒い家」(1997年)
硝子のハンマー」(2004年)

乾くるみ
イニシエーション・ラブ」(2004年)

山田宗樹
嫌われ松子の一生」(2003年)

池井戸潤
オレたちバブル入行組」(2004年)
空飛ぶタイヤ」(2006年)
鉄の骨」(2009年)
下町ロケット」(2010年)

高見広春
バトル・ロワイアル」(1999年)

伊坂幸太郎
重力ピエロ」(2003年)
アヒルと鴨のコインロッカー」(2003年)
ゴールデンスランバー」(2007年)

舞城王太郎
煙か土か食い物」(2001年)
ディスコ探偵水曜日 」(2008年)

米澤穂信
インシテミル」(2007年)
儚い羊たちの祝宴」(2008年)
折れた竜骨」(2010年)
満願」(2014年)

柳広司
ジョーカー・ゲーム」(2008年)

朱川 湊人
かたみ歌」(2005年)

桜庭一樹
赤朽葉家の伝説」(2006年)
私の男」(2007年)

辻村深月
凍りのくじら」(2005年)
鍵のない夢を見る」(2012年)

道尾秀介
向日葵の咲かない夏」(2005年)
シャドウ」(2006年)
カラスの親指」(2008年)

薬丸岳
友罪」(2013年)

海堂尊
チーム・バチスタの栄光」(2006年)

近藤史恵
サクリファイス」(2007年)

湊かなえ
告白」(2008年)

飴村行
粘膜人間」(2008年)

小林泰三
アリス殺し」(2013年)

国内名作ミステリ必読リスト50(ハードボイルド・冒険小説・警察小説編)

201706裂けて海峡089

いわゆる「ミステリ」の名作を「本格ミステリ」「ハードボイルド・冒険小説・警察小説」「エンターテインメント」という、3つのカテゴリに分類してご紹介します。
順次、リストを公開した後、ジャンル分け、選定基準などについての解説は改めて以下の記事でまとめます。

関連記事:
名作ミステリ必読リストについて
国内名作ミステリ必読リスト(ハードボイルド編・解説)

リンク先はすべてAmazonです。出版状況に応じて随時改訂します。

大藪春彦
野獣死すべし」(1958年)
蘇える金狼」(1964年)

結城昌治
ひげのある男たち」(1959年)
ゴメスの名はゴメス」(1962年)
夜の終わる時」(1963年)
暗い落日」(1965年)

高城高
X橋付近」(1955年)

河野典生
殺意という名の家畜」(1963年)

生島治郎
黄土の奔流」(1965年)
追いつめる」(1967年)

中薗英助
密航定期便」(1972年)

小鷹信光
探偵物語」(1979年)

船戸与一
山猫の夏」(1984年)
猛き箱舟」(1987年)
伝説なき地」(1988年)
砂のクロニクル」(1991年)
蝦夷地別件」(1995年)

逢坂剛
カディスの赤い星」(1986年)
百舌の叫ぶ夜」(1986年)

志水辰夫
飢えて狼」(1981年)
裂けて海峡」(1983年)
行きずりの街」(1990年)

北方謙三
逃がれの街」(1982年)
」(1983年)

大沢在昌
新宿鮫」(1990年)
毒猿 新宿鮫II」(1991年)
天使の牙」(1995年)

佐々木譲
ベルリン飛行指令」(1988年)
エトロフ発緊急電」(1989年)
警官の血」(2007年)

原尞
そして夜は甦る」(1988年)
私が殺した少女」(1989年)

稲見一良
ダック・コール」(1991年)

高村薫
マークスの山」(1993年)
レディ・ジョーカー」(1997年)

樋口有介
彼女はたぶん魔法を使う」(1990年)

真保裕一
ホワイトアウト」(1995年)
奪取」(1996年)

藤原伊織
テロリストのパラソル」(1995年)

藤田宜永
鋼鉄の騎士」(1995年)

馳星周
不夜城」(1996年)

黒川博行
疫病神」(1997年)

横山秀夫
半落ち」(2002年)
64」(2012年)

福井晴敏
亡国のイージス」(1999年)

垣根涼介
ワイルド・ソウル」(2003年)

高野和明
ジェノサイド」(2011年)

今野敏
果断 隠蔽捜査2」(2007年)

月村了衛
機龍警察」(2010年)

柚月裕子
孤狼の血」(2015年)

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筆者:squibbon
幼稚園児の頃から40を過ぎた現在に至るまで読書が趣味。学生時代は読書系のサークルに所属し、現在も出版業界の片隅で禄を食んでいます。
好きな作家:江戸川乱歩、横溝正史、都筑道夫、泡坂妻夫、筒井康隆、山田風太郎、吉村昭。好きな音楽:筋肉少女帯、中島みゆき。好きな映画:笠原和夫、黒澤明、野村芳太郎、クエンティン・タランティーノ、ティム・バートン、スティーヴン・スピルバーグ、デヴィッド・フィンチャー。
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