備忘の都

40年間の読書で得た偏った知識をツギハギしながら、偏った記事をまとめています。同好の士の参考に。

原作映画

都筑道夫関連映画のDVD その2

今回は、都筑道夫が脚本を執筆した映画のDVDをご紹介します。
といっても、これは2本だけ。しかも同じシリーズです。



この映画は、ずっと昔から見たくて見たくて仕方ありませんでした。
というのは、晶文社からむかし出ていた都筑道夫の評論エッセイ集『黄色い部屋はいかに改装されたか?』という本がありますが、映画のアイデアについて綴った一文が収録されているのを、高校の図書室で読んだことがあったのです。「100発100中」で使われたアイデアと、「黄金の眼」で使われなかったアイデアとが紹介されていましたが、これが非常に面白そうに書かれていたため、これは素晴らしい映画だろうと思っていました。
DVDが発売されて、ようやく見ることが叶いましたが……やはり、アイデアというのものは文章で読んだ方がよいものです。映像化されると、どうしても予算やら技術やらの制約を受けてしまいます。
とはいえ、往年のスパイ冒険活劇としてとても楽しめる映画です。「危いことなら銭になる」と同じく、都筑道夫らしさを堪能できます。
本格ミステリ作家としてだけではなく、スパイ小説、アクション小説など大衆娯楽小説の文豪として都筑道夫に敬意を抱いている筆者としては、やはりとても愛着のあるDVDです。

黄色い部屋はいかに改装されたか?増補版
都筑 道夫
(リンク先はAmazon)


都筑道夫関連映画のDVD その1

都筑道夫は映画と関係の深いミステリ作家です。
映画化された作品もいくつかありますし、自身でオリジナル脚本の執筆もしています。
そんな都筑道夫関係の映画を収録したDVDを何回かにわけてご紹介します。
今回は、都筑道夫原作の映画について。

小説の映画化は3回。映画の公開順に
「危いことなら銭になる」(1962年・日活) 原作:『紙の罠』(1962年)
「俺にさわると危ないぜ」(1966年・日活) 原作:『三重露出』(1964年)
「殺人狂時代」(1967年・東宝) 原作:『なめくじに聞いてみろ』(1962年)
以上、全てDVDが発売されています。
また、自身が原案を提供したテレビドラマ「スパイキャッチャーJ3」にも『暗殺教程』という「原作小説」がありますが、これは小説を映像化したわけではなく、同じアイデアをもとに同時期に小説を書いた、ノベライズのような関係です。「スパイキャッチャーJ3」はDVD化されていません。

それでは、DVDが発売されている3本をご紹介します。

『紙の罠』は、偽札造りの名人をめぐる悪党たちのコミカルな駆け引きを描いていて、非常に面白い作品なのですが、映画版もかなり楽しめます。何より、原作発表直後の映画化。都筑道夫の「かっこよさ」が、リアルタイムでどのように受け入れられていたのか、それがとてもよくわかります。
とはいえ、紛れもなくB級プログラムピクチャー。今や都筑道夫のファン以外は、誰も存在を知らないような映画なので、DVDが発売された時は驚きました。しかも、日活100周年企画ということで、「狂った果実」「愛と死をみつめて」「殺しの烙印」といった有名どころと一緒にラインナップされていたので、何かの間違いとしか思えず、店頭から消える前に急いで購入しました。
実際、あっという間に店頭では見なくなり、レンタルショップでも筆者の近所では見たことはありませんが、気長になっていれば、また再発売されることもあるかもしれません。

(リンク先はAmazon)

原作の『三重露出』は、作中作であるスパイ小説と、それを訳している翻訳家が関わる現実の殺人事件とが、交互に進行するという非常に凝った小説です。
これをどのように映画化したかといえば、なんとスパイ小説部分のみを映画化。スパイ小説のパロディとして書かれたものを、真に受けて映画化したとしか思えないような、怪作になっています。正直めちゃくちゃな内容ですが、問題はこの映画の脚本家の一人として都筑道夫本人の名前がクレジットされていること。
なんだよ、原作者公認でこの内容かよ、とそこに一番驚いていましたが、単なる名義貸しで、実際にはノータッチだったようです。
この映画のDVDは2005年に発売されましたが、実は日本よりも早く、2000年にはアメリカでDVDが発売されました。

Black Tight Killers
Image Entertainment
(リンク先は米Amazon)

そもそも海外で発売されるような映画なのか? 日本よりも評判がよいのか? 謎だらけですが、筆者は日本盤すら発売されないだろうと思っていたので、当時、Amazon.comから取り寄せたものです。たしか英語字幕を消せない仕様だったような記憶が?(すでに処分してしまって手元にはないため未確認です) 画質も最悪、ケースは紙製で、封をしてあったシールの粘着が全く取れないという、ショボいDVDでした。
現代のトーキョーに忍者がワンサカ出てくるというのがアメリカ人に受けたのだろうと思いますが、まあ、こういうのをカルト映画というのでしょう。都筑道夫としては、この展開は「してやったり」ということかもしれません。
日本盤はすでに入手困難ですが、アメリカ盤はまだ販売されているようです。

(リンク先はAmazon)

この映画は有名です。
講談社文庫版『なめくじに聞いてみろ』の解説は監督の岡本喜八が書いていて、この映画の思い出を綴っています。ちなみにこの解説は「別冊新評 都筑道夫の世界」というムックのような本にも若干文章を修正して掲載され、現在は、岡本喜八のエッセイ集『マジメとフマジメの間』(ちくま文庫)や、本記事の参考図書である『都筑道夫ドラマ・ランド(完全版)上』(河出書房新社)でも読むことができます。
非常に評判の良い映画なのですが、原作が好き過ぎる筆者としては、「いや、原作の面白さには到底及ばない」という目で見てしまって、なかなか楽しめません。

今回ご紹介した3本のうち、「俺にさわると危ないぜ」「殺人狂時代」のシナリオは、昨年、完全版が刊行された『都筑道夫ドラマ・ランド 上・下』(河出書房新社)で読むことができます。今回の記事に出てくる話は、だいたいこの本と、『推理作家の出来るまで 上・下』(フリースタイル)とに書いてあります。

都筑道夫ドラマ・ランド 完全版 上 映画篇
都筑 道夫
河出書房新社
2015-05-27
(リンク先はAmazon)
(リンク先はAmazon)
推理作家の出来るまで (上巻)
都筑 道夫
フリースタイル
2000-12
(リンク先はAmazon)
推理作家の出来るまで (下巻)
都筑 道夫
フリースタイル
2000-12
(リンク先はAmazon)


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筆者:squibbon
幼稚園児の頃から40を過ぎた現在に至るまで読書が趣味。学生時代は読書系のサークルに所属し、現在も出版業界の片隅で禄を食んでいます。
好きな作家:江戸川乱歩、横溝正史、都筑道夫、泡坂妻夫、筒井康隆、山田風太郎、吉村昭。好きな音楽:筋肉少女帯、中島みゆき。好きな映画:笠原和夫、黒澤明、野村芳太郎、クエンティン・タランティーノ、ティム・バートン、スティーヴン・スピルバーグ、デヴィッド・フィンチャー。
ブログ更新通知:https://twitter.com/squibbon19

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